あらすじ
ぼくを見張ってほしい――たびたび記憶喪失に襲われ、その間自分が何をしているのか怯えるハワード。探偵エラリイは旧友の懇願を聞き入れて、彼の故郷であるライツヴィルに三たび赴くが、そこである秘密を打ち明けられ、異常な脅迫事件の渦中へと足を踏み入れることになる。連続する奇怪な出来事と論理の迷宮の果てに、恐るべき真実へと至った名探偵は……巨匠クイーン円熟期の白眉にして本格推理小説の極北、新訳で登場
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Posted by ブクログ
ライツヴィルでの事件を扱うエラリー・クイーン。三作目。
大富豪とその若い妻、そして義理の息子、三人に瑣末な事柄までを解決して欲しいという探偵。読む側にしてみればそんな事まで引き受けて!と怒りたくなる。我らがクイーンが、なんと宝石泥棒の謗りも受け…
でも、殺人事件にまで事態は悪化して、まさかの『十戒』にまでその構想は至る。
クイーンの推理が冴え、謎が解き解され…
そして一年後、クイーンは再びライツヴィルを訪れ、自分の推理が操られていた事を真犯人に糾弾する。
結末、納得いかないけれど美学なのか。
読んでいる最中はその推理力を堪能したけれど、そしてその中心人物の懐の深さ、寛大さに感動もしたけれどなんとなんと!
事件の奥深さに驚くばかり。これが1959年、本邦初翻訳だなんて60年以上前のミステリーの質の高さに驚き。
Posted by ブクログ
とにかくサリーとハワードの愚かな思考と行動にウンザリ。それに付き合うエラリイにさえ苛立った。それだけ血肉が通った人物描写だったんだろう。結末は、犯人がエラリイの性格まで読み込んだ上での計画実行。最後に犯人を追い詰めたとはいえ、殺人に手を貸してしまったエラリイ。まんまと踊らされたエラリイは、これを最後の事件と言い切る。犯人は非常に魅力的だった。
面白かったんだけど、もったいぶった感じが読みにくい。
Posted by ブクログ
記憶喪失状態のハワード視点から始まるのがドグラ・マグラっぽい。そして知らぬ間に自分は人を殺しているんじゃないかと悩み、もしそれが本当なら問題なので警察などには頼めず、エラリーに依頼する。
実際に殺人を犯したものと思われ、まさかまだ厚みのあるあと1章残っている段階でハワード自身も退場するとは。それでこの残りの厚みとくれば、仕組まれていたのだなと笑
エラリーもしてやられたり。
Posted by ブクログ
『九尾の猫』の前日譚にあたるこの作品は、エラリーが塞ぎ込み今後捜査には一切かかわらないと心に決めるきっかけとなった事件。
記憶障害に苦しむ旧友ハワードに頼まれ、三度ライツヴィルを訪れたエラリー。ハワードは、父ディードリッチと、自分と同年代の若い継母サリー、意地の悪い叔父と四人で暮らしていた。一見平和に見える家庭だが、複雑な問題を抱えていた。短い滞在の中でエラリーは、ディードリッチがハワードの実の父親ではないこと、ハワードとサリーが恋仲になっていることを知る。そしてハワードとサリーの不貞が何者かの知るところとなり、恐喝されているということも。
エラリーは二人に、正直にディードリッチに打ち明けることを忠告するも、二人は聞く耳を持たない。結局押し切られたエラリーは二人に協力して恐喝者とのパイプ役を務めることになる。そうしている間にハワードの記憶障害は悪化し、ハワードはサリーを殺してしまう。エラリーは、ハワードの行動がユダヤ教における十戒を破る十の罪を体現していると指摘し、その事実を突きつけられたハワードは自ら命を絶つ。
しかし真相は、全ての出来事はディードリッチにより計算尽くされていたというものだった。ハワードとサリーの不貞を知り復讐を誓ったディードリッチは、十戒になぞらえてハワードを罠に嵌める周到な計画を練った。皮肉にもそれは、エラリーならそのことに気付くと踏んでのことだった。エラリーはディードリッチの目論見どおりの行動を取り、ハワードを死に追いやったのだった。
この作品のポイントとしては、エラリーの存在が完全犯罪を完成させてしまったこと、罪を立証することがすなわちエラリー自身の失敗を認めることになること、そして著者自身がエラリー・クイーンの弱点を鋭く突いている点だろう。
Posted by ブクログ
エラリークイーン研究の新書で、エヴァンゲリオンに似ているという説を見て、興味惹かれて読んでみました。(とは言っても、エヴァと親しんだことがないので比較はできず。なんとなしのミーハー心です)
事件前のエラリーの感情が太字で書かれ、意味を勘繰っていたけれど、感情的に入り込むことで判断が鈍って犯人にミスリードされてしまったのかな、、
幕引きの仕方(自害を示唆する)がどこかドルリーレーンのような、自分で用意した舞台を終わらせた感じがしてしっくりこず。本人が法で裁かれることを望んでいないことは理解できたけれど、時代の法制度上、どのみち死刑になるということなのか?
それでも、難しくて正直さっぱりだった神学モチーフも、感情のもつれも気になって気になって一気読みでした。
Posted by ブクログ
帯に堂々と「後期クイーン的問題」と謳って、ネタバレしているのには困ったもんだ。ここでのクイーンは騙されます、少なくとも一度は間違った推理をします、と明言してるようなモンだからねえ。まあ、そういうものとして読んで、きちんと面白かったからよしとしよう。この新訳で始めて、「十日間の不思議」を読む人はみんなそんな読み方をするんだろうなあ。
Posted by ブクログ
『災厄の町』『フォックス家』と世間的には成功とは言えなくとも、関係者を満足させて一応の平和をもたらしてきたライツヴィルを三度目訪れたエラリイと、彼を迎える表面的には豊かな一家。
この結末はつらい。
ライツヴィルといえば田舎特有というか、ねっとりした人間関係、ガサツでいやらしい群衆たちというイメージだけど、これまでの二冊に出てきた不快な人々の中でもダントツ不快な二人!と起こりながら読んでた(笑)
でも最後は辛い。なんともいえない。なるほど、これがエラリイのトラウマになるわけだ…。
Posted by ブクログ
推理小説における探偵の意味というのを考えてしまった。
謎を解きました。めでたし、めでたしにはならない事をこう描くのか。
若い頃じゃなくて、今、出会えた方がよかったのね。
クイーン、こわい(~_~;)