あらすじ
あなたも、わたしも、この国の当事者。自分の言葉で、ちゃんと語るために。考えるためのヒントがいっぱい。激動の時代を、本を読んで考え続けた5年間、42の同時代批評。
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Posted by ブクログ
斎藤美奈子の新刊は、本屋で見かけたら買うことにしている。
で、数年放置してしまう。
絶対読むのだから、今でなくてもいい。
『月夜にランタン』も『ニッポン沈没』も数年放置した結果、第二次安倍政権が発足したタイミングで第一次安倍政権の突然の終焉と総括について読んだのだった。
それはそれで面白かったけど。
今回はひと月も寝かせず、すぐ読んだ。(当社比)
テーマごとに3冊の本を紹介し、世相を斬る。
私が彼女を好きな理由は、知識の(彼女の興味)の幅の広さと、上下左右どこにも忖度しない語り口の鋭さにある。
今作も、目からうろこがドバドバ落ちた。
「バカが世の中を悪くする、とか言ってる場合じゃない」
「戦後日本の転換点はいつだったのか」
「わかったつもりになっちゃいけない、地方の現在地」
「文学はいつも現実の半歩先を行っている」
「当事者が声を上げれば、やっぱり事態は変わるのだ」
上記5つのテーマの他に、「新型コロナウイルスが来た!」を番外編として収録。
「オール沖縄」についてとか、司馬史観やアイヌ民族についてなど、個別に語りだすとキリがないので、2つだけ。
私は官僚が忖度をするようになったのは、安倍政権が「内閣人事局」を作ってからだと思う。
それまで官僚と言われる人たちは、独善的なところはあったとしても、行政のプロとしてのプライドと自信があった。
省の推薦を、「これで総理が納得すると思いますか」と突き返す菅官房長官。(当時)
これを繰り返して、官僚は骨抜きにされた…というか、骨のない人しか上がっていけなくなった。
結果、やる気と能力のある若手が大勢霞ヶ関を去った。(霞ヶ関ではないけれど、うちの職場も若手の流出が止まらない)
今度は学問の世界を骨抜きにするつもりなんだ、とニュースを見て思っている。
もうひとつは田中角栄について。
「ロッキード事件で金をもらった悪いやつ」というイメージしかなかった田中角栄だけど、「小粒なタカ派」しかいない今の政治家の中で、「大物ハト派」という存在がどれだけ大きなものだったかと知った。
そして、脱アメリカ依存、全世界を視野に置いた「資源外交」等が、キッシンジャーとCIAの逆鱗に触れて陥れられたという陰謀説は、どうも荒唐無稽とばかりは言えないらしいのだ、
ちょっとそのあたりの本でも読んでみたくなる。
Posted by ブクログ
「世の中ラボ」をまとめたこのシリーズは、正直、日本の現代史を当事者としての生活感とともに記してくれる。歴史の書である。
いつも思うが、要点を確実にまとめてくれる、斎藤さんの技量の高さは何より尊敬する。