あらすじ
ベストセラー「書店ガール」シリーズの著者が描く、慟哭のミステリー。書店員の椎野正和は、ある朝届いた積荷の中に、少年犯罪者の告白本があるのを知って驚く。それは、女子中学生が惨殺され、通っている中学に放置された事件で、正和の同級生の友人が起こしたものだった。しかも正和は、犯人の共犯と疑われてしまい、無実が証明された後も、いわれなき中傷を受けたことがあったのだ。書店業界が「売るべきか売らないべきか」と騒然とする中、その本を読んだ正和は、ある違和感を覚えるのだが……。出版・書店業界の裏事情を巧みに盛り込んだ、著者渾身の長編小説。
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Posted by ブクログ
私が知っている名古屋弁だ。中山七里の要介護探偵は、どうも名古屋弁というより岐阜弁ぽくてモヤモヤしたから、少しほっとしたというか。内容には関係無いけれど、地元の方言って気になっちゃうよね。
十数年前実際に起こったあの事件は、世間が大騒ぎになったからよく覚えている。本が出たときも話題になったし(本屋さんに行って、その本が並んでいるとガッカリしたものだ)、最近では、裁判記録が廃棄されたことでまた少し話題になった。
小説なので、遺体の扱いがよりエグくなっている。結局、何故事件を起こしたのか、本質が語られる事もないまま終わってしまっていたこと、主人公がこの先救われる、というか幸せになる予感がイマイチないことで、モヤモヤが残った。取材ノートを入手するくだりは、そんなことある? いくらなんでも偶然が重なり過ぎてない? とは思ったけれど、これがないと話が進まないので致し方なし。
書店員さんの話は面白いな。作家のフィクション論も興味深かった。(2023-05-10)(2023-06-03L)
Posted by ブクログ
最初は映画の「22年目の告白」に近い感じなのかな?と思っていた。主人公は猟奇殺人犯と幼なじみ。映画の被害者の一人の恋人の思うと近いイメージを受けた
しかし、少し読み進めていたら主人公は共犯扱いされていたという話が出てきてなるほど、これは映画のやつとは違うんだなと感じてきた。
書店員として働く主人公は嫌でも告白本と関わらないといけないタイミングもあって、そんな中かつて取材をしてきて最初に共犯説を書いた記者が告白本について自分を取材してきた。ここから事件の真相というより「告白本は本当に本人が書いたのか?」という方向に変わっていく。
そこからは上記の映画とは別物になった印象。
最後には勿論真相がわかるんだけど、それは主人公が犯行のキッカケとなった漫画を教え作中の少女が被害者に似てると言っていた事だった。
主人公は悩むがもう10年以上も経っている。犯人も刑期を終えて出所している。
そんな中で新しい真実をつげ罪を被害者家族に吐露するのは自分の罪を償うための懺悔なのか?はたまた自分が罪から解放されるための自己満足なのか?
これは本当に難しいことだと思う。ある二人はある罪を犯してるが、主人公のこの行為に対しては明確な“違法行為”とは言えない。それを白日の元に晒した所で確かに罪の意識を和らげるための逃げでしかない
しかしそこを黙っていると・・・・難しいね。
Posted by ブクログ
個人的に後味が悪い話で、結末に納得できてないが、理解はできる作品だった。
罪とは、告白とは、と考えさせられる一冊。
自分の感想として、主人公の罪はバタフライエフェクト並でそこまでではないし、被害者遺族からすればたまったものではないだろうが、『罪』というほどだろうか?
犯人に関しては比較的推測されやすいと思うが、今回はフーダニットというよりホワイダニットだろう。
文章に癖がなく、読みやすい。普段読まないミステリーのタイプだったので戸惑ったが、こういう本もあるのか、と勉強になった。
Posted by ブクログ
実際にあった事件をモチーフにしていることは帯を見た時にうっすら感じていて、内容もかなり真に迫るものがありました。
現実味のない残酷な罪を犯した人が何を思い、どう感じながら、なぜ罪を犯したのかという点について、民衆は「自分とは違う何か」を期待しがち。
環境や生まれもったものの違いはあれど、自分と変わりない人間であることに気付かされた作品でした。
作中に何度も、「差別」についての問いかけがあったように思います。
作者の思想が垣間見えるような気もしますが、題材ともマッチしており、良かったと思います。
途中で出てくる「フィクションは祈り」という台詞が出てくるシーンが好きです。
私自身、フィクション作品に対して現実世界のしんどさを救ってくれるものだと思う部分もあるので、とても共感しました。