【感想・ネタバレ】清張地獄八景のレビュー

あらすじ

みうらじゅんの清張愛炸裂!
人間の業や深い闇を暴き出す清張は、ホラー作家だ!
押したら最後、底無しの「生き地獄」へ転落してしまう「清張ボタン」とは?

松本清張の大ファンであるみうらじゅんが様々な媒体で書いてきた清張論や対談などの記事、イラスト、なりきり小説を中心に、
「文藝春秋」や「週刊文春」、「オール讀物」に掲載された清張に関する記事を厳選して一冊に。

数多くの清張原作作品に出演している岩下志麻、船越英一郎のインタビューや対談をはじめ、
佐藤愛子、京極夏彦、大沢在昌、宮部みゆき、北村薫、有栖川有栖、岩井志麻子、佐野洋、山村正夫、泉麻人、春日太一……ほか、著名な作家の再録記事も多数掲載。

清張原作のNHK土曜ドラマの演出家だった和田勉の随筆、『砂の器』など清張原作映画の脚本家である橋本忍のインタビュー、
清張が井上ひさしや女性ファンに書いた手紙、清張による江戸川乱歩への弔辞、直子夫人へのインタビュー、
朝日新聞勤務時代の同僚による清張の思い出、清張が描いたエッセイ漫画や絵など、貴重な原稿や写真も収録。
松本清張の小説世界、人柄、映像作品の魅力がよくわかるので、清張ファンはもちろん、未読の人の入門書としてもおすすめ。

「清張地獄」に堕ちたくない人はぜひ!

*巻末に文庫特典としてみうらじゅんのインタビューを収録。

※この電子書籍は2019年7月に文藝春秋より刊行されたムック『みうらじゅんの松本清張ファンブック 清張地獄八景』を文庫化したものを底本としています。

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Posted by ブクログ

清張がこんなに茶目っ気のあるおじさんだとは思わなかった。
だって、自分が原作のドラマや映画にちゃっかり脇役として出演しているんだもの。本書では、みうらじゅんが色鉛筆でそのうち12脇役を描いている。しっかり笑える。
佐野洋×山村正夫の清張対談が読ませる。パチンコ好きだったとか、風呂嫌いだったとか、英会話の個人レッスンも受けていたとかいった裏話も出てくる。清張は経済的事情で上の学校へは行けなかった。もし行っていたら、学者にでもなって、清張ワールドはなかったかも、と佐野は推測している。さもありなん。
写真の一枚。ユニフォーム姿で、真剣にバットを振る清張の姿がなんとも可愛い。

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2025年05月03日

Posted by ブクログ

おちゃらけ本かと思いきや、決してそうでは無い。小説や作品からだけでは知り得ない松本清張の姿が、見えてくる。

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2023年03月07日

Posted by ブクログ

とにかくみうらじゅん氏のパートが面白い。分かりやすい。かみ砕きすぎて身もふたもない。
松本清張はホラー作家とか、既婚者じゃないと本当の面白さは分からないとか、卑近な例えが腹落ちしてしまうところがまた楽しい。
高尚な社会派作家だとばかり思っていたが、実は「男のどうしようもなさ」を描いていたのだなあ。みうらじゅんの説明の後に松本清張を読むと、たしかに下半身に引きずられて弱みを作ってしまった男が、保身のために罪を犯してドツボに嵌る話ばかりなのである。
本書を読むと松本清張を身近に感じるはずだ。

ちなみに個人的にはみうらじゅんパート以外は特に面白いと感じなかった。

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2022年06月14日

Posted by ブクログ

昭和を代表する作家でありながら、令和になっても映像化は引きも切らず、また文庫本で大半の著作を読めてしまうグレートすぎる作家 松本清張。

本書は松本清張生誕110年を記念して一昨年刊行されたムック本の文庫化。<作品><人となり><映像>の紹介はもちろんのこと、なんと言っても白眉はみうらじゅんが敬愛してやまない松本清張を、随筆と対談を通して深くて鋭い考察を開陳。これが秀逸。500頁の大部なのに充実の内容でグイグイと一気読み。

本の帯の惹句に<押したら最後、底なしの『生き地獄』へ転落してしまう『清張ボタン』><人間の業や深い闇を暴き出す清張はホラー作家だ!>とある。確かに言える。

清張の小説には、コツコツ真面目にやってきた中年男がよく登場する。あることから地位と金を掴み、つい調子に乗り愛人まで掴んでしまう。元は小市民ゆえ歯止めは利かず、不倫地獄に真っ逆さま。後は破滅か、殺人か…というストーリーを手を変え品を変え描く。

清張作品の大半を読破したみうらじゅんは、浄土宗の<往生要集>と同根であると喝破。清張先生は『調子に乗っているとこんなえらい目に遭うぞ!』という戒めを説いているんだと。ゆえに清張作品を『反面教師』として読み給えと重ねて言う。清張作品を読むなら、家庭を持ってから読み、読後感がぐさりと来た人は今後の人生で『清張地獄』に堕ちるかも…と警告を発する。因果応報、煩悩の果て、人間の業…それは地獄のサスペンス。その因果応報が色濃く作品として『ゼロの焦点』を挙げる。

まぁ、よくぞこれだけ男女の色恋生き地獄を描くよなぁって唸ってしまう。想像するに清張自身が<不倫><女性からの誘惑>に並々ならぬ興味と願望を抱いていた顕れではないのかな。

この自身の『清張地獄に堕ちたい』願望が牽引力となり古代史だの書道教室だの美容業界だの…さもありなんなシチュエーションプレイを展開したという見立ては暴言妄言かな。

実はこの本にもその片鱗が明らかに出ている箇所がある。それは作家 佐藤愛子の寄稿。直木賞選考委員が誰ひとりとして推さないにもかかわらず、清張だけが強力に推薦し受賞。また作家の講演旅行に彼女を捻じ込んだり…。押しも押されぬ大作家先生ならではの<ご乱行>ぶり。確かに若かりし頃の佐藤愛子の写真(359頁掲載)からはまばゆい美しさが放たれている。

みうらじゅんの説く『清張地獄』が面白く、ついつい長口舌になってしまった。

その他にも、みうらじゅんは3氏<船越英一郎・岩井志麻子・泉麻人>と対談、鼎談<京極夏彦・大沢在昌・宮部みゆき>、対談<北村薫・有栖川有栖><佐野洋・山村正夫>インタビューでは『砂の器』をはじめ清張作品の脚本を手掛けた橋本忍、6作に出演した岩下志麻、清張婦人の松本直子、朝日新聞社広告部時代の同僚…読み応えありありの500頁。松本清張のことが丸わかりの『一家に一冊』常備本。

ええ大人には<やる気スイッチ>なんてものは今さら必要ではなく、<清張ボタンのスイッチ>を押さないようにすることが肝要かと。ええ大人、とりわけ中年のおっさんのセーフティネットとしても清張作品が存在していることを思い知った一冊。

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2021年03月01日

Posted by ブクログ

松本清張の大ファンであるみうらじゅんが様々な媒体で書いてきた清張論や対談などの記事、イラスト、なりきり小説を中心に、「文藝春秋」や「週刊文春」、「オール讀物」に掲載された清張に関する記事を厳選して一冊に。

妻、直子さんと橋本忍氏のインタビューがよかった。

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2022年02月07日

Posted by ブクログ

昔、松本清張の作品を読んで、なんだかなぁと思った人にオススメ。
もう一度、松本清張を読み直したくなる一冊。

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2021年09月03日

Posted by ブクログ

いつもの緩い感じかと思って読んだら、かなりしっかり内容である意味、びっくり。

ミステリーが好きなのに、あの時代のものは読んだことがないのである。というか、テレビや映画などの情報がインプットされて、読んだり知った気になっていただけだと、今更に気づく。

見とるぞ、見とるぞ、なるほど昭和の人間はぞくぞくする(笑)

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2021年03月29日

Posted by ブクログ

楠木健先生が激賞されていたので購入。

「(清張作品を読むなら)結婚して、できれば子供もいる夫がいい。まあまあの仕事にありつけていて、そこそこの暮らしができている人なら、もっといい。『これが幸せというやつか』なんて、プチ守りに入っている人なら、言うことありません」

晴れて私も資格を得たので、清張読みの端くれになろうと思う。

「地獄」にとても身近に直面した経験があるので、平凡な小市民の人生にこそ深い因業が潜んでいることは痛いほど分かる。そんな現代日本の「プチ守りに入ったおじさん」にとって、最良の戒めが清張作品かもしれない。

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2021年01月23日

Posted by ブクログ

みうらじゅんさんの清張愛が炸裂。

ただし、本書の半分はみうらさん以外の清張ファンの方々の文章やインタビューになる。

もう孫のいる私の世代でさえ清張の描く風俗は、懐かしさや古くささを感じるので、今の若い人が清張を読んでどう感じるのかは分からないが、案外新鮮な感じなのかもしれない。

もっとも人間の本質的なものはそう変わってないので、三浦さんが指摘している清張スイッチは今でも十分生きていて、若い人も共感するのかもしれない。

清張の本はそれなりに待っているが、本書でも多くのページを割いている映像作品については、ほとんど見てないので、機会があったら見てみたい。

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2023年08月06日

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