【感想・ネタバレ】白が5なら、黒は3のレビュー

あらすじ

1995年、ピッツバーグ。O・J・シンプソン事件の裁判の行方が全米で注目され、人種間の緊張が高まるなか、混血のボビーは、黒人のアイデンティティーを隠し、白人としてやり過ごしてきた。しかし、出所したばかりの白人の親友が起こした黒人青年へのヘイトクライムに、不本意に関わってしまったことをきっかけに、親友、そして家族との関係は思いもよらぬ展開へ……人種問題の核に迫るクライム・ノヴェル。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

タイトルの翻訳が秀逸、原書のタイトルではアメリカ人しか分かりにくいだろうが、この翻訳で意味を理解したら、この本の趣旨がグンと伝わってくる。

アメリカ合衆国における黒人差別の根深さ、そして貧困層にはびこる薬害とアルコール依存症。チャンスをつかみ取ればのし上がれる国…とは言え、底の深淵は果てしなく、のし上がるパワーとラックは一体どれほど必要なのか。

日本だって、よその国のことは言えない。貧富の差は果てしなく広がりだし、離婚率はあがるくせに、養育費の不払いは増加し、女性の雇用は条件が悪い。生活苦の現実から目を背けるには酒が最適のツールとなり、酔った頭には自己否定とヘイトスピーチが心地よいつまみとなり、自己判断できない状況でヤバい思想に洗脳される…。

酒はアカン、自分で考えることから逃れたらアカン、そして差別はアカンということを日々意識して生きていこうと改めて心に刻んだ。

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2021年10月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

アルコール依存症の母とアルバイトで食いつなぐ貧しい生活を送る青年ボビー。
息子ボビーに対する愛情は嘘偽りないものだが、どうしてもアルコールを断つことができない母イザベル。
父は黒人だが、ボビーには肌の色に明白な特徴はなく、祖父の思想の影響もあり、白人としての人生を歩んできた。

物語は学生時代に唯一といっていい友人アーロンが麻薬取引の罪で服役していた刑務所から出所し、ボビーと再会するところから始まる。
以前は細面であんなに黒人への憧れを抱いていたアーロンが筋骨隆々となり、白人至上主義と成り果て昔の面影は見る影もない。

2人で立ち寄ったホットドックショップで早速暴行事件を起こし、相手を瀕死状態にしてしまうアーロン。
とっさのことでアーロンを連れて逃げたボビーだが、その日以降そのことで頭がいっぱいに。

そんな折、偶然イザベルの前に現れた父ロバート。
ボビーの人生に突如とてつもない嵐が吹き荒れ始める。

人種問題、母子家庭の貧困問題、流産による後遺症ストレス性家庭崩壊、アルコール依存症、青少年期の友人問題、様々なことが様々な角度で交じり合い、様々な葛藤、心理模様が絶妙な語りにより繰り広げられる。
まさに一筋縄ではいかない人生をぎゅっと凝縮した物語。

結末が切なすぎる。
でもこの結末だからこそ胸に残る別の人生から得られる糧がある。

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2021年04月24日

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