あらすじ
「昔、文字は本当に生きていたのじゃないかと思わないかい」。始皇帝の陵墓づくりに始まり、道教、仏教、分子生物学、情報科学を縦横に、変化を続ける「文字」を主役として繰り広げられる連作集。文字を闘わせる遊戯に隠された謎、連続殺「字」事件の奇妙な結末、本文から脱出し短編間を渡り歩くルビの旅……。小説の地平を拓く12編、川端康成文学賞・日本SF大賞受賞。(解説・木原善彦)
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Posted by ブクログ
文字と全力で遊んでいる小説という印象。一般常識に疎い私は気付くのがだいぶ遅れてしまったが、犬神家のオマージュが出てきたあたりで確信に変わった。作者のギャグセンスがいまいちツボに合わない私としては、ところどころに仕掛けられたボケ・ユーモアを鼻で笑うことしかできなかった。
だが、日本語で使用される文字がデジタルデータとなることで失われる、文字同士のつながりやそれぞれの個性、そして、これは私の勝手な考えなのだが、(本来文字の持つ)創造性についての指摘が後半にあり、この点について大いに学ぶことがあった。
もじとはえでありなにものにもしばられずじゆうないきものであると
Posted by ブクログ
12短編。
「文字渦」
「緑字」
「闘字」
「梅枝」
「新字」
「微字」
「種字」
「誤字」
「天書」
「金字」
「幻字」
「かな」
ん? 中島敦「文字禍」? いや「もじうず」!?
あらかじめ、こりゃ歯が立たんだろうと感じたので、まずはネットで感想や評論を漁った。
あまり読み込まないようにしながら、短編一作ずつ分けて言及しているものを探し、evernoteにコピペ。
ざっくり感想というか所感を書いている記事、逐語的にあらすじをまとめている記事、丁寧に解説してくれている記事、と分けた。
各短編を読む前に、記事内検索を駆使して、ざっくり所感を読んだ上で、短編を読んだ後、逐語的あらすじで思い出し、しこうして丁寧解説を読み、と集合知の手助けを得ながら読んだ。
感想。面白い!(小並感)
で済ますのも自分にとってもったいないので少し感想を書くが、そういう本の読み方(コピペとか検索とか)も包括するような内容が、まさに書かれていると感じた。
文字の戦い、漢字とかなの領地を巡る戦争とか。……神経系が人間の寄生生物だという発想があるが、文字も人間に仕えるふりをして人間を侵略している。縦軸。
縦軸から限りなく横軸に近い、ここ数十年の話題として、(木簡→)紙→フレキシブルディスプレイ=帋。
そのタイミングに草書→行書→楷書といった書体の変遷、UnicodeやテキストデータやIMEや、文字と情報のかかわりがゴタゴタして、そのへん理系の人なら判るんだろうなと憧れてしまう。
わかることと、わからないところと。
先行作品としては、「プロローグ」「エピローグ」ともつながっている。はず。どうつながっているかはわからん。
しかし円城塔のサービス精神、パロディ精神、笑ってねというメッセージはじゅうぶんに受け止めた。