【感想・ネタバレ】深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説のレビュー

あらすじ

昭和12年(1937年)5月、銀座で似顔絵描きをしながら漫画家になる夢を追いかける那珂一兵のもとを、帝国新報(のちの夕刊サン)の女性記者が訪ねてくる。開催中の名古屋汎太平洋平和博覧会の取材に同行して挿絵を描いてほしいというのだ。超特急燕号で名古屋へ向かい、華やかな博覧会を楽しむ最中、一報がもたらされた殺人事件。名古屋にいた女性の足だけが東京で発見された!? 同時に被害者の妹も何者かに誘拐され――。名古屋と東京にまたがる不可解な謎を、一兵はどんな推理を巡らせて解くのか? 空襲で失われてしまった戦前の名古屋の町並みを、総天然色風に描く長編ミステリ。/解説=大矢博子

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 この前読んだ「たかが殺人じゃないか (昭和24年の推理小説)」の前日譚になる。今作は那珂一兵が探偵役を務める<昭和ミステリー>シリーズの第1作にあたり、彼以外にも主要人物が重複して登場する。昭和12年、彼はまだ似顔絵書きの少年である。しかし以前から活躍しており、知る人ぞ知る名探偵である。

 東京と名古屋を結ぶ殺人事件を追うわけだが、当時の風景風俗が描かれており、何やら妖しい江戸川乱歩テイスト。と思っていたら、ラストのほうは、ちょっと哀しい横溝正史テイストに。
 この日中戦争から太平洋戦争に向かう時代は、作者の辻さん自身の少年時代なのだ。事件の背景が時代に密接に関わっている。今作のダークさ(エログロというか)は、エピローグ(昭和22年)の青空で少しは払われたように感じた。「たかが…」より上の評価としたい。

1
2021年02月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『たかが殺人じゃないか』を読むために読んだ。

ミステリー小説ながら、時代小説として充分読み応えがあって面白かった。当時の空気感が濃くて、逆に現代の常識が通じないところに気持ち悪さを感じた。すごい。

実際の事件が起きるまでが、予想よりも待たされ、特に早く知りたいというモチベはなかなか湧かなかった。これは好みの問題だな。面白いんだがなかなか読み進められない。
トリックについては、これはあとで使うからね!ばりに散りばめられてるし、建物の仕掛けもでしょうな感。あるある。
犯人も、これ良いのかな。まあフェアだが、本格小説というにはバレバレでは。あまりにも容疑者が少ないしやってのけられる能力の人も少ないし、余所に目線をやろうにもこの閉じられたメンバー間での話ばかりなので、わかってしまう。

全体的に、反戦なんだなとわかる。これはメタだが、結末を知ってる作者だからこそ、先を見据えたキャラを出せて、それを通してほらねと言ってるわけなので、はあ、そうですよねっていう気持ち。無邪気にすごいと楽しめなかった。つまらない人間になってしまった。

人間ドラマもあんまり楽しめなかったな。2時間ドラマで、映像の演出があったら深みにハマれるかもしれないが、そこまで。
でもまあその時代の空気を存分に感じられたし、館も面白かったしっていう感想。ミステリーとしてはまあまあかな。
本命のほうに期待する。これを越えてて欲しい。

史実とフィクションのあんばいは良かった。良いさじ加減。史実の人出してて大丈夫か?って思ったけど、まあいいや。ちょっと勇気が出た。

うっすら横溝っぽいなと思ってたら同じような感想を見かけて、ですよね!っていう気持ち。

0
2021年08月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

パズラーとして丁寧な造りだけれど、ミステリ色はあまり強くない。事件そのものも半ば近くまで起きないし、メイントリックもこの長さの長編を支えるには、少し弱い気がする。だから昭和初期を舞台にした風俗小説を読むきでないと当てが外れるかも知れない。個人的には大佛次郎を連想した。時代を先どっていた伯爵の、乾いた絶望の淡々とした描写が胸に刺さる。

0
2021年02月08日

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ネタバレ

トリックとしては可能としても、建物の構造に仕掛けがあるのは、フェアではない気がする。動機もかなり無理があるような。

0
2023年08月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 2021年1月刊(親本は2018年刊)。アニメ作品の脚本家としても名高い筆者が、齢86歳にして著したミステリ。2020年に発表され、史上最高齢でのミステリ年間ランキング三冠を達成した『たかが殺人じゃないか』に連なる物語と側聞し、『たかが~』を読む前に取り寄せた。筆者の本を手に取るのは、25年ぶり。1937年に開催された、名古屋汎太平洋平和博覧会を取材する女性記者に同行した利発な少年・一兵が巻き込まれる奇怪な事件の顛末が描かれる。
 この博覧会を実際に訪れた経験のある筆者(愛知県出身)だけに、戦前の博覧会の絢爛たる模様、当時の空気感をあますことなく描き出していると思う。乱歩的な怪奇趣味が詰め込まれた建造物が登場する趣向も印象的だった。一方で、「とある人物に、自分の居場所を誤認させる」というメイントリックは、私がたまたま読んでいた、筆者の過去作のトリックに同種のものがあったので、新味を感じられなかった嫌いもあり、そこは減点。犯人の意外性にも乏しかった。
 とはいえ、幻想趣味あふるる、犯人の最期の情景、本編の10年後を描くエピローグの叙情感などには感打たれたし、本書トータルでは、そう悪い印象ではない。早々のうちに、一兵のその後が描かれる『たかが~』を手に取りたい。(終)

0
2021年11月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

昭和12年。太平洋戦争前夜だね。不穏な気配を感じつつ、まだまだ銀座や名古屋は賑わう。そう、名古屋なんだよ、メインな場所は。
那珂一兵は似顔絵かきだが、探偵もする。新聞記者のモガ瑠璃子。満州大富豪と纏足の妻。ケシ畑のおかげで大金持ち。愛人は日本人。その妹が銀座のマッチガール澪。一兵片思い中。満州大富豪と友人の日本人伯爵。
伯爵がお金をかけた館と猟奇殺人。パノラマ島奇談ぽいエログロ昭和。
澪は恋人と王道楽土満州へ渡るつもりでいたが、恋人が負傷したため、やめる。それは伯爵の策略。世界をまわった伯爵は王道楽土ではないことを知っていたから。
あらすじをつらつら書いたが、昭和初期の雰囲気が良い。

0
2021年06月15日

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