【感想・ネタバレ】深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説のレビュー

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Posted by ブクログ

読書好きの友人から貰った探偵小説。面白く読めました。ありがとうございました。

著者は名古屋生まれの脚本家、辻真先さん。昨年、「たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説」で年末ミステリーランキング3冠を達成。昭和7年のお生まれなので88歳というご高齢。本作は「たかが殺人じゃないか」の前日譚という位置付けになります。

昭和12年に実際に行われた「名古屋汎太平洋平和博覧会」の最中に銀座と名古屋にまたがって発生した不可解な殺人事件。本書は正統ミステリーで、犯人探しの材料は(たぶん)全て読者に提供され、最後は探偵が関係者全員の前で推理を披露するという構成になっています。ミステリーの種類はいわゆる「不可能犯罪」もので、「こいつらがここにいるのに、こんなところで犯罪が行われるわけがない」という設定。個人的には、超大掛かりなトリックや動機がちょっと大味な気がしました。
それでも、この本は面白いです。本書の最大の読みどころは昭和12年当時の銀座、名古屋の風俗描写と思います。アドバルーンなんて存在を忘れていたし、燐寸売りの少女の存在については知りませんでした。そして、名古屋の旧遊郭地帯で行われる怪しい余興、名古屋博覧会での悪趣味な展示物も戦前のエログロの雰囲気を生々しく表現しています。
また、本書はボーイミーツガールの物語の要素もあります。その顛末にもひとつの謎が提供されています。その解答は最後に用意されていますので、本として非常に座りが良くなり、気持ちの良い読後感を得ることができました。

謎解きは大味と書きましたが、戦前の探偵小説はその「大味さ」が魅力だったのかもしれません。それを考えると、本書はやはり魅力的なエンタメ本です。この本を読んだら、戦前の鬼畜系エログロ系探偵小説を読みたくなり、大昔に読んだ江戸川乱歩の「孤島の鬼」を買ってきました。こちらも面白いです。

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2021年05月08日

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ネタバレ

 この前読んだ「たかが殺人じゃないか (昭和24年の推理小説)」の前日譚になる。今作は那珂一兵が探偵役を務める<昭和ミステリー>シリーズの第1作にあたり、彼以外にも主要人物が重複して登場する。昭和12年、彼はまだ似顔絵書きの少年である。しかし以前から活躍しており、知る人ぞ知る名探偵である。

 東京と名古屋を結ぶ殺人事件を追うわけだが、当時の風景風俗が描かれており、何やら妖しい江戸川乱歩テイスト。と思っていたら、ラストのほうは、ちょっと哀しい横溝正史テイストに。
 この日中戦争から太平洋戦争に向かう時代は、作者の辻さん自身の少年時代なのだ。事件の背景が時代に密接に関わっている。今作のダークさ(エログロというか)は、エピローグ(昭和22年)の青空で少しは払われたように感じた。「たかが…」より上の評価としたい。

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2021年02月11日

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ネタバレ

『たかが殺人じゃないか』を読むために読んだ。

ミステリー小説ながら、時代小説として充分読み応えがあって面白かった。当時の空気感が濃くて、逆に現代の常識が通じないところに気持ち悪さを感じた。すごい。

実際の事件が起きるまでが、予想よりも待たされ、特に早く知りたいというモチベはなかなか湧かなかった。これは好みの問題だな。面白いんだがなかなか読み進められない。
トリックについては、これはあとで使うからね!ばりに散りばめられてるし、建物の仕掛けもでしょうな感。あるある。
犯人も、これ良いのかな。まあフェアだが、本格小説というにはバレバレでは。あまりにも容疑者が少ないしやってのけられる能力の人も少ないし、余所に目線をやろうにもこの閉じられたメンバー間での話ばかりなので、わかってしまう。

全体的に、反戦なんだなとわかる。これはメタだが、結末を知ってる作者だからこそ、先を見据えたキャラを出せて、それを通してほらねと言ってるわけなので、はあ、そうですよねっていう気持ち。無邪気にすごいと楽しめなかった。つまらない人間になってしまった。

人間ドラマもあんまり楽しめなかったな。2時間ドラマで、映像の演出があったら深みにハマれるかもしれないが、そこまで。
でもまあその時代の空気を存分に感じられたし、館も面白かったしっていう感想。ミステリーとしてはまあまあかな。
本命のほうに期待する。これを越えてて欲しい。

史実とフィクションのあんばいは良かった。良いさじ加減。史実の人出してて大丈夫か?って思ったけど、まあいいや。ちょっと勇気が出た。

うっすら横溝っぽいなと思ってたら同じような感想を見かけて、ですよね!っていう気持ち。

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2021年08月14日

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ネタバレ

パズラーとして丁寧な造りだけれど、ミステリ色はあまり強くない。事件そのものも半ば近くまで起きないし、メイントリックもこの長さの長編を支えるには、少し弱い気がする。だから昭和初期を舞台にした風俗小説を読むきでないと当てが外れるかも知れない。個人的には大佛次郎を連想した。時代を先どっていた伯爵の、乾いた絶望の淡々とした描写が胸に刺さる。

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2021年02月08日

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ネタバレ

トリックとしては可能としても、建物の構造に仕掛けがあるのは、フェアではない気がする。動機もかなり無理があるような。

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2023年08月17日

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先に「たかが殺人じゃないか」を読んで興味をもったが、本格ミステリとしての面白さは上記に及ばなかった印象。
不思議な建物と大がかりなトリックは十分に面白いものだったが、動機部分(や登場人物の行動)があまりしっくりこないのと、本の分量に対して謎解きの比重が少ないように感じられた。
おそらく、時代背景の描写やほろ苦い青春の表現に力が入っていたためと思われ、好みは分かれるだろう。
前半が全くストーリーに入り込めずモヤモヤしたが、後半はかなり引き込まれるものがあった(最終盤になるとややくどい気もしたが)。

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2023年02月20日

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昭和12年の銀座と名古屋が舞台のミステリー。実際に1937年に開催された名古屋汎太平洋平和博覧会が物語に取り込まれており、読む楽しさを倍増させてくれます。読み終わったあと、当時の会場の写真を検索してしばらく見入ってしまいました。

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2023年02月28日

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時代描写が長く、事件に入るまでに挫折しそうになりました。内容もグロテスクで、自分の好みには合いませんでした。

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2022年03月30日

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あまり好きではなかった、誇れなかった愛知が、名古屋が極彩色で描かれる。エネルギッシュで華やかで退廃的な昭和一桁の魅力あふれる人々に、不安の翳りを感じる戦争の気配。
若干エログロ寄りミステリー何だけど、それ以上に当時の息遣いの感じられる紀行文みたいで愉快千万。
今は亡き、祖父母に贈りたい物語。

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2021年12月21日

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ネタバレ

 2021年1月刊(親本は2018年刊)。アニメ作品の脚本家としても名高い筆者が、齢86歳にして著したミステリ。2020年に発表され、史上最高齢でのミステリ年間ランキング三冠を達成した『たかが殺人じゃないか』に連なる物語と側聞し、『たかが~』を読む前に取り寄せた。筆者の本を手に取るのは、25年ぶり。1937年に開催された、名古屋汎太平洋平和博覧会を取材する女性記者に同行した利発な少年・一兵が巻き込まれる奇怪な事件の顛末が描かれる。
 この博覧会を実際に訪れた経験のある筆者(愛知県出身)だけに、戦前の博覧会の絢爛たる模様、当時の空気感をあますことなく描き出していると思う。乱歩的な怪奇趣味が詰め込まれた建造物が登場する趣向も印象的だった。一方で、「とある人物に、自分の居場所を誤認させる」というメイントリックは、私がたまたま読んでいた、筆者の過去作のトリックに同種のものがあったので、新味を感じられなかった嫌いもあり、そこは減点。犯人の意外性にも乏しかった。
 とはいえ、幻想趣味あふるる、犯人の最期の情景、本編の10年後を描くエピローグの叙情感などには感打たれたし、本書トータルでは、そう悪い印象ではない。早々のうちに、一兵のその後が描かれる『たかが~』を手に取りたい。(終)

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2021年11月18日

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乱歩のパノラマ島を思い出す雰囲気だなぁーと思って読んでいたら、巻末に影響を受けたと辻先生自ら書いていた

伊藤晴雨のオドロオドロしい絵を見たばかりだったので、ジオラマ館のイメージは容易だった

あとラストエンペラーで坂本龍一が演じていた甘粕正彦さんが出ていてびっくり

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2021年11月09日

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ネタバレ

昭和12年。太平洋戦争前夜だね。不穏な気配を感じつつ、まだまだ銀座や名古屋は賑わう。そう、名古屋なんだよ、メインな場所は。
那珂一兵は似顔絵かきだが、探偵もする。新聞記者のモガ瑠璃子。満州大富豪と纏足の妻。ケシ畑のおかげで大金持ち。愛人は日本人。その妹が銀座のマッチガール澪。一兵片思い中。満州大富豪と友人の日本人伯爵。
伯爵がお金をかけた館と猟奇殺人。パノラマ島奇談ぽいエログロ昭和。
澪は恋人と王道楽土満州へ渡るつもりでいたが、恋人が負傷したため、やめる。それは伯爵の策略。世界をまわった伯爵は王道楽土ではないことを知っていたから。
あらすじをつらつら書いたが、昭和初期の雰囲気が良い。

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2021年06月15日

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昭和10年代の名古屋を舞台にしたミステリーで、岐阜出身、名古屋で働いていたことがある私にとっては、聞き慣れた固有名詞も出てきて、そこが面白かったです。
怪人二十面相シリーズを彷彿とさせる作風でした。

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2021年05月05日

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「たかが殺人じゃないか」の前日譚と思ったが、同じ探偵役の本は沢山あり、そういうわけでもないらしい。

高齢の作者が描くせんぜんの名古屋は現実感が強く、当時の世相は確かにこうだったのだろうと思わせる。

トリックや人物相関などは、空想の羽根を広げた作者らしくケレン味に溢れたもの。
リアリティを追ってはいけない。

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2021年04月04日

Posted by ブクログ

「たかが殺人じゃないか」読んだばかりなのに、後半になってやっと登場人物の繋がりがわかったという間抜けな私。
ということで、続けて読まなくても十分楽しめます(笑)

空間認知が弱い私には、この推理はピンとこなかったものの、時代の面白さと現代にも通用するトリックが、帰って新鮮で面白い。おどろおどろしいところも。

昔の推理小説を紐解いてみよう、読み返してみようと思ったのだ。

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2021年03月16日

Posted by ブクログ

著者の集大成的な作品となる<昭和ミステリ>三部作の第一弾ということで、拘りが随所に感じられる。戦前の昭和という時代を立体化する為に当時の情景描写、世相、風俗、蘊蓄の数々が散りばめられており興味をそそられるが、肝心な物語の本筋は駆け足で、著しく奥行きに欠けている。著者の経歴とこの猟奇的で大仕掛けな舞台設定ならば、キャラクターの魅力とストーリーテリングの妙、その両方を如何様にも発揮出来そうなだけに何とも物足りない仕上がり。しかし、刊行当時86歳という御年齢でこの作風を執筆出来るパワフルさには感服するしかない。

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2021年02月20日

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