あらすじ
「私の一生の中で大連の昭和20年8月15日より青い空はない。生徒の前に先生が一列に並んでいた、異様な空気だった」、中国で迎えた終戦の記憶から極貧の美大生時代まで。夫婦の恐るべき実像から何の役にも立たないとわかっているけれど読まずにいられない本の話まで。「卵、産んじゃった」などの単行本未収録作を新たに加えた、愛と笑いがたっぷり詰まった極上エッセイ集。
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Posted by ブクログ
絵本の作者としか知らず、なんとなくエッセイが読みたくなって買った1冊。
とんでもなく面白くて、なぜこの人のエッセイを今まで知らなかったのだろうと後悔した。
戦中、戦後、高度経済成長期を経ていくなかの記憶が、些細な1部なのだろうが佐野洋子さんが書くと一粒のちいさな宝石みたいに輝いている。いや、恐らく佐野さんは日常から宝石を発掘するのが上手い人なんだろうなと思う。
特に月の話が好きだ。人類が月へ行ったことへの憤り方も笑ってしまうほど面白いのだが、月は過去を思い出すものだ、というのに付随する彼女の月があった日々の記憶の数々はまるで同じ光景を見ているかのように染み入ってくる。
と思えば、最後の話ではなぜか延々と大便の話で、立派な便のときはそれで「あいうえお」を全て書こうとした話なんかもあり、なんでこんな面白い人を知らずに過ごしていたのか悔しくなるほどだった。後半のご病気のときの便については、あまりの状態に心配になるのだが、やけに詳細な描写に読んでる方も脱力するというか、笑いそうになりなんだか口がモニョモニョしてしまう。
他のエッセイも読みたくて、今からもう楽しみになっている。