あらすじ
平凡な家庭を持つ刑務官の平穏な日常と、死を目前にした死刑囚の非日常を対比させ、死刑執行日に到るまでの担当刑務官と死刑囚の心の動きを、緊迫感のある会話と硬質な文体で簡潔に綴る、芥川賞受賞作「夏の流れ」。稲妻に染まるイヌワシを幻想的に描いた「稲妻の鳥」。ほかに、「その日は船で」「雁風呂」「血と水の匂い」「夜は真夜中」「チャボと湖」など、初期の代表作7篇を収録。
◎「丸山健二の文学性は、ジェームズ・ジョイスに通じる。本作品集に収録されている初期短編を改めて読みながら、私はそう思った。(中略)すぐれた芸術家は生涯を通して変貌を続けるが、若き日の作品群は作品を受容する側にとっての定点を提供する。ピカソのキュビズムは、初期の見事な絵画によって担保される。このような文脈において、本文庫に収められた初期の短編の数々は、弱冠23歳で芥川賞を受賞し、長年文壇と一線を画して孤高の道を歩んできた丸山健二の文学の全体像を理解する上で、重要な意味を持つのではないか。」<茂木健一郎「解説」より>
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Posted by ブクログ
先週読んだ山口果林著「安部公房とわたし」に、
他人の作品を滅多に褒めない安部が珍しく感動し、
わざわざ出版社から著者自宅の電話番号を聞いて
賞賛の電話をしたところ、
丸山健二から「誰ですか、あなた?」と言われて気分を害した、
と書いてあったので、“孤高の作家”丸山健二を読んでみることに。
丸山健二っていうと、映画にもなった「ときめきに死す」が有名だけど・・・
1966年に芥川賞を取った「夏の流れ」。
80数ページの短編というか、中編というか。
刑務官の話で、主人公を含めた中堅刑務官2人と、若手刑務官との話。
若手刑務官は、まだ死刑囚を死刑台に送ったことがない。
初めてそうする場面での、主人公たちのお話。
結局、若手刑務官はそれが出来ず、当日、欠勤し、仕事も辞めてしまう。
テーマとは裏腹に、結構、さわやかに楽しめる中間小説という感じ。