あらすじ
山を住処とし、山を仕事場とする小屋番たち。
ちょっと懐かしくて、あたたかい気持ちになる、全53話を収録。
巻末には、ピオレドール受賞クライマーで南アルプス・甲斐駒ヶ岳七丈小屋管理人を務める花谷泰広さんのスペシャルエッセイを収録。
『山と溪谷』誌に2001年から2006年まで長期連載された、全国53の山小屋管理人、小屋番たちによるエッセイをまとめた書籍を再編集。
<目次>
■第一章 山小屋の仕事一二カ月
第一話 山小屋の「正月」 山口 孝(涸沢ヒュッテ)
第二話 尾瀬の季節 星 菊芳(原の小屋)
第三話 山岳トイレ只今研究中 只木貞吉(丸川荘)
第四話 穂高のいちばん長い日 宮田八郎(穂高岳山荘)
第五話 小屋番山岳救助隊 佐々木 泉(阿曾原温泉小屋)
第六話 ボッカの哲学 草野延孝(鍋割山荘)
第七話 北八ツの森とともに 島立健二(北横岳ヒュッテ)
第八話 越百の生活 伊藤憲一(越百小屋)
第九話 春夏秋冬冬富士を見つめて 佐藤 保(佐藤小屋)
第十話 夏空を待ち続けて 米川喜明(蓼科山頂ヒュッテ)
第十一話 手づくりの山小屋 松澤寿子(船窪小屋)
第十二話 小屋番三カ月 神谷浩之(キレット小屋)
第十三話 北鎌尾根の番人 小池照二(大天井ヒュッテ)
第十四話 山小屋のオフシーズン 小山義秀(北穂高小屋)
第十五話 北アルプス・ネットワーク 穂苅康治(槍ヶ岳山荘)
第十六話 いいほうがいいじゃないですか 柳澤太平(赤岳鉱泉)
第十七話 高千穂の日の丸 林 満男(霊夢庵)
第十八話 わが家のトイレがよくなった 米川正利(黒百合ヒュッテ)
第十九話 九回裏の守備固め 藤森周二(赤岳天望荘)
第二十話 オフシーズンはオンシーズン 若林邦彦(白馬山荘)
■第二章 新しいわが家をつくる
第二十一話 日本でいちばん小さな山小屋 手塚宗求(コロボックル・ヒュッテ)
第二十二話 愛鷹の翁 加藤 満(愛鷹山荘)
第二十三話 越後駒元年 米山孝志(駒の小屋)
第二十四話 いこい山荘 永田昌夫(いこいの山岳会)
第二十五話 山で暮らすということ 長沢洋(ロッジ山旅)
第二十六話 山の今昔 伊藤玉男(銅山峰ヒュッテ)
第二十七話 うつぎと五十年 堺澤清人(空木駒峰ヒュッテ)
第二十八話 山小屋を建て替える 新井信太郎(雲取山荘)
■第三章 山小屋に入り、山を見つめる
第二十九話 「新米管理人」、二年目の夏へ 清水ゆかり(朝日小屋)
第三十話 小屋番を楽しむ 佐伯直樹(大日平山荘)
第三十一話 山のルネッサンス 塩沢久仙(広河原山荘)
第三十二話 警備隊から小屋番へ 馬場保男(谷川岳肩の小屋)
第三十三話 山小屋の「暮らし」 渡邊佳苗(燕山荘)
第三十四話 青年を育てた山と人 竹内敬一(青年小屋)
第三十五話 山小屋家族 吉木綾子(金峰山小屋)
第三十六話 山小屋のとーちゃん 森山 健(高谷池ヒュッテ)
第三十七話 みゃあらくもんの夢語り 高橋重夫(仙人温泉小屋)
第三十八話 伊東宗右エ門の思い出 伊東瑛子(餓鬼岳小屋)
第三十九話 くじゅうに育ち、くじゅうに帰る 弘藏岳久(法華院温泉山荘)
第四十話 拝啓 真砂沢ロッジより 佐伯成司(真砂沢ロッジ)
■第四章 山小屋をめぐる人々
第四十一話 登山者と小屋番 河村正博(塩見小屋)
第四十二話 山の哲人 星美知子(両俣小屋)
第四十三話 徳本の住人 今川剛之(徳本峠小屋)
第四十四話 鬼が守る山 五鬼助義之(前鬼宿坊・小仲坊)
第四十五話 大朝日岳のミョウキン和尚 西澤信雄(朝日鉱泉ナチュラリストの家)
第四十六話 山のセンス 角田英司(夜叉神峠小屋)
第四十七話 絵画と写真と三ツ峠 中村光吉(三ツ峠山荘)
第四十八話 桧洞丸の華 高城律子(青ヶ岳山荘)
第四十九話 光の四半世紀 原田臣久(光岳小屋)
第五十話 月山の山頂で 芳賀竹志(月山頂上小屋)
第五十一話 五回目の結婚式 竹本 勝(東海大学銀嶺荘)
第五十二話 ひだまりのひなた小屋 梅田浩生(日向小屋)
第五十三話 山小屋は人なり 花立昭雄(尊仏山荘)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
日々、仕事に忙殺され、理不尽な目に遭い何のために働いているんだろう・・と仕事に疲れてしまった時に、ふと山の雑誌に掲載されていたので買って読んでみた。なんと心が洗われる思いのした事か。心がすーと癒された事か。
山を自然を人をこよなく愛し、人生を山に捧げた山小屋の小屋版の方々。人が大勢押し寄せるアルプスの小屋もあるし数日に一度のみという地方も様々。共通しているのは自然に対する畏敬の念や謙虚な心と山に来た人を暖かく迎えてくれる心。自然の事を気遣いどうしたらエコにできるか、設備をどう維持していくか、おいしい料理をどうするか、冬の間どうメンテナンスするか。いろいろ思い悩む様子などが簡潔にエッセイとしてまとまっている。
読んでいて気持ちがとてもほっこりしてくる。
まるで山小屋に泊まりに行って暖炉に温まりながらゆっくりとした時間の中で小屋主の若い頃の思い出話や昔話を聞き入っているような、そんな気持ちにさせてくれる。
コロナが明けたら是非、ここに書いてある山小屋の小屋主に会いに訪れてみたいと感じる一冊だ。
Posted by ブクログ
日本各地の山小屋の小屋番によるエッセイ、全53話。
第一章 山小屋の仕事十二カ月 第一話~第二十話
第二章 新しいわが家をつくる 第二十一話~第二十八話
第三章 山小屋に入り、山を見つめる 第二十九話~第四十一話
第四章 山小屋をめぐる人々 第四十二話~第五十三話
・本書に登場した山と山小屋
[寄稿]山小屋を持続的に運営できる環境とは
花谷泰広(甲斐駒ヶ岳七丈小屋)
やまとけいこ/著「黒部源流山小屋暮らし」の読後、
では他の山小屋は?と考えての、読書。
2008年刊行の本を2021年に再編集して文庫化。
2020年の各山小屋の状況も掲載されています。
本書には、日本各地の小屋番さんの山小屋愛溢れる、
胸熱なエッセイがたっぷり詰まっていました。
山小屋の形態は様々。通年に期間営業、収容人員の大と小、
食事有と自炊など。立地も水や電気もいろいろと異なる。
更に、山の自然の恵み有れば、自然の驚異有り。
雪との格闘、台風、水の確保にトイレの問題。
山小屋を作る、再建する、建て替える苦労の連続。
それでも、自分の小屋、我が家と語る小屋番の心情の深いこと。
それらの小屋番という人生は如何に成されたのか。
親子もあるし、転職も。懇願もあれば自ら小屋を作る者も。
思い出に残る登山者や旧知の仲間や有志、スタッフたちの姿。
地球温暖化の影響や時代の変遷の中で変化する登山客もあれども、
山小屋と小屋番はそこにいるということの大切さ。
真摯に誠実に語る小屋番たちの言葉に、感極まってしまいました。
Posted by ブクログ
山小屋という言葉から受けるイメージとはスケール感を異にする北アルプス界隈のメジャーな施設から、たった1人で切り盛りする避難小屋に近しい規模のところまで、各地の小屋を預かる山男・山女たちが見つめ感じてきた日々が、ありのままに綴られている。
山小屋と聞くと、シーズンに幾度も登らないライトなハイカーにとっては、足を踏み入れるのを少し躊躇してしまうような、閉鎖的な面を持つ玄人の場…という印象も強いと思うが、この書の中にはもちろんそういった昔気質の頑固者たちもたくさん登場するし、一方で、旧来の雰囲気を打破すべく、サーヴィスの拡充などに腐心する比較的若い世代の経営者たちがいることも窺い知ることができた。
中でも、トイレにまつわるエピソードが多いことは興味深かった。
排泄物は微生物が食べるし、最終的には土に還るから大丈夫では…などと浅はかにも私は思っていたが、特に登山者の多い山域では深刻な土壌・水質汚染の要因になり得るのだ、ということをしっかりと教えられた。
また、本文庫の単行本が刊行されたのはかれこれ14年ほど前、元記事が連載されていたのはさらに数年遡ることになり、執筆当時から既に状況が大きく変わっている小屋も少なくないことが注釈によって分かり、当たり前ではあるが、少しうら寂しい気分にもなった。
Posted by ブクログ
五十五軒の小屋番さんによる山小屋エッセー。
金がなかった学生時代や社会人駆け出しのころは、宿泊代をケチってテント泊に明け暮れていた。
余裕が出てきた最近は山の荷物を減らすのに、積極的に小屋に泊まるようになった。
たまに出会う名物オヤジの話に耳を傾けたり、
その日に泊まった他の登山客と酒を飲みつつ話をしたり。
そういった山小屋の良さに触れるにつれ、小屋泊まりが好きになってきた。
山小屋は宿泊施設ではあるが、旅館やホテルではない。
泊まる側にも一定のマナーが必要だ。
登山者としての立場が必要で、あくまでも客ではないのだということを、読んでいて改めて思った。
小屋の人に迷惑をかけないように、山を楽しもう。
Posted by ブクログ
ひさびさ(?)に山の本。昔は山仕事って色々あったけれど今は少なく山小屋はその数少ない山の仕事のひとつだと思う。大変なことが多いのだろうなとうかがわせる一方で、山を愛する人の繋がり、姿勢に心があたたまる。トイレのお話しがすごく多くて、山小屋におけるトイレ問題の切実さを実感するw寒冷前線が通過した今週末、多くの山で初雪を観測したという。雪山をやらないので、今年はあとどれだけ山に行けるかなぁ。と考える
山小屋の運営に携わる人たちによるエッセイ。
文章を生業としないそれぞれの方々の
思いおもいの文章が綴られていて、
山登りとは縁のない私には
初めて知ることばかりで、興味深く読めました。