【感想・ネタバレ】民主主義のための社会保障のレビュー

あらすじ

社会保障のあり方がこの国の未来を左右する。

分厚い中間層を守り、格差・分断を断ち切るために社会保障はどうあるべきか。

年金を改革し介護保険をつくった異能の元厚労官僚による憂国の書、第2弾!

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Posted by ブクログ

元厚労省局長による社会保障論。
現在の社会保障のメリットや問題点などが分かりやすくまとまっており、私のように社会保障を実務とする人に強くお薦め出来る一冊です。

昨今、我が国の社会保障には、ミクロ的な観点から様々な批判の声もありますが、トータルで見ると日本の制度って本当に良く出来ていると思います。
民主主義を守るために社会保障が果たせる役割は何か、というのが本書の大きなテーマです。

本書では、前作の「教養としての社会保障」のおさらいとなる社会保障の基礎から、経済・財政にまで話は及びます。
「社会保障は、単なる高額所得者から低所得者への所得移転(救貧)ではなく、安定的な中間層を維持・形成するために、彼らを襲う『個人の力ではヘッジしきれない生活上のリスク』から彼らを守ること(防貧)にあります。」ってのが大きなポイント。
ざっくり言うと、福祉施策は救貧で、社会保障は防貧。
社会保障は安定的な中間層を守るという機能もあり、分厚い中間層こそが社会の中核を担い、政治の安定を支えるという主張には大いに同感。

社会保障の意義について、深く考えるきっかけとなる良書だと思います。

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2025年05月16日

Posted by ブクログ

前著「教養のための社会保障」と被るところもあるけれど、社会保障の大切さ、その課題が分かりやすく書かれていて、もっと社会保障に関心を持たなくては(個人的なミクロ視点だけでなくマクロから)と思わされます。
日本か、こういう本がたくさん出て、たくさん買われる国であってほしいなと思います。

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2023年07月23日

Posted by ブクログ

日本というブランドを信じていたのですが、海外から見れば既に後進的な国である、というがハッキリ分かりました。
もらえる年金がいくらか、も大事ですが広い視野で制度や問題全体を見ないといけないと思いました。

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2023年03月03日

Posted by ブクログ

前作が印象的だったので読んでみた。社会保障の目的が富裕層から貧困層への所得移転である救貧でなく、社会を安定させる中間層の貧困化を防ぐことというのは目からウロコだった。

最近、良く話題になる再配分などを深く考えるヒントになると思う。

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2022年01月16日

Posted by ブクログ

前半は前著の焼き直し?のような印象もあったが、後半の経済の関係の分析、世界からみた日本の至らなさのくだりは、まさにその通りと感じたし、自らも大いに反省するところがあった。もはや取り組むべき方向は決まっているようにも思わされるが、実現にはたくさんの合意、調整をしていかなければならない。

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2022年01月10日

Posted by ブクログ

前著『教養としての社会保障』から、そこまで大きく内容がアップデートされている感じではない。同様のテーマを同じ人が少し違う視点で書いている、という意味では、続けて読むと勉強にはなる(繰り返しという意味で)が。

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2024年01月21日

Posted by ブクログ

前著に増して憂国の感じが強い。最初から世界の市場が一つになっていることに対応した人材かぁ。耳が痛い。

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2021年12月08日

Posted by ブクログ

社会保障の問題は経済や社会とも関わってくることを分かりやすく解説されています。民主主義を維持するためには中間層を支えて分断を防ぐ必要があるし、国民が作り出した付加価値を分配する手段としての社会保障が重要…と理解しました。

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2021年11月07日

Posted by ブクログ

前著『教養としての社会保障』は、厚労省官僚として「社会保障・税の一体改革」をリードした著者が、「社会保障は経済成長のために不可欠」であるということを、
・経済成長のためにはイノベーションが必要
・しかし、イノベーションはむしろ失敗の方が多いのが現実
・そこで、社会保障はセーフティネットとして、失敗しても再チャレンジできる環境を整備することで、イノベーションのようなチャレンジを促進し、経済成長に貢献する
という論旨で主張した名著であり、個人的にも社会保障の意味合いを再考するきっかけとなった一冊であった。

厚労省を2017年に退官した著者による本作は、その主張をさらに推し進めている。具体的には、社会保障による低所得層への所得移転は消費需要の活性化をもたらし、経済成長の起爆剤となるというのが、本書での主張である。

また、本書では具体的な所得移転を考えたときに、企業、特に赤字によって所得税の支払いを猶予されている多くの中小企業の存在を問題視しており(このあたりは当然、デイヴィッド・アトキンソンの強い影響下にある)、全てに賛同するわけではないが、大企業・中小企業問わず、企業の社会的責任として投資や分配を今以上に義務付けべきである点には強く同意する。

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2021年05月22日

Posted by ブクログ

社会保障の役割は安定的な中間層の形成のための防貧にある。安定的な中間層が民主主義を支える。競走は良い。格差は課題。

さすがという感じ。勉強せねばと、思った。日々の業務に時間とエネルギーを取られすぎて、何も勉強できてない。経済と英語。社会保障。今年の目標、学ぶ。

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2021年02月28日

Posted by ブクログ

香取照幸氏の著書『民主主義のための社会保障』を拝読し、経済成長、財政規律、そして社会保障の持続可能性が密接に結びついていることを改めて認識しました。
まず、経済成長なくして社会保障の充実が困難であるという点は明らかです。経済が停滞すれば、税収は伸び悩み、社会保障を支える原資が不足します。結果として、給付の削減や負担の増加を招き、国民生活の不安定化につながりかねません。
一方で、財政規律の追求だけでは、必ずしも経済成長に結びつくとは限らないという指摘も重要です。単なる歳出削減や増税といった緊縮財政は、かえって消費や投資を冷え込ませ、デフレを深刻化させるリスクをはらんでいます。経済成長を伴わない財政再建は、国民の生活を苦しめるだけでなく、長期的な財政悪化を招く可能性すらあります。
社会保障は「富の削減」ではなく「資本の移転」
社会保障制度は、しばしば「富の削減」や「負担」として捉えられがちですが、香取氏が指摘するように、これはむしろ**「資本の移転」と理解すべきです。社会保障は、困窮する人々を支えるだけでなく、教育や医療、介護を通じて人材という社会の資本を再生産し、中間層を厚くする役割**を担っています。これにより、人々の生活基盤が安定し、安心して働き、消費する意欲が高まります。結果として、労働参加を促進し、経済全体の活性化に貢献する側面があるのです。
安定的な社会保障と経済成長の両立こそが鍵
現代社会が問われているのは、まさに社会保障をいかに安定的に維持しつつ、経済成長を達成するかという、この二律背反に見える課題の両立です。単なる財政規律の強化や、社会保障費の抑制に終始するのではなく、社会保障を「未来への投資」と捉え、それが経済成長の原動力となるような政策設計が求められます。
具体的には、少子高齢化が進む中で、いかにして生産年齢人口を維持・増加させるか、そして高齢者や障がい者を含む多様な人々が社会で活躍できる環境を整えるかが重要です。質の高い医療や介護、教育を提供することで、国民一人ひとりの能力を最大限に引き出し、持続可能な経済成長を実現する。この循環を生み出すことこそが、民主主義社会における私たちの最大の課題であると言えるでしょう。

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2025年07月30日

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