Posted by ブクログ
2021年05月22日
前著『教養としての社会保障』は、厚労省官僚として「社会保障・税の一体改革」をリードした著者が、「社会保障は経済成長のために不可欠」であるということを、
・経済成長のためにはイノベーションが必要
・しかし、イノベーションはむしろ失敗の方が多いのが現実
・そこで、社会保障はセーフティネットとして、失敗し...続きを読むても再チャレンジできる環境を整備することで、イノベーションのようなチャレンジを促進し、経済成長に貢献する
という論旨で主張した名著であり、個人的にも社会保障の意味合いを再考するきっかけとなった一冊であった。
厚労省を2017年に退官した著者による本作は、その主張をさらに推し進めている。具体的には、社会保障による低所得層への所得移転は消費需要の活性化をもたらし、経済成長の起爆剤となるというのが、本書での主張である。
また、本書では具体的な所得移転を考えたときに、企業、特に赤字によって所得税の支払いを猶予されている多くの中小企業の存在を問題視しており(このあたりは当然、デイヴィッド・アトキンソンの強い影響下にある)、全てに賛同するわけではないが、大企業・中小企業問わず、企業の社会的責任として投資や分配を今以上に義務付けべきである点には強く同意する。