【感想・ネタバレ】密やかな結晶 新装版のレビュー

あらすじ

その島では多くのものが徐々に消滅していき、一緒に人々の心も衰弱していった。
鳥、香水、ラムネ、左足。記憶狩りによって、静かに消滅が進んでいく島で、わたしは小説家として言葉を紡いでいた。少しずつ空洞が増え、心が薄くなっていくことを意識しながらも、消滅を阻止する方法もなく、新しい日常に慣れていく日々。しかしある日、「小説」までもが消滅してしまった。
有機物であることの人間の哀しみを澄んだまなざしで見つめ、空無への願望を、美しく危険な情況の中で描く傑作長編。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

人々はそれぞれに、人生で出会った記憶の結晶を保存しておくための心の洞窟がある。あたたかな結晶もあれば、意図せずとも洞窟の壁に刻み込まれてしまったものまで。
そこは誰かに見せるためではなく、誰かが足を踏み入れることを許すべき場所もなく、ただ自分がいつでもその結晶に触れることができる、非常に密やかで尊い空間。 


この小説に出会えた素晴らしい体験を、洞窟にて大切に保管しておこうと思う。

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2026年07月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

淡々と進んでいく物語の中にきらきらと光るものが散りばめられていた
中盤あたりになってようやく、秘密警察がナチスや粛清にあたるのだと気付いた
どうしても消失していく感覚がわからなかったけど、R氏や主人公の母がどう感じていたのかを想像できて面白かった

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2026年06月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

島からさまざまな物が消滅していく。物だけでなく記憶までもが。

消滅の度にパニックが起こるのかと読み進めたら、島の人たちにとっては当たり前のことだからか恐ろしいほど簡単に受容して自ら物を消そうと行動を起こしていて戸惑った。

きっとR氏も、消滅しない側の人間として同じ思いを抱いていたんじゃないかなって思う。

主人公とおじいさんのシーンはほっこりする場面も多く、心があたたまった。
なんとなくおじいさんも消滅しない側の人間で、でも完璧に消滅する側を演じることで主人公に寄り添っていたのではないかと感じた。

主人公が書いた小説では声が一番に失われたけど、島では一番最後まで声は消滅せずに残っていたんだな。

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2026年04月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

文章が美しい
主人公が、書いている小説の男と同じ立場になってしまっていってるのでは…と思えて怖かった 
R氏は、妻や子供のことは気にならなかったのだろうか。。

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2026年03月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

左足が失くなるところはゾッとした〜。

読んでて自然と地下室などのイメージが頭に浮かんできて、本当に物語の世界に入り込んでいた。そのくらい面白かった!

読み終わった後、なんかどっしりず〜んとした重みみたいなものが残り、すっきりする内容ではないけど大切なことに気づかせてくれる本です。

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2026年08月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

密かな結晶を読んで

まず結論から言うと正直私にはハマらなかった。なのでなぜハマらなかったのかを考察していきたいと思う。
これは私の悪い癖なのだが、ミステリーを読むことが多いので’伏線のようなもの’を探してしまうきらいがある。
特に伏線レーダーに引っかかった点は、左足が消滅しても普通に歩ける秘密警察(→秘密警察は消滅の影響を受けない側の人間という伏線では?)、遺伝子で記憶を失わない人間を判断できるという内容(→みんなで記憶を失わない方向に行くのか?母が記憶保持者だった主人公はなんらかして記憶を取り戻すのか?)、なぜR氏はR氏という呼び名なのか(名前消失したの?)など、、、

何が評価されているのかとレビューを読んだが、消失という概念を受け入れ、抵抗せずに諦めている主人公たちの恐ろしさを社会風刺として描いている点のようだった。
私は全くそうは思えなかった。
もし、誰かの命令で明日から何かしらの概念がなくなり、無理やり記憶から捨てろと言われているならこのレビューは理解できる。
でも今回の世界では自然現象的に消失が起きる。
記憶がなくならない側が何らかの抵抗をして記憶を保持し続けているならこのレビューの意味もわかるが、記憶なくならない特性は生まれ持ってのものという設定だった。
本当に抵抗すべきは記憶がなくなる側の人間ではなく、記憶を保持してる側の人間なのでは?
実は記憶を無くしてる側は何も失っていない。失ったことさえ思い出せないのだから。
記憶を保持してる側の人間だけ、同じ記憶を持つ人間を失い続けている。

この小説を読んで、私ならR氏を主人公にするなと思った。
R氏を主人公にするだけで、読者は簡単に感情移入できるだろう。なぜなら読者の性質はこの世界で言う記憶を保持する側だから。
逆に主人公を主人公にしてしまったばっかりになぜ抵抗しないのかというイライラさえ生まれる可能性がある。違う、主人公および小説の中の多数派は抵抗という概念がそもそもない側の人間なのだ。何も考えていないのではなくそもそも考える余白がない。抵抗する余白がない。

R氏の少数派での立場、記憶を保持する仲間が消えていく怖さ、抵抗できない権力、妻子がいるのにも関わらず自分に好意を向けてくる人間の家に住みつくあざとさ、記憶を無くしていく人々と記憶がなくならない自分への対比、そんな絶望と人間としての生々しさをR氏を主人公にすればもっと出せると思うのに。
主人公が主人公なせいで、日々なくなっていく記憶に対して諦めることしかできず、好きな男が記憶保持者だからプレッシャーに感じて無理矢理思い出そうとしてるくらいしか描写できてないのは勿体無い。

最後のオチとして、実は秘密警察は記憶保持者で、多数派がパニックに陥らないように記憶狩りをしていた。
すでに遺伝子的な観点から記憶がなくならない方法は見つかっているが、自分たちの過去に行った行為を正当化するために引っ込みがつかなくなってしまっていた。
最後にR氏が隠し部屋を出てそのことに気づき、R氏が抵抗していれば大して好きでもない主人公の家に閉じ込められることもなく、自分の子どもの誕生を見届けることができ、最愛の妻と子どもを救えたかもしれない
というエンドであれば、この本で評価されている点に初めて納得ができると思った。
外の世界を知らずに生きてきた人間は、内側の世界の常識しか語れないことに気づけない。外に出なよと言われても外という概念がないのだから出ていく場所がない。
外も内もわかっている人間が連れ出すしか方法はない。
そのことにもっとフォーカスしてくれればこの小説を好きになれていたと思う。

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2026年02月01日

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