あらすじ
その島では多くのものが徐々に消滅していき、一緒に人々の心も衰弱していった。
鳥、香水、ラムネ、左足。記憶狩りによって、静かに消滅が進んでいく島で、わたしは小説家として言葉を紡いでいた。少しずつ空洞が増え、心が薄くなっていくことを意識しながらも、消滅を阻止する方法もなく、新しい日常に慣れていく日々。しかしある日、「小説」までもが消滅してしまった。
有機物であることの人間の哀しみを澄んだまなざしで見つめ、空無への願望を、美しく危険な情況の中で描く傑作長編。
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Posted by ブクログ
人々はそれぞれに、人生で出会った記憶の結晶を保存しておくための心の洞窟がある。あたたかな結晶もあれば、意図せずとも洞窟の壁に刻み込まれてしまったものまで。
そこは誰かに見せるためではなく、誰かが足を踏み入れることを許すべき場所もなく、ただ自分がいつでもその結晶に触れることができる、非常に密やかで尊い空間。
この小説に出会えた素晴らしい体験を、洞窟にて大切に保管しておこうと思う。
Posted by ブクログ
人々がひとつずつ記憶を失っていく架空の島の物語。あえて時代や土地、人種をぼかして、どんな人の記憶のはしにも引っかかる部分があるように描いているような気がする。恐らくその描き方によって、読む人に様々な受け取り方をゆるし、それぞれ違ったことを想起させる意図があると思うが、解説でもあったようにわたしもナチスによるホロコーストを思い浮かべた。無慈悲な為政者によって、当たり前の日常から奪われていき、そして自分自身の肉体、命、人としての尊厳を奪われていく。おじいさんは為政者により無惨にすべてを奪われる前に亡くなったが、それに対する「わたし」の思いは、つまりはそういうことだろう…R氏は、運良くホロコーストから生き延びた側のひとり。彼らもまた大切な存在を次々奪われていき、奪われた痛み、残された痛みを抱えながら、為政者が去った世界で生きていかなければならない。
Posted by ブクログ
淡々と進んでいく物語の中にきらきらと光るものが散りばめられていた
中盤あたりになってようやく、秘密警察がナチスや粛清にあたるのだと気付いた
どうしても消失していく感覚がわからなかったけど、R氏や主人公の母がどう感じていたのかを想像できて面白かった
Posted by ブクログ
島からさまざまな物が消滅していく。物だけでなく記憶までもが。
消滅の度にパニックが起こるのかと読み進めたら、島の人たちにとっては当たり前のことだからか恐ろしいほど簡単に受容して自ら物を消そうと行動を起こしていて戸惑った。
きっとR氏も、消滅しない側の人間として同じ思いを抱いていたんじゃないかなって思う。
主人公とおじいさんのシーンはほっこりする場面も多く、心があたたまった。
なんとなくおじいさんも消滅しない側の人間で、でも完璧に消滅する側を演じることで主人公に寄り添っていたのではないかと感じた。
主人公が書いた小説では声が一番に失われたけど、島では一番最後まで声は消滅せずに残っていたんだな。
Posted by ブクログ
文章が美しい
主人公が、書いている小説の男と同じ立場になってしまっていってるのでは…と思えて怖かった
R氏は、妻や子供のことは気にならなかったのだろうか。。
Posted by ブクログ
左足が失くなるところはゾッとした〜。
読んでて自然と地下室などのイメージが頭に浮かんできて、本当に物語の世界に入り込んでいた。そのくらい面白かった!
読み終わった後、なんかどっしりず〜んとした重みみたいなものが残り、すっきりする内容ではないけど大切なことに気づかせてくれる本です。