あらすじ
死んだらすべて終わり
なのになぜ生きてるんですか?
余命数ヶ月の親友が自殺した朝にはじまる
心が痛くなる祈りと救済のミステリー
☆☆☆
「死んだらどうなるのかな、人って」親友の殉にそう聞かれた。
俺は何も言えなかった。
だって彼は、余命あと数ヶ月で死ぬ。
翌日、殉は子供を助けようと溺死した。
謎の少女・灯は、これはトリックを用いた自殺だと告げ、俺に捜査を持ちかける。
今なら分かる。灯との関係は恋じゃなかった。きっともっと切実だった。
生きるために理由が必要な人に贈る、優しく厳しいミステリー
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
死んだらどうなるに向き合う若者たちの姿に共感しました。自分も死んであの世がなかったらという恐怖にたまに囚われるタイプの人間なのでこの手の題材はとても気になるのですが、本作は死んで無になることへの怖れに震える人の姿とそれでも天国や霊魂を信じたい若人たちのもがく姿が印象的でした。
思春期特有の悩みと一蹴してしまえる死についての苦悩。あの世なんてないと撚たことを言うのは簡単でもいざ死が間近に迫ったらを考えると天国を願ってしまう。本作では天国に至ることのできた人とそれを見ながら今を生きるしかない人の関係がとても良かったです。たぶん、自分の神のような友人が死んだら主人公のように自分のために悩むことになると思うし、類似したことで自分もそうであったのでそこは共感と共に救われた気持ちになりました。
所々でてくる漫画やゲームの話題に親近感が湧いたのでそこも良かったです。HUNTER×HUNTERの最後の軍議のシーンと本作のイメージはとてもわかりやすかったです。個人的にとても好きな作品でした。自分もいずれ死者になるので、それまで天国を求めていきたい。
Posted by ブクログ
「死」とは何かを考えさせられる作品。
自分の世界の中心とまで思っていた親友の余命宣告。
受け入れられない中の親友突然の死を目の当たりにする。
悪天候の中橋から落ちてしまったのだ。
ただこの死には不可解なことがあり、主人公の鳴海は謎の少女奥城と共に調べ始める。
人は死んだらどうなるのか?
これが物語の最大の謎であり鍵となる。
美しいながらもどこか不気味で魅了される雰囲気で、緻密に描かれる展開。
見事に騙され最後は感嘆する。
最後の最後まで綺麗事ではなく「死」に対して切実で敬意が感じられた。
Posted by ブクログ
「死んだらどうなるのかな、人って」
親友にそう問われた俺は、何も言えなかった。彼の余命はあと数か月だったから。
翌朝、彼は子供を助けようと川に飛び込んで溺死した。
その川であった謎の少女は、これは事故ではなくトリックを使った自殺だと告げ、俺に捜査を持ち掛ける。
死んだらすべてが終わりなのに、なぜ生きているのか。答えのない問いを追及する絶望と祈りと救済の小説です。
親友の死、それに関連する連続猟奇殺人事件の真相を探るミステリと言えばミステリなのですが、本題はそこではなく、どちらかと言えば「人は死んだらどうなるのか」「死とは一体何なのか」を突き詰めた一冊。
綺麗事だけではない、死への恐怖や大切な人を失った後の絶望、死後の世界の有無などを、色々な登場人物の姿を通して描いています。
主人公にとっては、親友の存在は神様のようなもので、彼のいる普段通りの、学生時代のモラトリアムを謳歌していた過去が=天国のようなものだった。
大切な誰かのそばにいたい、私の思う「天国」にはこの人がいてほしい。厭世的で無力感を抱えた、若者世代の文学のような雰囲気ですが、全世代に共通するのではと思う「生」に対するメッセージを感じました。
Posted by ブクログ
「世界はホスピスみたいなものだと思ってる」
最後まで、まんまとミスリードされて読んでしまった。でもこの作品の本質はミステリーではないから素直に誘導されてよかったんだろうと思う。
結末はバタバタとした印象だけど、思わず泣いてしまった。救いがあるのかないのか…途中までは胸くそだったけど、でも救われたような気がするからきっとこれでいいんでしょう。現実よりは少し救いがあるお話。
ガラムスーリヤ、一度吸ってみたい、そして咽せるところまでがお約束。
Posted by ブクログ
「人が死んだらどうなるのか」余命数か月の神にも等しい親友・殉がが問う。何も言えなかった俺に再び返事をするチャンスもくれずに彼は翌日子供を助けるために溺死した…。殉の溺死が自殺だという少女とともに真相を知るべく調べ始めた彼らの前に現れたのは驚くことに連続猟奇殺人。ミステリを読んでいるとわかっていても死後の話が一気に血生臭くなり、これがどう絡んでくるのか、犯人はだれで、現象はなんなのか、一気に読み進んだ。ラストの展開は好みが分かれるかもしれないが、作者が死というものに本気で向き合ったのが伝わってきてとても良かった。