あらすじ
「死んでる? 誰が?」「みんなです」とある女子中学校で二年A組の生徒全員が殺された。教頭のクサカベは警察より先に犯人を見つけ出そうとするが……。(「少女教室」) ミロが夏休みを過ごすことになったウラ地区では、年に一度、空から少女が降ってくるという……。(「少女が町に降ってくる」) グロテスクなのにロジカル。本格ミステリ界の鬼才が贈る「少女の大量死」全8編!
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Posted by ブクログ
倫理観を揺さぶる良書。
きれいごとばかり見ても、自分も他人も一皮剥けば血や内臓、糞尿が詰まっているし、野蛮な原初的欲求を持っている。
人はなぜミステリーやサスペンスを読むのかというと、日常の中の非日常を味わいたいからではないか。ファンタジーやSFとは違う日常の中の非日常。
いろんなアプローチがあるが、こんな振り切った非日常を見せてくれる本はすばらしい。
少女ビデオは不条理と生と性の物語で、命も精神も素粒子が集まったただの物質という価値観と湧き上がる母性や父性の両極に揺れる心情が痛くて切ない。
Posted by ブクログ
少女が大量に殺される5作品、プラス文庫特別収録の3作品。
『少女教室』と『少女ミキサー』が特に面白かった。
少女教室では、罪を隠すために更に罪の重い大量殺人を行うという無茶っぷりだったが、破滅に向かうその無謀さの描写に面白みを感じた。それが自分の意思というよりは生徒に暗に唆されていたこと、ラストでも元校長に利用されて犯罪のループに陥っていることから、犯罪者をいい気分にさせておかないところが小気味よい。
少女ミキサーでは、絶対に生き残るというしぶとさが明暗を分けていて力強いラストだった。
ほかにも残酷に殺されていくけれど、なんとなく登場人物たちがあっけらかんとしているために「そういうものか」と思わされていく。推理を楽しむための特殊な設定というおもむき。
『少女が町に降ってくる』で示された会津サトコという存在が、この5作品に不思議な繋がりを生み出していて、確認のために思わず要所を読み返してしまった。左半身に赤いあざのあるサトコたちは怪異なのか?それぞれの短編内で亡くなっているため同一人物ではないはずだから、生まれ変わりか何かなのかもしれない。
ひどい怪我を負っているメメメの少女たちがこの先どうなるのか、今後降ってくる少女たちのことも気になるラストだった。