あらすじ
治験のアルバイトに参加したミロク(26)が病院で目を覚ますと、地上から人の姿が消えていた――。コロナ質量放出が地球規模の大停電を引き起こし、ライフライン停止、原発危機、新型ウイルスによる感染症の蔓延が同時発生。あっというまに近代文明は失われ、人工知能が新世界の構築を推進している。人類はこのまま滅びゆくしかないのか? 前代未聞の大淘汰に、一人のゲーマーが立ち向かう。宮内悠介氏との刊行記念対談も収録。(解説・小島秀夫、どぶろっく 江口直人、ゴールデンボンバー 歌広場淳、吉川浩満)
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Posted by ブクログ
2017年の本。完全に偶然なんだけど、「コロナ(この本では太陽フレアのことだけど)」「疫病」「隔離」「ワクチン」という単語が、コロナ前に書かれた本の中で出てくる珍しい本じゃないだろうか。本人は原発、震災文学と書いてるけど、今は違う感じにしか受け取れない。
珍しくそれなりにSF。エオマイア。宮内さんと対談しているけどポストモダンとか幼年期の終わりをオマージュとかそんな難しく評論されるものなんだろうか。少なくとも一冊は他に島田雅彦を読んで雰囲気を掴んだ人でないと楽しめない。達観したおじさんくさいミロク(26)、教訓や伏線があるようなないような奇妙な状況、島田雅彦節が炸裂しててよく分からない適当な結末もある程度予想はついてたけど、スタイリッシュじゃなくて女性に幻想を持ってるという印象を持つと思う。それでも、コロナ前の本だよね?ってドキッとするフレーズがたまに出てくる。
「疫病は貧しい者や幼い者から順番に命を奪いながら、人々を感染者と非感染者に分け、家族をバラバラにし、住み慣れた場所を追い立て、一度、孤立無縁状態にしたのち、小集団の形成に向かわせる。政府などあてにできない現状、疫病に対抗するには個々の知恵と技術を結集するしかないが、菊千代を集落に迎え入れたことで確実に知恵を上積みすることができるだろう。」