あらすじ
世界の軍事戦略のデファクトスタンダードになっているアメリカ軍の戦略大学校。その戦略論コースの普遍の定番となっているのが、クラウゼヴィッツ『戦争論』と『孫子』です。軍事論、国際関係論、戦略論を語る上でのグローバルな常識になっている『戦争論』ですが、本書を購入した日本人読者の何割が通読できているでしょうか。
本書は、読まれざる名著の代表と言っても過言ではないクラウゼヴィッツ『戦争論』の縮訳版(分量にして四分の一ほどで、未だ半分もないので「縮訳」としました)。本書の言う「縮訳」は、「超訳」などという、翻訳とは別ものではなく、ドイツ語原文から省略した部分が相対的に多いというものです。
訳者はドイツ語翻訳能力は高く評価され、下記に列挙した既刊訳と比較するとわかりやすさは格段で、難解きわまりない『戦争論』が本書の登場によって理解が格段に進みます。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
強い表現もあるが、徹底した論が広げられており、非常に示唆深く考えさせられる良著。
memo
・人間相互の決闘は敵対感情と敵対的意図 必ずしも感情は伴わない
しかし、感情に端を発さなくとも結局多かれ少なかれ感情に結びついていく
・戦争とは相手に自らの意思を強要するための実力行使
・軍事行動の目標は敵の無力化。敵の武装解除、撃破
・敵の抵抗力は投入資源と意思力の強弱
・両極性の原理 敵と味方が一つの同じ対象について、相互プラスとマイナスが量的に対応し差し引きゼロとなるような状態で初めて妥当する
購入して正解。
これまで、関連書籍2種類を読みましたが、いずれも読了はしたものの、内容を理解できたとはとても思えませんでした。
しかし、本書は、少なくとも「自分としては理解できたように感じる」ことができました。
そうした意味で、(研究者の方は別として)一般向けの良書だと思います。
また、長らく色褪せず各国で教科書的に読まれるという意味で、やはり名著と呼ばれるにふさわしい内容だと思います。
Posted by ブクログ
19世紀に刊行されて以来、不朽の名著として読み継がれてきたクラウゼヴィッツの『戦争論』。難解で知られる、この大部の著作のエッセンスを、読みやすい新訳で伝える書籍。
戦争とは、「相手に自らの意志を強要するための、実力の行使」である。
敵に自らの意志を強要するには、敵が軍事行動を継続できないほど、不利な状況に追い込まねばならない。
戦争は、政治目的から始まるものであり、政治・政策が軍事行動に間断なく影響し続ける。つまり、戦争は、政治的交渉とは別の手段を用いて、政治的交渉を継続する行為といえる。
戦争は、次の3つの面からなる。これらは戦争の本質に深く根ざしており、その重要性はその時々に変化する。
①憎悪と敵意からなる、強制性(暴力性)国民
②計算可能性と偶然性からなる、賭けの要素高級司令官とその配下の軍隊
③政治の道具であるという、従属的性質政府
戦争が、敵を屈服させ、こちらの意図を受け入れさせる実力の行使だとするなら、敵の抵抗力「戦闘力、国土、敵の意志」を奪うことが唯一の目的となる。
戦争が、政治目的によって起こされるものである以上、政治目的の価値の大小により、払われるべき犠牲の大小が決まる。
戦力の消耗が政治的価値に釣り合わないほど大きくなると、政治目的が放棄され、講和が結ばれることとなる。
戦争の手段はただ1つ、戦いである。
そして戦いでは、敵の戦闘力の撃滅が、最も効果的な目的達成の手段である。
知性と情意に極めて優れ、大きな業績を上げられる人物は《天才:Genius》と呼べる。軍事的天才は、「勇気」「知力」「困難な状況での決断」など、種々の精神力が調和的に複合されている。