【感想・ネタバレ】火定のレビュー

あらすじ

――己のために行なったことはみな、己の命とともに消え失せる。(中略)わが身のためだけに用いれば、人の命ほど儚く、むなしいものはない。されどそれを他人のために用いれば、己の生には万金にも値する意味が生じよう。(本文より抜粋)時は天平――。藤原氏が設立した施薬院の仕事に、嫌気が差していた若き官人・蜂田名代だったが、高熱が続いた後、突如熱が下がる不思議な病が次々と発生。それこそが、都を阿鼻叫喚の事態へと陥らせる“疫神(天然痘)”の前兆であった。我が身を顧みず、治療に当たる医師たち。しかし混乱に乗じて、病に効くというお札を民に売りつける者も現われて……。第158回直木賞と第39回吉川英治文学新人賞にWノミネートされた、「天平のパンデミック」を舞台に人間の業を描き切った傑作長編。解説:安部龍太郎。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

天然痘の症状や、死後の人間の状態の描写が壮絶でした。想像が全然追いつかなかった。

生きる価値と死んだ意味を一点集中で突き付けてくる作品で、葛藤の中から生まれる心理に有無を言わせない力強さがありました。希望の光が見えてくるまで、ゆるみがなく、どこまでも苦しかったです。見えた希望が、この先に、またある困難を照らして終わりますが、それでも失われない希望を手に入れたところがよかったです。揺れ動く心模様が凄かったです。

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2021年04月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

藤原氏の大きな危機を招いた天平の天然痘の大流行を描いた作品である。
単行本から文庫化するのを待っていたのだ、まさか、コロナという新たな病のパンデミィック下で読むことになろうとは皮肉なものである。

舞台は二つ。一つは貧しい人々を受けいれ治療している施薬院で不満を抱えながら働く下級役人名代の行く道のり
もう一つはかつて侍医として帝に仕えていた医師である諸男の選ぶ道のり。

二人を囲む病は暴力や詐欺を生み出して、病以上に人々を苦しめる。

現代も奈良時代も変わらない人の浅ましさ。だか、それ以上の気高いものもある。

今、火定にある世界も同じように、大事なものを見失わないことを切に思う。

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2020年11月19日

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