あらすじ
男子高校生の夕作まことは、顔にある痣を祖母から教わった化粧で隠して生活している。それがばれることを恐れ、誰にもかかわらずに過ごすことを望んでいた。ある日、新聞配達のアルバイトの帰りに、公園でクラスメイトの女子・槙野がタバコを吸っているところを目撃する。不良でもない槙野が何故……? 互いに“秘密”を抱えた二人は徐々に距離を近づけていくが――。第9回ポプラ社小説新人賞特別賞を受賞した感動の青春小説。
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Posted by ブクログ
あらすじと装丁に惹かれて読んだ。
終盤の夜の体育館でのシーンは特に引き込まれた。2人の、互いを傷つけないように慎重に言葉を選ぶところ、人の弱いところを茶化さずに誠実に受け止めるところが本当に素敵だと思う。
槙野の、"人って、優しい人がそばにいると、優しくなれるんだよ"という言葉が印象に残った。その言葉どおり、夕作と槙野の周りにいるクラスメイトはみんな優しい。
それから、2人が秘密を打ち明ける場面が大体夜で、静かな場所だったのも印象的だった。新聞配達を終える頃の夜明けの公園、修学旅行の就寝時間後の川沿い、陽が落ちた後の病院の喫煙スペース、誰もいない体育館。夜の静けさには、仄暗い過去も痛みも澱も、全て溶かしてくれるような不思議な力を感じる。
心の脆い部分をそっと撫でて肯定してくれるような、あたたかい小説だった。
Posted by ブクログ
「どれだけ深く繋がっても、どうしようもなく分かち合えないものっていうのは、誰もが持っているものだよ。伝えられないことがあったとしても、私が私の友達を好きだと思う気持ちには、嘘はないわけだしね」
人の優しさに何度も胸がつまった作品。すごく、すごく良かった。突き刺す表現も心地良い表現も心に残るものが多くあった。
夕作と槙野、ふたりだからこそ分け合えた痛み。登場人物皆のその先が気になる。
Posted by ブクログ
すごく好きな話でした。
生まれつきの顔の痣のせいで、色んな所で傷ついて、人間関係にトラウマを感じるようになった主人公が、
優しい人たちに出会って、本来持ち合わせてる優しさであったり、新たな勇気や心を開いていく話でした。
この主人公も、ヒロインも、出会う友達も、誠実よね。
ものすごく言葉を大切にしている描写に、とても感情移入してしまって涙が止まらなかった。
気持ちや思いをできるだけ、意図が歪むことなく相手に届けたいけれど、それに見合う言葉がないもどかしさであったり、どういった態度なら伝わるかをこれだけ考えてる時点でこの子たちは優しいのよ…って思いました。
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ただ、
「優しい人がそばにいてくれれば、自分も優しくなれる。そうすれば、私の周りに優しい人が集まってくる」
この言葉は違うな…って感じて、(多分本編でもこれが正しいとは言ってはいないのだけれど)
自分が心を病んでしまった時に、優しくしてくれた人は大勢いるし、優しくしてくれようとした人はいたけれど、その人たちに申し訳ないくらい自分の心は荒んでいったし、惨めに感じて不幸になっていったりしたのをふと思い出したりしました
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優しい人のところに優しい人が集まってくるかは分からないけれど、居心地の良い人との関係を壊さないためにたくさん考えていれば、残る人たちは"自分にとって優しい人"なのでは、なんて当たり前かもしれないことを思いました。
隠し事をしててもいいし、その人を好きな気持ちに偽りはない みたいな考えだったり、
「自分のことを好きになれだとか、無責任なことは言わない。けど、自分じゃなきゃ出会えなかった人たちを好きになることは、できるよ」
っていう保健室の野原先生の言葉や考え方はすごく救われるものがありました。
自己肯定感ってそう、こういうことだよね〜と。
最後にこの作品を通して、感覚の描写や良さを感じる日常の物事への感覚が自分と同じ部分があって、それもこの作品が好きな理由の一つです。
悩み、傷ついて、疲弊して帰宅したら、誰かが台所で料理をしていてほっとする、そして作っている料理は肉じゃが…なんて涙が出ちゃいますもん!(本編では少し形は異なりますが)
あと、家族でいただくお味噌汁とお漬物とご飯の朝ごはんとか、素朴だけど最高でめちゃエモくて、めちゃ美味しいじゃない!!みたいなね笑笑
作者の方は、ムサビ出身のグラフィックデザイナーで、まだ26歳とのこと。。。末恐ろしい(笑)
今後ともお世話になりたいと思います!
Posted by ブクログ
主人公含めた5人の高校生がみんな優しい。優しい人の周りには優しい人がいるというのは、その通りだと思った。自分のことを好きと思えなくても、優しい人たちに出会えた自分のことは何だか否定できない気持ちに共感した。
保健の先生の人生の先輩としての達観した優しさには、私自身も救われた。
Posted by ブクログ
描写が繊細でとても美しかったです。特に情景描写。
それぞれの秘密がある夕作と槙野が関わっていくにつれて、夕作が豊かに優しく暖かくなっていき、最後に槙野が夕作に弱みと秘密を打ち明けて結ばれて良かったです。感動しました。
私も、自分のコンプレックスが嫌いで自信が持てず、人になかなか心を開くことができなかったのですが、とてもあったかい気持ちになり勇気が湧いてきました。
「どんなに辛いことや認めたくないことも、たった一人でも一緒に抱えてくれる人と出会えたら、もうそれでいいやって思えちゃうんだよね」この言葉がとても好きです。人が見たら引いてしまうような体の傷、わたしのコンプレックスを理解しようとしてくれている、精一杯の優しさとあったかさを与えてくれる彼氏が愛おしく思え、大切にしようと思いました。
とてもあったかい気持ちになりました。
Posted by ブクログ
青春時代には、ちょっとしたことでも思い悩むものだが、自分で直せる範囲であれば体型にしろ、勉強にしろ頑張れる。
だが、顔のあざとなるとどうだろうか。
男子でも人の目は気になる。
ここでは、あざを化粧で隠して息をひそめるようにしている男子高校生が、新聞配達中に公園でタバコを吸うクラスメートの女子と会うことから始まる。
お互いに心に抱えた傷を隠している。
とても切ない秘密。
胸に沁みた保健の先生のことば。
「自分のことを好きになれだとか無責任なことは言わない。けど、自分じゃなきゃ出会えなかった人たちを好きになることはできる」
いろんなことがあり、もやもやしたり諦めたり、投げやりになることがたくさんある世代。
少しでも気持ちをわかってくれる人がいれば、元気になれるのではと思った。