【感想・ネタバレ】新型コロナ 7つの謎 最新免疫学からわかった病原体の正体のレビュー

あらすじ

免疫学の第一人者が、最新の科学データで正体不明のウイルスの謎に迫る。
これぞ新型コロナ解説書の決定版!

山中伸弥氏推薦(京都大学iPS細胞研究所 所長)
「新型コロナウイルスを正しく知ることが、私たちにとって今最も重要なことです。最新の科学データを元に書かれた本書は、大いにその手助けをしてくれるでしょう」

新型コロナウイルスが中国で発生したのは、2019年12月。それからわずか半年の間に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は瞬く間に世界に伝播し、10月末には全世界の感染者数は4400万人を突破し、死者は120万に迫ろうとしている。このウイルスは過去にパンデミックを引き起こしたインフルエンザウイルスとは明らかに違う性質を持っており、得体の知れない様々な謎を秘めている。「あり触れた風邪ウイルスがなぜパンデミックを起こしたのか?」「幼児は、感染しても軽症が多いのに対して、高齢者が感染すると重症化しやすい。なぜかくも症状に差が出るのか?」「なぜ獲得免疫のない日本人の多くが感染を免れたのか?」「有効なワクチンは本当に開発できるのか?」など誰も知りたい新型ウイルスの7つの謎に、最新の科学的知見に精通した免疫学の第一人者が果敢に挑む。本格的流行期を前に必ず読んでおきたい「読むワクチン」。

日本を騒がす風説を一刀両断!
●「実は日本人の大半はコロナに感染。集団免疫はすで確立している」は本当か?
●「コロナはただの風邪。恐るるに足らず」は、危険で間違っている!
●徹底的なPCR検査でも、コロナウイルスの封じ込めができない理由とは
●インフルエンザにすぐ感染する子どもたちが、コロナに罹りにくいのはなぜ?
●BCG接種にコロナウイルス感染を防ぐ力があるは本当か?
●トランプ大統領を救った?人工的中和抗体は「ゲームチェンジャー」になるのか
●抗体には、症状を悪化させる悪玉抗体、何の役にもたたない役なし抗体もある

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Posted by ブクログ

ネタバレ

第1章 風邪ウイルスがなぜパンデミックを引き起こしたのか
感染症の広がりを示す用語:エンデミック、エピデミック、パンデミック。
歴史的パンデミック:天然痘、インフルエンザ、SARS等。
パンデミックの原因としては、グローバルの環境変化とウイルスの易変異性の二つが挙げられる。その意味でパンデミックは不可避である。
第2章 ウイルスはどのようにして感染・増殖していくのか
ウイルスの性質。単独では生きられず、宿主細胞に入って増殖する。SARS-CoVはACE2受容体経由で細胞内に侵入する。SARS-CoV侵入後には細胞内でIFNが作られにくいため、増殖されやすい。感染細胞はアポトーシスを起こすことでウイルス排除を行っている。ウイルスの侵入〜増殖の経路ごとに抗ウイルス剤の作用点がある。ウイルス検査には抗原検査、抗体検査、PCR検査があり、PCR検査が決定的である。
第3章 免疫vs.ウイルス なぜかくも症状に個人差があるのか
新型コロナウイルスの症状や流行の様子は風邪やインフルエンザとは異なり、多岐にわたる。免疫のメカニズムには自然免疫と獲得免疫がある。自然免疫は特異性が低いが立ちあがりが早く、獲得免疫は免疫記憶を持ち特異性が高いが応答に時間がかかる。自然免疫が作動するとサイトカインが産生され、獲得免疫が起動する。その場合通常は炎症反応が生じるが、COVID-19の場合サイトカイン産生が遅れる傾向があり、そのため感染しても無症状期間が長く、流行し易い。免疫反応の強さには個人差があるが、自然免疫の強さ、個別HLAの違いなどが一つの要因である。感染しても抗体が産生されるとは限らない。
第4章 なぜ獲得免疫のない日本人が感染を免れたのか
日本の感染者数が少ない理由はいくつか仮説があるが、いずれも決定的ではない。各種ワクチンなどにより訓練免疫が強まっているという説もある。BCGの特定株の接種が有利に働く可能性もある。類似ウイルスに既に感染していることで交叉免疫を得ている可能性もある。生活習慣などの影響は考えにくい。
第5章 集団免疫でパンデミックを収束させることはできるのか
集団免疫を得ることでCOVID-19感染を収束させることは難しい。免疫に抗体以外の要素が関わっていること、人口は免疫学的にムラがあること、免疫記憶が永続的とは限らないこと等を考えると、集団免疫の形成に大きな期待はできない。
第6章 免疫の暴走はなぜ起きるのか
COVID-19感染者が重症化する原因としてサイトカインストームによる広範な組織障害が挙げられる。ウイルス感染後にインターフェロン産生が抑制されるが、ある時点で急激にサイトカイン産生がリバウンドして、炎症反応が劇症化する(経路A)。さらに血管内皮細胞に感染して血栓を生じる(経路B)、ACE2を経由した炎症の劇症化(経路C)などのメカニズムが考えられる。悪化要因は高齢、慢性炎症疾患など複数である。サイトカインストームを止めるためにはアクテムラなど抗体製剤が有効である。
第7章 有効なワクチンを短期間に開発できるのか
ワクチン接種により単に抗体が産生されるだけでは不十分であり、善玉抗体が主に産生されなければならない。開発には第三相試験が必要であり本来は十数年以上の時間を要する。副反応も十分なモニタリングが必要である。反応効果の持続性も予測が難しい。開発スピード面からDNAワクチンの実用化が有望視されているが、許認可には拙速にならぬよう十分な目配りが必要である。また人工抗体の投与で重症化を防ぐ方法も開発されており、今後有望である。

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2022年01月24日

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