あらすじ
風の吹くまま和史に連れられ、なぜか奈良で鹿にえさをやっているあたし(「ラジオの夏」)。こたつを囲みおだをあげ、お正月が終わってからお正月ごっこをしているヒマな秋菜と恒美とバンちゃん(「ざらざら」)。恋はそんな場所にもお構いなしに現れて、それぞれに軽く無茶をさせたりして、やがて消えていく。おかしくも愛おしい恋する時間の豊かさを、柔らかに綴る23の物語のきらめき。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
一編、10ページ程の短編集。
地球に住まう誰かのお話です。
「夏の奈良、という言葉にちょっと嬉しくなって
あたしも旅支度を始めた。」
「エアコンの強くきいた店内に入ると、汗が急に引
いた。汗は引いたが、反対に外の暑さがどっとま
とめてやってくる感じだ。」
※『ラジオの夏(p9〜p17)』
あれ。私も恋人も一緒に夏の奈良に行って「鹿くせぇ」と言ったことある気がするぞ。
「黒田課長の性器を思い出そうとしたが、どうして
もうまくゆかなかった。忘れたのではなく、望遠
鏡を逆さから覗くような感じで、黒田課長のこと
がものすごく遠く非現実的にしか思えないの
だ。」
※『びんちょうまぐろ(p18〜p25)
黒田課長の性器は思い出せないけど、なんか愛しいような感じのものじゃなかったろうか。
「深刻ぶるのってヘボいよ、アン子。」
※『山羊のいる草原(p77〜p85)
へぇ。すみません。
いつの間にか私のお話になっています。
日常の場面でも、非日常の場面でも、そこに登場する人の感情の流れや起伏に無理がなく、身に覚えがあるからかもしれません。
嬉しいことに、今紹介した文章は全て本の前半に載っているものです。
ガッタンゴットン、まだまだ私の話は続いていきます
Posted by ブクログ
雑誌『クウネル』に連載された23話の短編集。
改めて思う。私、このシリーズ好きだな、と。
どの話も可愛くてほのぼのしていてラストはちょっといい気分になれて、このままずっと読んでいたくなる。
『オルゴール』の主人公のつぶやき「やっぱり、恋をしたいな」に象徴されるように、様々な恋の話が繰り広げられる。
中でも『コーヒーメーカー』『山羊のいる草原』の修三ちゃんとアン子の二人のやり取りは大好き。前回読んだ『猫を拾いに』(シリーズ第3弾)で出てきたおかまの修三ちゃんは第1弾から出てたんだね。
恋人とうまくいかずうじうじ悩むアン子に向かってバッサリ言いきる修三ちゃん、私も叱って!
『春の絵』の小学4年のすすむくんの、冒頭のセリフ「女をすきになるなんて、思ってもみなかった」には参った。
「女子」じゃなく「女」。
すきな女に対し大人顔負けの男気を見せるすすむくん、とってもいい。
『月火水木金土日』の籠おばさんも良かった。
ラスト、できるだけ姿勢よく歩いて行こうとする、迷いぐせのなかなか治らなかった彼女を自分と重ね合わせて、とてもさっぱりしたいい気分になれた。
第2弾を読むのが楽しみになった。