あらすじ
渡邉晋は《切る》《留める》《解放》など独自の言語を用い、
ベガルタ仙台に「クレバーフットボール」を落とし込んだ。
実は選手を指導する際、いわゆる『ポジショナルプレー』というカタカナ言葉は一切使っていない。
にもかかわらず、結果的にあのペップ・グアルディオラの志向と同じような「スペースの支配」という攻撃的なマインドを杜の都に浸透させた。
フットボールのすべては「相手を困らせる立ち位置」を取ることから始まる――。
ゴールからの逆算、すなわち「良い立ち位置」を追い求め続けた監督時代の6年間を時系列で振り返りながら、
いまだ仙台サポーターから絶大な支持を得る「知将」の戦術指導ノウハウをあますところなく公開する。
はじめに
1章 ポジショナルプレー前夜
戦術がチームに一体感を持たせる
きっかけは逆転負けを喫した2015年の鹿島戦
ポジショナルプレーの種となるもの
[4-3-3]を試行錯誤した結果[3-4-3]へ
偶然性も含んだ欧州視察で3バック思考を整理
2章 渡邉式ポジショナルプレー~指導法~
「相手2人以上を困らせる」ポジショナルプレーとは?
《レーン》を真っ直ぐ走り2人の相手を困らせる
決定的だったアイデア「だったら線を引いてしまおう」
今から振り返ればあれは……
強烈な「個」と戦術をどう折り合わせるか
3章 渡邉式ポジショナルプレー~言葉の魔法~
自分たちだけの「共通語」を作る
パス1本で置き去りにするCB→WBの《切る》
WBの《留める》で味方に利益をもたらす
ボールを奪った瞬間の逆サイドへの《解放》
「5ゾーン」?選手に響かなかった言葉
継続は力なり。少しずつ変貌していった仙台
利き足へのこだわり
GKを組み込むための試行錯誤
ボランチは心臓。ともすれば1人で5人を困らせられることも
攻撃で圧倒する意志を持ち突き抜けた2017年
戦術の浸透とクラブ戦略
4章 ポジショナルプレー交戦~対戦の駆け引き~
望まない[5-4-1]やミラーゲーム
あくまでもスタート地点を見失わないように
ミラーゲーム対策の[3-1-4-2]の導入
教育者か勝負師か
流れをとるか適正をとるか
感じ始めた3バックの限界
5章 ポジショナルプレー交戦~理想と現実の狭間で~
カウンターへ傾倒していく過程
トレーニングは嘘をつかない
得られなかった攻撃の手応えと堅守速攻への回帰
理想と現実の狭間で
6章 ポジショナルプレー番外編~チームマネジメント論~
スタメンとベンチメンバーをどう選ぶか?
「想定内を増やす」アプローチ
監督とコーチの違いとは何か
アナリストやテクノロジーとの協調
2020年から学ぶマネジメント
『3+4対4』は最初に提示するトレーニング
『ポジショナル』が当たり前となる育成へ
対談 渡邉晋(サッカー指導者)×夏まゆみ(ダンスプロデューサー)
「スペースの機能美」
おわりに
論理的プレーを生み出すトレーニングメニュー集
3対2
4対3
ウオームアップ
フォーメーション~シュート
コンビネーション&クロスシュート
1+5対5+GK
6対5+1ターゲット
5対5+2GK
6対2(ウオーミングアップ)
6対3
3対3+2レシーバー
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
サッカーとはこれくらい深く考えてやるスポーツなんだと驚かされた。
多分半分も内容を理解できてないとは思う。
切る、剥がす、楔、潜る
というワードも名称と現象を理解しつつも人に説明するのは中々できない。
3-1-4-2の話が特に難しかった。
これはベガルタ仙台の話でこの時はスリーバックが基本だったようである。後半は守備的に4-4-2。
今のモンテディオ山形では4-3-3であるから違うことも多いだろう。
ポジショナルフットボールの肝は、
1人の選手が相手を2人困らせる立ち位置でプレーすること。それをわかりやすく視認化するために5レーンという概念を導入したこと。(ハーフスペース)
困らせる云々は手段であって、ポジショナルフットボールの目的は相手の背後を取ること。それを自分たちで能動的にかつ組織的に行うことで、数的優位をとれる。
これをチームで根付かせれば再現性をもって得点をとれるし、突出した個にや、たまに出るスーパープレイに頼ることもない。
ということだと思う。
渡邉監督のロジカルな考え方は非常に面白いし説得力があった。
Posted by ブクログ
ベガルタ仙台を指揮した6年間(弱)を振り返り、攻撃で主導権を握るため、良い位置をとる=ポジショナルプレーをどうチームに落とし込もうとしたか、指導者の視点からまとめた一冊。
印象に残ったのは3点、一つ目は立ち位置の重要性。
50cm、1mの違いでどれだけ相手を困らせ、チャンスにつながるのか。サッカーを見ていると、ボールを持っている選手、スプリントしている選手だけではない、選手のわずかな立ち位置の変化に気づくと、サッカーはもっと面白く観られると思いました。
二つ目は監督業の厳しさ。
目指すサッカーの実現のためどのようにトレーニングをするか試行錯誤を重ね、やっと作り上げたチームもあっという間に相手に研究・対策をされて新たな挑戦をしなければならない、という厳しい仕事ぶりがよく分かりました。
三つ目は、ナベさんのベガルタへの想い。
第5章、2019年の決断と、あとがきの感謝のことばに胸が打たれました。
ベガルタでは限界があったのも事実ですが、選手、スタッフ、コーチなど19年の経験が監督・渡邉晋を育んだのもまた事実と想いました。
<印象に残った言葉>
・結局口に何を言っても、実際にトレーニングとして何をやるかが一番大事。トレーニングでやったことしかゲームでは出せない。
・やっぱり”石原先生”でした。
・渡邉さん、もうエンタメ業界でも生きていけるというか、プロデューサーをしてみたらどうでしょう(笑)
ナベさんが次にどこのクラブに行くか興味深いですが、ぜひアナリスト、コーチなど彼のやりたいサッカーの実現を支えてくれる人材を揃えてくれるクラブを選んでほしい、と切に思いました。
夏さんのススメで、まさかのアイドルプロデューサーになったりして(笑)
Posted by ブクログ
ベガルタ仙台で監督を務めていた
渡邉(元)監督の考え方が詰まった本。
自分は、渡邉(元)監督がベガルタで
活躍されていたことも
「ポジショナルフットボール」という言葉があることも
何も知らずに読みましたが、
(サッカーをあまり知らない自分にとっても)
中々興味深い本でした。
「ポジショナルフットボール」という言葉から、
何となく良いポジションを取って
パスを繋いでいくイメージを持っていましたが、
良いポジションというものがより精緻に言語化されていて、
著者の言語化能力の高さに驚かされました。
そして、自分のサッカー戦術を相手に合わせて
絶えず進化・深化させていく大きな流れが
疑似体験できたのもとても面白かったです。
監督業やコーチ業の方にとっては
有益な疑似体験であるように感じました。
最後のダンスプロデューサーとの対談は、
個人的にはそこまで必要だったとは感じませんでしたが、
それでも著者の抽象的思考能力と
サッカーとダンスを繋げていく能力は、
興味深かったです。
この本に興味を持つ方はほんの一握りかとは思いますが、
特定の人たちにはとてもヒットする本だと思います。
Posted by ブクログ
本当に論理的に、そして情熱的な監督だと思った。
戦術だけでなくマネジメント論も大変興味深く、監督としての難しさが目に浮かぶ。
考えることが多すぎで頭がパンクしそうだなと思う。
そして、多くの知識を持った上でで決断しなければいけない職業だなとも思う。
Posted by ブクログ
渡邉晋監督がベガルタ仙台で6年間取り組んだ戦術を時系列で本人が解説した著作。具体的戦術を図にして具体t歴に表現するなど、ポジショナルプレーの実践に向けた具体的トレーニング方法がわかる実用書。
Posted by ブクログ
ポジショナルプレーとか5レーンとかはなんとなくわかってたけど知らなくても十分楽しめる内容。
よくある戦術書ではなく、渡邊晋自身のチームを率いる上での思想、試行錯誤が詳しく書かれていてとても面白かった。今は山口で監督やってるので試合をみてみたいと思った。
Posted by ブクログ
最近Jリーグの戦術でも一般的になったポジショナルフットボールについて、日本での第一人者がそのノウハウをまとめた本。
端的に言うと1人が相手の複数の選手を引き付けるポジションを取ることで、1人が相手の2人以上を迷わせるという戦術。自分のポジションから動きすぎないことが重要になるので、動き回るような選手はフィットしにくい。
かなり専門的な内容で面食らったが、充実した内容だった。
Posted by ブクログ
立ち位置で2人を困らせる。
考えながらやってみるとホントに難しい。
けどそうやって困らされたことは何度もある。
ポジショナルフットボールって最近よく聞くけど簡単に言うとそういうこと。立ち位置で困らせろ。
考えて走る。忘れない!
Posted by ブクログ
2014 年から 2019 年までベガルタ仙台で監督を務めていた渡邉晋氏(現レノファ山口監督)の著書。ベガルタ仙台を監督率いてクラブ初の天皇杯決勝まで導き、その後どうしても上手くいかなくなり退任するまでの戦術的アプローチが記されている。「相手を困らせる立ち位置」をとることを基本的な考え方としており、これはいわゆるポジショナルフットボールである。普段の練習でどのようにして「相手を困らせる立ち位置」をとることや主導権を握るための戦術をチームに落としこんだのか。実際に行っていた練習内容とその意図が具体的に何例も図示されており、プロの練習内容を知る機会はなかなかないので興味深かった。指導者が練習内容を考える際に非常に参考になるのではないか。