【感想・ネタバレ】ペルソナ 脳に潜む闇のレビュー

あらすじ

人間関係が苦手だった私は、その原因を探ろうと、いつしか「脳」に興味を持つようになった。

親との葛藤、少女時代の孤独、男社会の壁…人間の本質をやさしく見つめ続ける脳科学者が、激しくつづった思考の遍歴。初の自伝!

「脳は一貫していることの方がおかしいのだ。自然ではないから、わざわざ一貫させようとして、外野が口を出したり、内省的に自分を批判したりもするのである。一貫させるのは、端的に言えば、コミュニティから受けとることのできる恩恵を最大化するためという目的からにすぎない。

私たちは、複数の側面を内包しながら、これらを使い分けて生きている。私たちの世代はこれを自覚的にできる人が旧世代よりも増えただろうが、人間というのは世代を問わず、そういうふうにできている。仕様だといってもよいだろう。

わたしのペルソナ(他社に対峙するときに現れる自己の外的側面)は、わたしがそう演じている役である、といったら言い過ぎだと感じられるだろうか? あなたが、わたしだと思っているものは、わたしではない。一時的に、そういう側面を見て取ってもらっているだけのことである。

わたしは存在しない。これは悲しいことではない。透明な存在であることを嘆く必要はない。だからこそ、来るべき変化に対応することができるからだ。もう変化のときは来ている」(中野信子)

<主な内容>
はじめに わたしは存在しない
無駄を肯定するということ/脳は一貫している方がおかしい

1章 サイコマジック――2020
脳は毎夜、夢を見ながら再構成されている/愛している、が伝わらない/「毒親」とはどういう存在なのか/アカデミズムは時代遅れの男性原理の象徴

2章 脳と人間について思うこと――2010~2019
『ホンマでっか!?TV』の洗礼/攻撃されたときの身のかわし方/ブレることは脳の高次な機能/メンサのこと/結婚するメリット

3章 さなぎの日々――2000~2009
世の中を良くしよう、にある胡散臭さ/専門家のアドバイスは脳の活動を停止させる/脳が作り出す微笑みのペルソナ/日本は「科学技術後進国」

4章 終末思想の誘惑 ――1990~1999
東大女子は第三の性別?/ネガティブな思考には独特の中毒性がある/バイオアートの可能性/脳研究を志した理由

5章 砂時計――1975~1989
他社の間違い探しをする人に発疹が出る/なぜ点数を悪く取れるのだろう/通知表に「利己的」と書かれて

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mac

ネタバレ

言葉の使い方

・過去に起きた事実は変えられないが、事実の解釈を変えることはできる。
・コミュニケーションのひな形は、幼いころに形作られるとはいえ、
経験を重ねる中で意識すれば変えていけるものである。
・自分の満足度の方に重きを置こうと決めれば、かなりのことが楽に捌けるようになる。
・社会人として生きていくには、言語の運用スキルが極めて重要だ。役に立つのは、攻撃された時の身のかわし方。
・耳触りのいい言葉は、ほとんどの場合、不都合な真実とセットである。
短期間のうちに起こされる大きな変化の後には、弱者が犠牲になるものだ。
そしてまた、適応しすぎた者も、新しい環境では生き延びられない。
多様な可能性を捨てて、「選択と集中」戦略をとって環境に適応し、
利得を増やそうとして柔軟性を失った者は、ひとたび環境が変わると滅んでしまう。
かつて地上を我が物顔にのし歩いた恐竜のように。
・自己責任論を声高に説く人のほとんどが、恵まれた位置にあるエリートであり、強者である。
彼らの論理に従って生きれば、あたかも自らも強者側にまわったかのような、かりそめの酩酊感と快楽が得られる。
ただ、心酔している側は、ほとんどの場合、強者となることはなく、実際には搾取される側にいるものだ。
・前向きな姿勢を強要されることによって、心理的な回復が妨げられることはある。
落ち込んでいること自体が落伍者である証拠のように受け止められ、
苦しい時でも笑うことが出来ない者はダメな人間だ、楽観的になれない者は劣った人間だ、
というメッセージを与えてしまうからだ。
うつ病患者に対して「頑張れ」と言ってはならない理由はここにある。
うつ病患者は、頑張りたくても頑張れない状態に陥っているため、
不用意に励ますことは、過度に自責的になっている患者をさらに追い詰め、自殺を誘発させるからである。
・学ぶことに年齢は関係ない。いつでも思い立った時に始めればいい。勉強したいと思った時が適齢期だ。
・「わたし」というのは、モザイク状の多面体のようなもの。
光の当て方によって、人格は様々な色に変化し、見え方も変わっていく。
部分の組み合わせの妙で、意外な側面が見え隠れするとき、それとの出会いが新しい楽しみになる。

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2022年12月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

以下、面白い・興味深いと感じた点

・海の話、わたしたち人間の中に太古の海の水が残されている。
・毒親育ちの人間関係構築の術
・言葉のマジックを自在に使いこなすことで、自分の味方を増やすことができる。言語運用能力の重要性。
・さなぎの中身
・日本における高学歴ニートはなぜ大量に生み出されたのか。
うつは物事を深く考えることができ、抑うつ的反芻は知性を感じる良い面を持つ。


とりわけ面白いと思うのは、海水の話とさなぎの中身。
それ以外は疑問に思っていたことに対する答えと、自分に対する課題である。

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2024年01月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

新書なので専門的な内容かと思いきや、エッセイだった。
ただ、著者の知的レベルが半端ないので、一部専門的な内容も含まれている感じ。

ものすごく頭がいい人って、きっと見えている世界が違うのだろう。
さらに著者はHSPも抱えてるのだろうか?
敏感すぎて生きづらそうな一面が見られる。

親が東大卒同士、とかより、ごく普通の親のもとに、突然変異的に生まれる知能指数が高い人は生きづらそうだ。
それでも普通は、子供の出来が良ければ喜ぶのが親だと思うけど、良すぎると気持ち悪がられるのか……。

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2021年11月20日

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