【感想・ネタバレ】人新世の「資本論」のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年02月27日

【資本主義に奪われた潤沢な社会】
読みたかったが読めていなかった本。ついに読んで、非常に示唆に富み、しかしとても多くの知識・思考が詰まっている本だったのですぐにでも再読したいと思う。以下は完全なる私見です。

読み終わっての感想としては、あらためてマルクスという思想家の偉大さを知る。今現在も彼の知見...続きを読むから現代社会の解決策を見つけ出そうとする試みがなされているということで、人類的な課題に挑戦し続けた人なのだということ。そしてその研究・解釈を試みつつ、分かりやすく今の社会に照らし合わせて論じられている斎藤先生も尊敬する。

大学で習ったときにとても興味を持って、でも社会人になるとなかなか読み込んだりする機会を持っていなかった。資本主義が問題だと分かっていても、それ以外の解決策は今のところない、という一般的な意見にやはり流されてしまう。既存の経済システム(資本主義)内で解決しようとするか、あるいは新しいシステム(Alternative)を作るのか、という対立軸はあっても、現実的な新しいシステムを見出すのがとても難しいためだ性に落ち着く。脱成長は頭では理解でき合意できても、資本主義社会の一部として生きる中で資本と成長に依存せざるを得ない状態がこれまでもあった気がする。

これまでも、世界で広がる格差に対する不満が高まり、人々が抵抗運動を起こしてきた。私も(たまたま)参加した、Occupy運動は、一時期は世界で大きなうねりとなったように見えたけれど、おそらくあの時からさらに、私たちの経済レベルは分断されていると思う。
ピケティの「21世紀の資本論」を少し読んだら、まあ今の制度ではそういうことになる、富む人が富む仕組みが制度としてある、といっていたし、では国家が動いて制度改革する必要がある、ということも納得した。
私は政治を習ったこともあって、政府に責任があるという思考に良く陥るのだけれど、マルクスは政治より先に経済、生産手段が基盤としてあるということを思い出した。

マルクスは政治思想家でもあったけれど、経済学者でもあって、既存の経済の枠組みで経済を論じるのではなくて、あるべき経済について論じる、経済思想家なんだなーと思った。
あらためて、今の経済は資本主義経済て、その資本主義が本当に政治も私たちの思想の価値観も、全てを包摂してしまっているから、本来の生きる価値を見失ってしまったりする。

最近読んだサステナビリティ経営の本では、いろいろな社会・環境指標を経済価値に落とし込む取り組みが現在進んでいる、とのことだけれども、本当に社会は自ら資本主義に飲み込まれて行こうとしているのかもしれない。排出権取引する流れにはなっているけれど、人権保護まで取引することになるかもしれない。現在の流れてできることをしようとしても全く解決策にはならず、問題を助長することになるのは本当に避けたい。

そうやって自分のなかの矛盾が明確に見え、もどかしい。

貧困をなくす、といって、国連の活動で行っていることは、国の経済成長を促す計算ではあると思う。まず貧困の物差しが経済所得であり、しかし実際、資本による囲い込みは、その国に資本(財産)を生むだろうけれども、労働者となる国民の生活は悪化しかねない。すでに現在の農村地域の貧困は資本主義がいびつな形で広がってきているものを反映しているともいえるのかもしれない。本来であれば資本に依存せずにも飢えずに暮らしていけた人々が、資本収入を得ないとやっていけないとなって、貧困が生まれている部分もあるのだろうなーと思う。でも一度侵食してきた資本主義は、たぶん取り込まれないことを許さない。

じゃあやっぱり併せて、できるところから、それに抵抗する動きを作っていかないといけないのだと思う。

でも、生産の現場から改革するって、まだ少し私には難しい。会社の意思決定を民主化するってこと?それよりも、一般的な既存民間企業の傍らで、協同組合などのアソシエーション組織を新たにどんどん作って行こう、ということだったかな。でもこの大量で強権な民間企業の存在はどうするんだろう。国家を強めずに、どうやって私たちの価値観を変えられるんだろう。…

何を書いているか自分でもわからなくなってきたけれど、とにかくとても興味深い本だったので、引き続き勉強し思考し、行動しようと思います。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年08月15日

とてもよかったと思います。なんとなく評判良さそうというのだけ知ってて、取り沙汰されているのだけ知ってて、でもほぼ前情報なしで読み始めて。気候変動に警鐘を鳴らす本だったことに面食らいつつ(笑)、しかも、新たなマルキスト的本だったことに衝撃を受けた(笑)。(でも、よくよく考えて?見れば、「資本論」とある...続きを読むので当然とも言えるが、ポスト資本主義、くらいの感覚でいた。)
資本主義全否定!というなかなかの衝撃本。
でも、なんで成長しなきゃいけないの?成長率とかどうでもよくない?とか、なんで一番を常に目指さなきゃいけないわけ?と思う日々も多かった自分には、それなりにしっくり来る部分もあったにはあった。
ちなみに、資本主義の構造として、効率化が常に目指されるがその余力を次の生産に回さなければ失業者が増えるだけ→資本主義の構造として成長が前提、という説明が、今までの疑問に一番の解をくれていて嬉しかったっす。
そんな訳で、総じて楽しく読んだ。こんな超経済哲学論的な話が、このレベル感で簡単に読めるのってとても有難いね!!
でも惜しむらくは、この論をどう実現できるのかが、私の頭では全然イメージできなかったことかな。。もう少し、実施論にも踏み込んで欲しかった。理論的には理解できたけど。
最後の実践の事例紹介みたいなところは、結局、今の資本主義の一部改善、の域を出ない面も多分にあったような気がするのよね。

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