あらすじ
川、海、濠、湧水、池、用水。東京は下町から郊外まで、豊かな水辺をもっている。この都市の象徴=隅田川、文明開化のモダンな建築群が水辺を飾った日本橋川、世界にも類を見ない豊かな自然環境を保有する皇居・外濠、凸凹地形と湧水が目白押しの山の手、水辺をたどれば古代の記憶に触れることができる武蔵野……本書は東京各地をめぐりながら、この魅力的な水都の姿を描き出す。『東京の空間人類学』から35年、著者の東京研究の集大成がついに刊行!
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Posted by ブクログ
地方出身者にも江戸東京の街並みや名所の来歴がわかり、ためになった。特に、隅田川、日本橋川、江東、皇居周りの堀が、面白かった。グーグルマップや今昔マップを開きながら、楽しく読んだ。今度、印象に残った所を歩いてみようと思う。
匿名
都市について考えようとすると現代を生きる私達はどうしても電車の路線や道路の繋がり、あるいは駅を中心とした街の広がり、そういったものに目がいってしまいます。それも当然と言えば当然で現代人の知っている、目で見ている都市というのはその部分が主だからです。本書は水の流れに注目し、川が繋がって形成している都市のあり方に私達の目を向けさせてくれます。本書にも出てくる日野や府中の近辺で育ちましたが、多摩川を通して府中と品川に古来繋がりがあったとは、本書を読むまで知りませんでした。
Posted by ブクログ
水の視点から東京の町を見つめ直した評論。運河や川のはり巡る下町だけでなく山手から多摩地区まで広げた包括的な視点が素晴らしい。
「東京の空間人類学」の筆者の近著。最近のブラタモリやスリバチ地形のブームを反映しアップデートされた内容。明治期までの水運の視点から羽田や浅草など漁村視点、山の手から武蔵野へ西へ進む視点が面白い。
特に筆者の育ったという杉並の成宗の記載か秀逸。また水の郷日野など、江戸時代以前からの開発の痕跡もたどれるところが興味深い。
本書の参考文献の一覧も含め東京研究の基本となる一冊だろう。
Posted by ブクログ
陣内先生の東京の空間人類学を、35年の年月を経て大幅アップデートという感じの本。今回は範囲を多摩の方まで拡げています。なるほど先生は杉並の出身なのか。湧水と川が生活導線の中心となって、そこに文化も生まれるという流れが見えます。一度武蔵野台地もアップダウンを体感しながら歩かんといかんな。
Posted by ブクログ
5月の天気のいい土曜日、友人に誘われて京浜運河で初めてのカヤック遊びを楽しみました。すいすい進む感覚も面白かったのですが、普段見ることの出来ない視点から東京(の一部)を見れたことにテンション上がりました。陸に上がって昨年からの積読だった「水都 東京」を開いた訳です。著者については大昔テレビの番組でヴェネツィアやアマルフィーを紹介している人として認識していましたが、東京も同じように〈水の都市〉として研究してきたのですね。本書は35年前の「東京の空間人類学」を基本に置いた更新ということです。未読ですが前著の水の下町、陸の山の手という二元論でなく、もっと広い東京エリア全体を〈水の都市〉という観点で語るという本になっています。例えば日野を〈水の郷〉としていることも意表を突かれました。中沢新一の「アースダイバー」の2019年の増補改訂版が「海民」という〈水の人〉視点でのアップデートだったのとシンクロを感じました。1964年のレガシーである首都高が用地買収の効率性から東京の河川を覆い隠すように建設された成長の20世紀だとしたら、日本橋のプロジェクトのように水辺を取り戻そうとする動きが21世紀の持続性の世紀の特徴かもしれませんね。
Posted by ブクログ
一応まちづくり系の部署にいるものとして、東京の基層からどういった都市が形成されているのかを知ることができ、とても勉強になってよかった。
東京はやはり水の町であり、水運な活性化などもっと行われたらおもしろいのかなと思った。神社や集落が水辺に沿って集まっているというのもとても興味深く、実際にいろいろ見て回ってみたい。
Posted by ブクログ
<目次>
第1章 隅田川~水都の象徴
第2章 日本橋川~文明開化・モダン東京の檜舞台
第3章 江東~「川向う」の水都論
第4章 ベイエリア~開発を基層から考える
第5章 皇居と濠~ダイナミックな都心空間
第6章 山の手~凸凹地形を読む
第7章 杉並・成宗~原風景を探る
第8章 武蔵野~井の頭池・神田川・玉川上水
第9章 多摩~日野・国分寺・国立
<内容>
東京を多摩地区まで広げて、「水」をキーワードに展開する都市論。イタリアの分析技法を東京にも生かしている。昨今の地形ブーム(「ブラタモリ」など)と歴史をうまく取り込みながら、人々が何を考えてきたかを分析する。陣内先生も結構なお年だったんですね…。