あらすじ
戦後12年目にシベリア帰還者から遺族に届いた6通の遺書。その背後に驚くべき事実が隠されていた! 大宅賞と講談社ノンフィクション賞のダブル受賞に輝いた感動の書。
敗戦から12年目に遺族が手にした6通の遺書。ソ連軍に捕らわれ、極寒と飢餓と重労働のシベリア抑留中に死んだ男のその遺書は、彼を敬慕する仲間たちの驚くべき方法により厳しいソ連監視網をかいくぐったものだった。悪名高き強制収容所(ラーゲリ)に屈しなかった男たちのしたたかな知性と人間性を発掘した感動の傑作。第11回講談社ノンフィクション賞(1989年)、第21回大宅壮一ノンフィクション賞(1990年)を受賞。
解説・吉岡忍
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Posted by ブクログ
本当にノンフィクションなの?と疑うほどのストーリー
山本さんは「最後に勝つのは道義であり、誠であり、まごころである」と遺書に残しました。
しかし、現代の日本を見渡すと、道義に反した振る舞いをする人の方が得をして、生き残っているように思える瞬間があります。その現実は、とても皮肉で、やりきれない気持ちにさせられます。
けれども、時代を越えて語り継がれ、尊敬され続けるのは、やはり道義を大切にして生き抜いた人たちだと私は思います。山本幡男もその一人であり、その姿勢こそが後世の人々の心を打ち続けているのだと感じました。
匿名
どんなに過酷な状況においても日本への帰国を諦めない主人公と、その様子に影響された周囲の人々の心情が細かくに記されており、これがノンフィクションであることに驚きました。
主人公が遺書を残すシーンと、この遺書をなんとしてもご遺族のもとへ届けようとする人々のシーンには大変感動しました。
Posted by ブクログ
二宮和也主演の映画「ラーゲリより愛をこめて」の原作本です。映画、観ました。
原作となっている本書はずいぶん以前に書かれたようで、1989年に単行本が出版されている。解説では、1990年代の今、読むべき本とか書かれているけど、もちろん2023年の現在読んでも価値ある本です。
先に映画を観ているので、ラーゲリの厳しい寒さや、日本人の中にもスパイがいるかもしれないという緊迫感、やせ衰えて死んでいく仲間、懲罰房の恐ろしさなどが読みながら思い出された。映画でも山本が俳句を詠んだり、知的な部分が存分に描かれていたが、本書の中にもたくさん、山本やその仲間が収容所で読んだ俳句や詩が出てくるので、よくこんなに覚えている人がいるな、と感心した。多くの人の記憶と証言を集めて、時間をかけて取材して書かれたのだろう。そのことにも感動。
幼いころ「アンネの日記」を読んで漠然と感じたような感動を、本書にも覚える。人は、どんな厳しい状況にあっても、生きている限り心を失ってはいけない。自分で自分の心を守ることができれば強く生きられる。最後は心なのだと。
映画でも同じ描き方だと思うが、タイトルでもありメインとなるのは「遺書」なのに、ページのほとんどが収容所での出来事と山本と周囲の人たちとの交流に割かれ、遺書が書かれ始めるのはもうページも残り少なくなってからだ。「やっときたか」と思いながら読み進める。そして、遺書を記憶した人々が、ダモイの日を迎え日本の船に乗るシーンは本当に胸が熱くなる。船の中で句会をするなんて映画にはなかった気がするな。いい場面だと思いました。
クロも本当にいたんだな。
読んで良かったです。