あらすじ
「在野研究者」とは、大学に属さない、民間の研究者のことだ。
卒業後も退職後も、いつだって学問はできる!
現役で活躍するさまざまな在野研究者たちによる研究方法・生活を紹介する、実践的実例集。
本書は、読者が使える技法を自分用にチューンナップするための材料だ。
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Posted by ブクログ
大学や研究機関の外、「在野」にいながら著作に勤しむ人たちの生活を紹介。ビギナーズは謙遜でほぼプロの人が登場する。研究のきっかけや進め方は人それぞれで面白く参考になる点が多かった。巻末「在野のための推薦本」も推す理由が併記され嬉しい。この本はとても良かった。
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前作『これからのエリック・ホッファーのために』2016が過去の在野研究者を取り上げたのに対し、本書は「今現在活躍している人」を扱う。
●総論として
“
在野の研究生活に一般解はない。
個々人の生活はそれぞれ異なる条件を与えられ、使えるリソースもてんでばらばらだ。偶然性に左右される。
その上でなお在野での学問を志すのならば、各人、使える技法を自分用にチューンナップせねばならない。
■工藤郁子 趣味としての研究
“稼いだお金で学術書を思うさま買っては積み、ときどき読む。
有給休暇を取って学会に行き、たまに口頭発表をする。
まれに論文を書くが、別にアカデミックポストを狙っているわけではない。研究の楽しさを満喫し、自分を満足させることを主目的として、やっている。
■3人目 伊藤未明 「40歳から「週末学者」になる」
体調を崩し最初の会社を35歳で退職
しばらく実家でぶらぶらしたのち、
修士号を一年で取れることもあり、イギリスのノッティンガム大学に留学
その後、学者になろうと京大の博士課程
このとき39歳
“研究者としての生活にとって会社の仕事は生活費と本を買う金を稼ぐ以上の意味はないものと考えている。
●逆卷しとね
本を読めることは幸せだ。それだけでいい。けれども少しの元気があれば、その幸せを人と共有してみるといい。
■8人目 内田真木
高校教師のかたわら、聞き取り調査
有島武郎
「研究ノート」
見開きにあらかじめ1ヶ月分の日付を記入
二行で1日分
読んだものを簡単に記録
何もしない日は案外少ない。昼休み30分の積み重ね。
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在野研究とはなんぞや? と未知の世界を覗くような気持ちで手を出してみたら、専門性に圧倒される部分もありつつ面白かった。
実践的な在野研究の進め方の解説やアドバイスがあれば、ご自身の研究生活を具体的に振り返られているものもあり、研究といっても内容は人それぞれで、ご自身が研究する立場の方も、研究者を支援するのが専門の方もいらっしゃる。
未知の世界、とても広かった。
時折出てくる、研究者・専門家視点のユーモアが面白い。「締切直前の深夜に降りてくる「文章の神様」はだいたい邪神」とか、機械翻訳に対する「普段はおかしいのに時々ぐさっとくることを言う面白い友達」「お前、大人になったらつまらない人間になったな、っていうアレ」とか。
研究というほどではなく、ライトに趣味として学びを続けていきたい者としても、参考になる部分があった。心構えの部分であったり、学びを続ける具体的な手法であったり。躓いたり意欲を失ったときにまた読み返すといいかもしれない。
そういった意味で、逆卷しとねさんの章の終わりの二段落が力強く、心強かった。
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学ぶことがただただ好きで、仕事をしつつも毎日学術書を読み続けることを辞められずに過ごしてきたが、そういう事が好きならばこのような生き方もあるのだなと励まされるような本だった。
学ぶ意欲を解放して様々な成果を上げている著者陣のライフヒストリーから学ぶことは非常に多い。
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在野研究ビギナーズ――勝手にはじめる研究生活。荒木優太先生の著書。大学や研究機関、企業でお金をもらって研究している人だけが研究者、研究員であると決めつけるのは、視野の狭い世間知らずで傲慢で思い上がった考えなのかも。在野研究者として自分の好きなことを研究することにだって価値はある。世の中の全員が研究者、研究員になったつもりで生涯学習、生涯研究、研究生活をするような時代が来たら素敵なこと。
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今の仕事は「ライス」ワークとして、「ライフ」ワークの模索に興味分野のブログでも始めてみようかと思って購読。
複数人の著者が自身の研究やこれまでの経緯を紹介する形だが、在野研究とは言っても、何かしら大学での研究に携わっていたところから大学を離れた人たちで、言ってしまえば「ガチ勢」、自分との差は大きく感じた。
一朝一夕に在野研究者のお仲間になれそうにはないが、活動のイメージ作りにはなった。
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大学や研究機関に属さない色々な分野の研究者の方々が、自身の研究の動機・内容・スタイルなどを綴った本です。
研究とは何か広く考えるきっかけにもなるし、様々な分野の研究の特徴を知ることができるし(在野の研究者の方ゆえの事情が加味されてはいると思うけど)、職業としてでなくても研究を続けている方々だからこそなのか研究対象への熱意があふれてるし、いろんな意味で面白かった。
在野の研究者の方の困難の1つとして文献へのアクセスが挙げられていたが、オープンアクセスにより少しそれが緩和されたとも複数の方が書かれていた。
みなさん、苦労されてるのは、仕事との両立(物理的にも精神的にも)というかんじはしたが、適度なところで意識的に折り合いをつけつつ楽しんで研究されてるように思った。
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自分の研究者としてのキャリアパスを考えるために読みました。
読む前に気になっていたのは、倫理審査どうするんだろうということでしたが、本書の研究者の多くが人文科学系だったからか、研究倫理について触れている方はいませんでした。
大学以外となると、臨床現場や企業で、仕事とイコール、あるいはそれに近い形で研究を続けるという道しかないと思っていましたが、趣味やライフワークのような形で研究を続けていくスタイルが選択肢としてあってもよいのだなと思いました。ただし在野として研究活動を続けるにも向き不向きがありそうでした。
また、学問とは、研究とは、大学とは、等深く考えてこなかった概念について揺さぶられ、改めて深くキャリアを考える良いきっかけになりました。
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大学に属してなければ研究活動できない、というのは思い込みだった。この本に掲載されている方々は、個性的な研究を自由に行なっていて、逆に在野の方が伸び伸びしている様子が感じられた。ネット社会の今こそ、在野の研究者がもっと増えると思った。
Posted by ブクログ
「研究者」というと、大学や研究機関に所属し、自分の研究分野に関連する学会や学術雑誌で研究成果を発表する人というイメージだろうか。
もちろん、そうした研究者は多いが、本書で扱うのは、いわゆる「在野」の研究者である。つまり、「職業」としての研究ではない、どこにも「所属」しない研究である。
編著者を含めて、さまざまな分野で、己の興味の対象を探求する総勢18名。
さて彼らがどのように今の研究スタイルにたどり着き、どのように研究を推し進め、どのように発表の場を持っているのか、研究者自身の執筆により、または対談形式でその姿に迫る。
大学などの「在朝」研究者に比較して、「在野」の研究者のハンディとなるのは、研究に充てる時間また費用であろう。しかし一方で、カリキュラムやしがらみに捕らわれることなく、己の興味の向くままに、突き詰めて1つのことに取り組みことができるのが利点である。
「在野」の性質上、大掛かりな研究設備や機械が必要な分野には関与しにくい。したがって、本書で取り上げられる研究者は多くは人文系であるのは無理のないところだろう(例外は博物学的な生物研究者。この分野は古くから在野研究者の多いところでもある)。
現代ではインターネットの発展で、在野でも多くの資料に触れることが可能となってきている。非常に恵まれているともいえるが、それだけにどこに目を付け、どのように展開していくのか、「切り口」が大切になってくるともいえよう。
政治学、AI、視覚文化、活字史、妖怪、哲学。さまざまな研究者の姿から見えてくるのは、在野といえども閉じこもるのではなく、他の研究者とつながり、視野を広げていくことの大切さである。
在野としての自由度をどのように最大限に使っていくのか、キーはそのあたりにあるのかもしれない。
個人的には、青空文庫に関与し、また翻訳研究者でもある大久保ゆう氏の話をとてもおもしろく読んだ。
「研究」というと堅苦しいが、趣味の延長のように始まる「研究」があってもよいのではないか。もちろん、それを追究し、何らかのレベルに到達するのは難しいことなのではあるが。
多くの「在野」研究者の姿から、興味を惹かれる研究分野、あるいは研究スタイルが見つかりそうな、刺激に満ちた1冊である。
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少し癖のある「研究者」のラインナップのような気がするけれど、さすがにそれぞれ語り口がエッジが立ってフックが効いているので、読んでいて面白い。元気が出るかな。
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本書では、大学に所属をもたない「在野研究者」15人が、研究生活の実践と方法をおのおのの体験の中で論じている。
本書を読み、在野研究を続けていくには研究費の問題や文献の入手などいろいろと困難があるなということも感じつつ、好きな分野について、別の仕事を持ちながらでも在野研究に心血を注ぐことの魅力を大いに感じた。
本書の中では、公務員として政治学史を研究する酒井大輔氏の「職業としない学問」、趣味としての研究を楽しんでいる工藤郁子氏の「趣味の研究」、サラリーマンをしながら週末に研究に勤しむ伊藤未明氏の「四〇歳から「週末学者」になる」、ハエとの出会いで人生が変わってしまった熊澤辰徳氏の「エメラルド色のハエを追って」、公務員をしながら怪異・妖怪の世界にどっぷりはまる朝里樹氏の「好きなものに取り憑かれて」、地域おこし協力隊として西周の研究を通した地域活性化に取り組んだ石井雅巳氏の「地域おこしと人文学研究」が特に興味深く、自分にとって示唆的だった。
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会社員などとして働きながら、余暇の時間を自分のやりたい研究に充てる在野研究家の皆さんが、日々の工夫や苦労、考えについて綴ったオムニバス形式のエッセイ。
世の中には忙しい中でもこんなに学問している人がいるのか、と刺激的で面白かった。
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筆者は独立研究者たち。博士号、修士号、はたまた学士号持ちとは限らない。
いろんな分野の在野研究者の血の通った体験談が読めて、密度が高く、読み物としても非常に面白い。
分野によって在野としてやりやすいものとそうでないものもあることも学べるし、収入、コミュニティの入り方、知人の作り方、発表の仕方まで、さまざまな実体験を知れる。
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前作の『これからのエリック・ホッファーのために―在野研究者の生と心得―』と同様に、本書も純粋に学問に取り組みたい在野研究者にとっての福音書なるだろう。本書は在野研究の事例集であり、終始わくわくしながらページをめくった。分野や専門領域は異なるが、そうした事例を組み合わせることにより、読者の研究に対する姿勢や研究環境を整える手段を知る一助となるはずである。
例えば、政治学の分野と同じように、高等教育研究の分野もセミプロ(プロとアマの中間)が多いイメージがある。研究対象としての大学に身を置いて、研究者以外の職にある事務職員等の立場で研究するケースが、自分も含めて少なくない。また大学事務職員そのものを研究も多い。これは本書の内容と実際の例との類似点の一例だが、この他にも応用可能なケースが収められている。
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在野研究とは何か。働きながら論文を書くとはどのようなことか。さまざまな実践者の方の試みや試行錯誤が、その息遣いまで感じられて、とても興味深かった。
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働きながら研究活動をしている人たちによる、キャリア?事例本。論文の寄稿や学会での口頭発表をする人なんかは到底マネできないなと思いつつ、リサーチの仕方とか時間の使い方などのテクニックにとどまらない、研究と仕事が絡み合った生活観はとても刺激になった。個人的には広告会社に勤務しながら博士課程取りに大学院にも通う最終章の方の話は特に面白かった。
Posted by ブクログ
・誰かに会いに行くことが決まっているなら、事前に論文を何本か読んで<読んでわかったこと/わからなかったこと>をなるべく明確な言葉にまとめておき、機会があれば相手にそれを伝えてみよう(210)
・必要なのはまずは教科書的な知識であり、「最新の知識」ではない。できれば最初に会ったときにその分野の標準的な教科書をいくつか教えてもらい、次に会うときまでには読んでおこう。そうすれば相手はその分だけ楽に話せるようになる(210)
・支援者は自分自身で何か「よいアイディア」を出す必要はない(211)
・課題の方向を「彼/女たち自身がアイディアを出しやすくするために何ができるか」へと切り替えるだけで支援のハードルは一気に下がる。たとえば、議論の場を設定するためのコミュニケーション・コストを供出したり、要所要所で関与者たちが共通の土俵として使えるような資料(調査結果やこれまでの議論・経緯のまとめなど)を提供したりすることは、それほど難しい仕事ではない(211)
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大学などに属さないで
他に仕事を持ちながら研究する15人が
そのメリットとデメリットを語る。
それぞれ事情や方向性も違うから
これから在野研究を考えている人には
一読の価値があるかも…。
在野から大学に入り直した語り手もいたし。
今はネットで他人の研究を学ぶこともでき
自分の研究も発信できる時代だから
生涯研究を続けたいなら
それも一つの選択肢ってことですね。
Posted by ブクログ
「ちょっと余暇に」「定年後の楽しみに」というのではない、ガチな在野「研究」者のための本。
役に立つか立たないかでは、礫川全次 『独学で歴史家になる方法』のほうが使えそう。
Posted by ブクログ
様々な分野で活躍する大学に属さずに独自の研究を続ける在野研究家たちによる、在野で研究するということについての本。人選が政治学から生物学までバラエティに飛んでいることもあって内容は苦労話から自慢話、ハウトゥに近いものまで幅広い。
大学は権威だし、潤沢ではないにしろ個人でやるより金の苦労も少ないし、コネもある。何か研究するといったとき多くの場合大学でやった方が楽なのは間違いない。それを理由はいろいろあるにせよ在野でやろうというのは多かれ少なかれ変わった人であることは間違いないだろうし、変わった人の話はたいてい面白い。
Posted by ブクログ
大学や研究所に所属し、研究で糧を得るのではなく、他業で生活する傍ら研究・発表を行う在野研究者が、自らの研究法や、経歴について書いている。
色々なジャンルの研究者の短編アンソロジーのようで読みやすい。
理系・文系関係なしにいろいろなジャンルの研究者が書いているが、若干文系の研究者の方が多い印象。実験となると、個人では難しいのかもしれない。
冒頭には、研究方法(ハードかソフトか、個人か多数か)によって誰の文章を読むといいのかを示した分類もあり親切である。
Posted by ブクログ
「在野研究」…ざっくり言って大学や研究機関に所属せず、研究活動(狭義には論文執筆や学会報告など)をしている人達によるエッセイ。
いや世の中ホントに色んな人がいるもんだなあと感嘆した。勇気づけられるし、自分も何かしらノウハウを高めながら取り組んでみたいと勇気づけられる。
イベントにも行ったけど実は皆執筆には後ろ向きだった様で(笑)在野研究という概念自体に疑問や問題点を指摘する声も多々あり。別にアタシら在野とか在朝とか意識してないんすけどみたいな感じだったか…忘れたけど。
それでも「研究は研究(機関所属)者だけのものじゃない」と多様な実例を持ってブチ上げた事に読者は勇気づけられたのだと思うし、それは「在野研究」というキーワードの引力抜きにはあり得なかっただろうと思う。
在野に「研究」―論文執筆や学会活動等の実績やネットワーキング、ひいては序列化を持ち込まんでほしいなんて声もあったなあ…。まあそこは皆やりたいように好き勝手に知的生産すりゃいいんじゃないんすかね。というのが当面の理解。
とにかくまあ在野といえど色々あるみたいで、だからああいう驚く程反体制的アジりまくりのインタビュー記事も載せてるんだと思う。政治は免れんよと、ちょっと押さえてはおこうね、的な。
あと『これからのエリック・ホッファーのために』の方がマニュアル的に整理されているという話もあったけど、実際その通りなのでコチラもお薦め。