あらすじ
生活学の先駆者として生涯を貫いた著者最晩年の貴重な話――「塩の道」、「日本人と食べもの」、「暮らしの形と美」の3点を収録した。日本人の生きる姿を庶民の中に求め、村から村へと歩きつづけた著者の厖大な見聞と体験がここにはある。日本文化の基層にあるものは一色ではなく、いくつかの系譜を異にするものの複合と重なりである、という独自の史観が随所に読み取れる本書は、宮本民俗学の体系を知るための最良の手引きとなるだろう。
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Posted by ブクログ
昔の日本で、塩をどのように作り、運んでいたかを民俗学者が語る。内陸の村民が伐った木を川に流して、その木を海岸の村民が薪にして海水を煮詰めて塩を作っていたとか、馬よりも細い道を歩ける牛の背を使って塩を運んでいたとか、まったく知らない話が具体的に説明されていて面白かった。塩自体の神がいない説明が興味深い。
Posted by ブクログ
人間にとって不可欠な「塩」を手に入れるため、昔の日本人がどのような手段を取っていたかが紹介されています。中でも、山の中に住む人々が塩を手に入れるため、木を伐って川に流し、河口まで行ってその材木を拾って焼いて塩を取っていたというのは衝撃でした。そこまでの苦労をしないと塩を手に入れられなかったというのがすごいなと。
これ以外にも、日本での製塩方法がいくつか紹介されていて、その辺の雑学も楽しいです。
著者によると、塩の道はかつては牛が踏み固めた道であり、道草が牛によって食われた道であるとされています。つまり、その先に必ず何かがあると確定している道であり、旅人はそれを頼りに道を進んでいったことになります。その意味でも、塩が通る道は非常に重要だったことが分かります。
この本では、塩以外にもサツマイモの安定供給によって江戸時代の人口が急増し、様々な職業が増えていったことや、畳が発明されたことで座ったまま生活をするようになり、食事が膳になってそこから幕の内弁当が作られるようになったことなどが紹介されています。塩の道以外のテーマについてはあまり詳しくないですが、面白い情報がいくつも入っている本です。
Posted by ブクログ
明治時代の日本人の暮らしとは隔世の感がある。
本書は昭和50年代に書かれている。
日本全国を訪ね歩き調査するときに話を聞いた地元の長老はまだ明治生まれが健在であった。
現在では戦前の話を聞くことすら難しいだろう。
そういった意味で、すでにかつての日本の姿を新たに見つけ出すのは不可能だ。
昔の日本の暮らしが知りたければ書物に聞くしかない。
本書では「塩の道」「日本人と食べもの」「蔵氏の形と美」の三点が収録されている。
海からしか採ることが出来ない塩を山村の住民はどのようにして確保していたのか。
木を切り川に流し、それを海辺で回収し自ら塩を浜辺で炊いていた。
それが瀬戸内海産の塩が海運で全国に運ばれるようになってからは、中から外の流れが外から中への流れに変わる。
陸船を呼ばれた牛の隊列が日本全国に塩を運んでいた。
失われた日本の姿は書物の中にしか残っていないのだ。