あらすじ
日本の歴史を紐解いていくと、歴史を貫く一本の線があることに気付く。それが「天皇」である。天皇は日本人の歴史そのもの、といってよい。しかし、これまで通史といえば、目まぐるしく交代する権力者を中心とした政治史が一般的だった。本書はそれとは異なり、二千年来変わることがなかった天皇を軸として、国史を取り纏めたものである。故に主題を『天皇の国史』としている。また、通史で陥りがちなのは、客観的かつ冷静的になり過ぎることである。これまで「日本史」は、「外国人が学ぶ日本の歴史」というような扱いで、感情を排して淡々と綴られているものだった。だが、日本人が学ぶべき日本の歴史は、本来はそうではないはずである。我が国は現存する世界最古の国家であり、その歴史を紐解くことは興奮の連続となる。そこで本書では、その興奮を文章に積極的に著し、日本人の日本人による日本人のための歴史を描いている。さらに今回、国史の全ての時代について、考古学や史学、人類学、分子生物学など、学界の最新の議論を把握することに努め、それをふんだんに織り込んでいる。平成18年に『語られなかった皇族たちの真実』(小学館)を上梓してから、単著21冊、共著10冊を世に送り出してきた著者が、「これまでの研究活動と執筆活動の集大成となった」と自ら語る、渾身の1冊。
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Posted by ブクログ
久しぶりに、読むほどに思索が深まる本に出会った。
竹田恒泰の『天皇の国史』は、日本という国を「天皇」という一本の軸から見つめ直した壮大な試みである。
それは政治や戦の記録をなぞる単なる通史ではなく、
この国がいかにして“時間の連続”を保ち続けてきたのか――
その精神的な基盤を描こうとする、思想的な歴史書だ。
著者の筆致は精密でありながら、どこか温度を帯びている。
神話を史実と切り離さず、むしろ日本人の心の原点として読み解く姿勢には、
知識と信念の両方が感じられる。
史料に基づいた分析の奥に、
「人がなぜ祈り、なぜ受け継ぐのか」という根源的な問いが潜んでいるのだ。
とりわけ印象に残るのは、
“なぜ日本だけが王朝交代を経験しなかったのか”という一貫した問題意識である。
その問いを通じて見えてくるのは、
天皇という存在が制度でも宗教でもなく、
「この国の時間を継ぐ象徴」そのものであるという洞察だ。
読み終えたあと、静かな余韻が残る。
歴史とは過去の記録ではなく、今も呼吸している“生きた連続体”なのだと気づかされる。
そして、その鼓動の中心に確かに息づくもの――
それが「天皇」という存在なのだろう。
Posted by ブクログ
男系継承を何としても維持して欲しいし、日本国がいつまでも続いて欲しい。正しい歴史認識が広まることを願う。著者が書いた国史教科書が多くの中学校で採用されますように!
Posted by ブクログ
1700
714P
竹田恒泰
昭和50 年(1975)、旧皇族・竹田家に生まれる。明治天皇の玄孫に当たる。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。専門は憲法学・史学。作家。平成18 年(2006)に著書『語られなかった皇族たちの真実』(小学館)で第15 回山本七平賞を受賞。著書はほかに『日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか』『日本人はなぜ日本のことを知らないのか』『日本人 はいつ日本が好きになったのか』『日本人が一生使える勉強法』『アメリカの戦争責任』『天皇は本当にただの象徴に堕ちたのか』『日本の民主主義はなぜ世界一長く続いているのか』(以上、PHP新書)、『現代語古事記』(学研プラス)など多数ある。
天皇の国史
by 竹田 恒泰
他方、神道的世界観によると、人の先祖は神であり、神は大宇宙あるいは大自然のエネルギーが作り出したのであるから、序列は「自然→神→人」となる。人の根源が大自然であることは、科学的にも正しい。また、この価値観において、日本人は山に山の神、海に海の神を、また一本一本の木に神を見出すように、大自然に神々の姿を見ている。「神」と「人」の垣根が曖昧であるのと同じで、「自然」と「神」の間も曖昧である。このように、日本人にとっての神とは、「大自然」「大宇宙」そのものなのである。
伊耶那岐神と伊耶那美神は高天原の神に相談して占ったところ、女神から声を掛けたことがいけなかったと知り、再び淤能碁呂島に戻って交わった。今度は伊耶那岐神が「あなにやし、えおとめを」と仰り、伊耶那美神が「あなにやし、えおとこを」とお答えになって交わると、次々と立派な島が生まれた。
日本においては「 言霊」というように言葉には霊力が宿ると考えられてきた。女神から声を掛けて交わったところ、未熟児が生まれたという『古事記』の逸話は、結婚は男が申し込み女の承諾を受けて成立すると観念されてきたことと関係があると思われる。
二柱の神のまぐわいによって最初に生まれたのは 淡 道 之 穂 之 狭 別 島(淡路島)、続けて 伊予 之 二 名 島(四国)、 隠 伎 之 三子 島(島根県の 隠岐諸島)、 筑紫 島(九州)、 伊 岐 島(長崎県の 壱岐島)、 津島(長崎県の 対馬)、 佐度島(新潟県の 佐渡島)、 大倭 豊秋津島(本州の畿内を中心とする地域)が生まれた。このように八つの島が先に…
『古事記』は四国と九州は、それぞれ胴体は一つだが顔は四つあり、顔毎に名前があると説明する。中でも四国の一つの 伊予 国 は「 愛 比 売」という名前だという。現在の都道府県の中で、県名に『古事記』の神の名が付…
愛媛県の旧国名は「伊予国」で、幕末には八藩に分かれていたところ、明治時代の廃藩置県で「県」が設置され、明治六年(一八七三)に 石 鉄 県と 神山 県が合併した際に、『古事記』にちなんで「愛媛」を県名として選んだ。現在でも松山市の 伊 豫 豆 比 古 命 神社には、 御 祭神 として伊豫豆比古命と共に 愛 比 売 命 が祀…
伊耶那岐神と伊耶那美神がお生みになった日本列島は、地質学的にいうと、約八〇〇〇年前に現在の形になったが、昔は 支那 大陸(中国大陸)と繋がった半島だった。地球の気候は温暖期と氷河期を行き来している。氷河期には大量の雪が氷となって陸地に残るため海面が低くなる。そのため日本列島は大陸と繋がり、温暖期には逆に海水面が高くなって大陸から切り離されることを繰り返してきた。
しかし、約三万八〇〇〇年前の世界最古の磨製石器が日本列島から出土していることは、その時代の周辺地域には磨製石器がないのであるから、文化を持たなかった現生人類が、日本列島に到達してから文化に才覚したことを意味する。人類の歴史上、文化を持たないただの「ヒト」が「人間」に才覚した場所が日本列島だった。日本は神の国である。「ヒト」が「人間」に成るほどの強烈な 閃きが天から降りてきたと理解しておきたい。
思うに、日本列島は周辺地域と比較して自然の恵みが豊かであるから、日本列島に至った現生人類は、これまでになかったほど自由な時間を得たと見ることができよう。列島に住み始めたことで、食料を確保するために費やす時間は大幅に短くなったはずである。すると、道具を改良することに自由になった時間を費やすことができるようになり、その結果、世界で最初に磨製石器を作ることに繋がったのではないだろうか。
天皇が国民のことを我が子のように愛しその幸せを祈り、国民は自分たちのことを大切に思って下さる天皇を本当の親のように慕い、皆で力を合わせて国を支えてきた。それが我が国の国柄である。天皇の統治とは、天皇自ら政策を立案するのでもなければ、号令を掛けて臣下を奮い立たせることでもない。それは、天皇が国民を知ることに努めその幸せを祈ることにより、自ずと日本国民を統合し国を束ねることだった。
そして、このような天皇の統治は、二〇〇〇年以上続き、現在に至る。日本の国柄を一言で表現するなら「日本は天皇が知らす国」といえる。そしてそれが日本の 国体 なのである。明治二十年(一八八七)に大日本帝国憲法の草案を書いた 井上毅 は、第一条には日本の国柄を簡潔に記さなければならないと考え、熟考の末「日本帝国ハ万世一系ノ天皇ノ 治 ス所ナリ」と書いた。だが、当時「シラス」は古語になっていて馴染みが薄かったため、漢語の「統治」をこれに充て、「治ス」は「統治ス」に変更された。しかし、憲法制定の責任者だった 伊藤博文 は憲法解説書である『憲法 義解』(一八八九)で「統治ス」は「治ス」の意味で用いていると説明している。
また、縄文人の風習の一つに 屈葬 がある。屈葬とは、手足を折り曲げて葬ることで、死霊の活動を防ぐためとも、寒さに耐えるための姿勢ともいわれている。特別大きい住居が見られないこと、共同墓地が営まれたこと、そして、副葬品がないことなどから、縄文時代には人々の間に貧富の差はなかったと考えられる。
ところで、現代日本語と現代中国語では、文法が全く異なり、特に語順が全く異なる他、人称代名詞や指示代名詞も被らず、規則的音声対応もないことから、完全に別系統の言語である。当時の弥生語と支那語も同様に別系統である。民族の歴史は言語の歴史ともいえる。言語は民族と共にあり、また民族と共に衰えるものなのである。
強権を発動した義教だったが、幼い後花園天皇を後見する姿勢は謙虚だった。義教は幼帝に勉強するように指導し、後花園天皇はそれに応えるように熱心に勉強し、英明な天皇に育っていった。天皇の勉強熱は、あるいは義教の要求を凌駕していったと思われる。記録に残るだけでも御花園天皇の読書量は、歴代天皇の中でも抜きん出ている。しかし、後花園天皇が勉強熱心になったのは、義教の影響だけでなく、持明院統の正嫡とはいえ後光厳流とは別系統から即位したことと関係があるのかも知れない。自身の負い目から、強い皇統意識を持つに至ったと思われる。
Posted by ブクログ
日本は天皇の知らす国。
いい言葉かも。(もちろんそれだけとは言い切らないけども)
天皇が”象徴”になったのは戦後からだと思い込んでたけど、天皇はずっと象徴であって日本の心だったんだと思えた(愛国者ではない。)。
天皇家を話の中心に据えた歴史書。
途中からは歴史のテキストのつもりで読んだけど、その時々の天皇の在り方を柱に進んでいく構成は初めてで面白かった。
日本史の復習にもなりました勿論。
買ってから読み始めるまで時間かかったけど、読めて良かった。
神史・先史時代は単語も難しくて(神々の名前とか)やっぱり入ってこないな…
中世以降は一気読み。
Posted by ブクログ
古代から現代にいたるまでの通史であり、決定版。
日本の国体を中心にしつつ、考古学、遺伝学、歴史学など複数視点からの論。
最強最高の日本通史。
はやく教科書検定のほうも通ってほしい。
Posted by ブクログ
これは良書というか、すごい力作、歴史書ではないかと思える。論理的な説明、考察、洞察のほかに、登場人物や読者への敬意も感じとりながら、基本終始穏やかな気分で読み進めることができた。著者の言動を怪しく思うコメントも過去時々見聞きしているが私は少なくともこの本を通じてそのようには感じない。本当かどうか検証できないけれど信頼できる文章であると思える。
Posted by ブクログ
日本は万世一系の天皇が之を治(しら)す所なり
帝国憲法第一条に込められた「日本」という国の定義を理解できたし、また共感できた。
女系天皇に反対する議員や皇族の言っている意味も。
Posted by ブクログ
竹田恒泰先生の集大成となる作品。教科書のように時の為政者を中心として書くのではなく、日本の國體である天皇を中心として書いたもので、650ページと見応えがあった。
時が経ったらまた読み直したい。
Posted by ブクログ
「日本とは何か?」を主なテーマに天皇を中心とした視点で日本の歴史の流れにある各事柄を学校の日本史以上に詳細に知れる逸品の本。
日本人の知らない日本の世界を余すところなく学べる本です。
Posted by ブクログ
力作。
竹田恒泰さんが作家であることを認識。天皇研究者といっても良いくらいに詳しい。
天皇視点で日本の歴史を辿る。天皇と日本は切り離せないことがよく分かる。歴史の解釈も人によって異なることも。
西洋の思想にとらわれず、日本人は世界に誇ってよいと思った。
Posted by ブクログ
先史から令和までの天皇を軸にした日本史の通史。天皇を中心に据えた非常にボリュームのある網羅的な「国史」は他の例をみない唯一無二の著書。特に他の歴史本にはほとんど記述のない古事記や日本書紀についての詳細な分析は非常に示唆に富む。他方古代の比重があまりに重く(平安時代までで全体のほぼ半分)、江戸や明治がそれぞれ50p足らずと、近現代史にも関心のある読者にはやや物足りない内容。