あらすじ
背望会テロ事件から1年。警視庁鑑識課・原麻希のもとに、公安部の広田達也から「背望会リクルーターの指紋が見つかった」という連絡が入る。捜査のため奈良県に向かったふたりのもとに、新たな事件の一報が。奈良県知事選候補者が誘拐され、身代金の運び屋には麻希が指名されたというのだ。またもや背望会の仕業なのか、それとも――!? 大阪府警vs.警視庁の熾烈な捜査バトルが繰り広げられる、人気長編警察小説シリーズ第2弾。
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Posted by ブクログ
女性秘匿捜査官 第2弾 「スワン」
背望会リクルーターが、今回も原麻希に迫る。
その正体は?
そして、アゲハに続く、「スワン」とは?
今回の事件の舞台は奈良県。
背望会リクルーターの指紋を手に入れたと、かつての婚約者である公安の広田達也から連絡があった。
達也と共に事件現場の奈良県へ出張を命じられたハラマキは、そこで起こる事件に翻弄される。
七年間の夫との空白の期間は、麻希自身と父親である子供たちにとっても、微妙な距離感を与えていた。
そんな家族の思いに、後ろ髪を引かれるおもいで、単身、奈良へ出張する麻希であった。
奈良県で起きる事件と、地元の大阪府警、奈良県警との軋轢など、達也と共にハラマキを取り巻く環境は容易ならざるものがあった。
そんな中でも、「奈良県警の恥部」とまで言われた刑事の吾川がハラマキとタッグを組んで事件解決へと導いて行く。
今回も事件解決への糸口となるハラマキの推理が映える。
最後にミステリーに、お決まりのどんでん返しが、「そう来たか」と思わせられる展開だ。
奈良での事件は解決し、リクルーターから告げられた「スワン」は東京にいるとの言葉を胸に、東京へ戻ったハラマキはその言葉の意味を理解し、愕然とする。
背望会リクルーターとの対決は、まだまだ続く。
次巻、「マリア」も期待大だ。
Posted by ブクログ
本作の著者は吉川英梨である。吉川氏の作品は、つい先日まで「十三階シリーズ」を読んでいた。公安警察の騙しあいとも言える活劇を楽しませてもらった。
その縁で、『アゲハ』という原麻希シリーズの第一作目を読んでからずっとご無沙汰になっていた本シリーズを思い出した。
原麻希シリーズの第二作目『スワン』は、奈良県の過疎村が主な舞台だ。警視庁の鑑識課に所属する原麻希が、なぜはるばる東京から奈良まで出張捜査するのかは読めばわかるが、一鑑識課員が他の所轄(それも関西の奈良!)に出張捜査することは、現実にはあまりないだろう。冷静に考えるとそのあたりに違和感があるはずだが、読んでいるとそうした違和感はあまり意識せずに読めてしまう。
原麻希は、奈良に出張するのみならず、そこで誘拐事件の身代金受け渡し役まで仰せつかることになる。管轄外の一鑑識課員に簡単に受け渡し役を担わせることも普通にはないことである。原麻希シリーズは、少なくとも本作は、こうしたやや強引な展開があることは否めない。
一作目の『アゲハ』でも感じたことであるが、本シリーズは、本質的にエンターテイメント小説だと考えている。これを本格ミステリーだとか、警察小説だとか、そうしたいささか仰々しい冠をつけると、上述の違和感が目につき始めるような気がするのである。
エンターテイメント小説と捉えることで、読み手も受け入れ可能な設定の間口を大きくすることができる。私見ながら、原麻希シリーズを大いに楽しむために、この姿勢は意外に大切なことではないか、と考えている。
一作目で原麻希たちが追ったテロ事件の残党が、本作でも暗躍する。原麻希たちが奈良県に出向くのも、そこに関係する。誘拐事件を追ううちに、殺人事件が発生したり、展開はめまぐるしい。いかにも関西の「おばちゃん」然とした女性刑事が出現したり、典型的な組織からのはみ出し者の刑事が登場したり。あたかもそのために舞台を関西にしたのではないかと思うほど、キャラクターが立っている。彼らが関西弁でまくしたてるやり取りも、物語の疾走感に一役買っているような気がする。
いくつかの事件は、最初は一見独立しているように見えるが、やがてそれらの接点が見えてくる。この手の物語の定番だが、最後は一つの物語として収れんする。その過程が、パズルがぴたりとはまるように、美しく組みあがるかが作家の腕の見せどころである。
本作は、その点では成功している。物語の展開がやや強引に見える部分はあるにせよ、先に述べた通り、本作がエンターテイメントであるという前提に立てば、物語自体が破綻しているわけではない。
伏線はきちんと回収され、物語が一つの最終地点に向かって収れんする様は、読んでいて快い。同時に、物語の終盤で、オセロゲームをするがごとく展開が二転三転するところも楽しい。いったい真相はどこにあるのだ、と訝しみつつ読み進めることになるが、それが結果として最後まで物語を楽しむための仕掛けになっている。
エンターテイメントとして一級であることは間違いないだろうが、同時に十分に計算し尽されたミステリー小説でもある。しばらくこのシリーズを楽しむ時間が過ごせそうである。
Posted by ブクログ
背望会リクルーターの調査の為に奈良へ向かう原麻希。そこで知事選候補者が誘拐され、身代金の運び人に麻希が指定され…
夫が帰ってきたものの、7年も離れていた為に家族との距離があり、ぎくしゃくしてしまうのも無理ない気がしました。
しかも、大阪府警の捜一刑事・嵯峨美玲に目の敵にされ、やり方が汚くてイラッとしますね。
そして、せっかく追い詰めたのに微妙なラストになってしまい、なんとも言えない気分でした。
更に、菜月にリクルーターの魔の手が伸び始め、麻希の安らぐ時がないのが心配になりました。
グッド👍
原麻希シリーズ2作目。やっぱりおもしろい。
スピード感ある内容で、前作同様一気に読み終えました。
複雑に絡み合う人間関係とそこに潜み発生する事件。そして、その隙間に入り込む神出鬼没の背望会リクルーターと麻希達の攻防。
劇画タッチのストーリー展開で、ハラハラドキドキの場面に思わず笑っちゃう家族の揉め事を絡めていたり、そんな刑事いる?と思う様な関西のオバちゃんやオジさんが登場したりとクールになりすぎないところもこの作品の良いところ。
リクルーターってもしかして麻希のストーカー⁉︎ と思ってしまうほど彼が麻希に固執するのは何故?
麻希の家族の今後の展開はどうなるの?
などなど気になるところがまだまだいっぱい。
次作にも期待大です。
Posted by ブクログ
文庫本を1冊ひと晩で読み切る集中力が、まだ私に残っていたとは。前作に続き個人的妄想キャスティングをします。嵯峨美玲;渡辺えり、吾川順次郎;國村隼、再登用、だって現実にどんな役でもできる役者さんたちだし、ちょっとトシが行き過ぎているがイメージで。櫛田信正;役者じゃないけど橋下徹、須崎八太郎;平松邦夫。てかこのふたりがモデルなんじゃね? だとしたらスゴい死に様で、現実の彼を見ると笑ってしまいそうだ。加賀美勇作;宮藤官九郎、南条リリス;美保順、香取昭雄;阿部サダヲ、吾川母;宮本信子。『あまちゃん』の影響を大分受けているなァ。その他は、イメージが浮かぶ前に読み終わってしまった。あと、前作に戻るけれど、関谷眞一;甲本雅裕に変更。(2013-07-13L)
Posted by ブクログ
事件はいくつもあり、全てが最後に繋がる。
被害者と思われていた人物が実は加害者であったり、夫婦の絆を感じたと思ったらあっけなく裏切られたりと後半は中々の読み応えであった。
リクルーターの企みらしきものも最後には見え隠れし、次作への期待も抱かせる。