あらすじ
ジェノバの少年マルコが母親を捜して遠くアンデスの麓の町まで旅する「母をたずねて三千里」の原作を収録。どこの国でも、いつの時代でも変わらない親子の愛や家族の絆、あるいは博愛の精神を、心あたたまる筆致で描く、デ・アミーチス(1846-1908)の代表作。世界中の人びとに愛読されつづけてきたイタリア文学の古典的名作の新訳。改版
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Posted by ブクログ
本書のタイトルにもなっている、クオーレ・Cuoreと言うイタリア語の意味を調べてみましたが、心と言う意味以外に、胸中、情愛、優しい心情、思いやり、良、気分、気持ち、勇気、やる気、元気、などの意味のある言葉とありました。
19世紀のイタリアの状況と比較して、必ずしも今の世の中において正しい価値観ではないかもしれませんが、本書で書かれている心のあり方すべてが否定されるべきものでもないと思います。
大人になったら今だからこそ忘れがちな、大人から子供に対する愛情や敬意、世の中に奉仕してくれている人への敬意などのクオーレを思い出すことができました。
Posted by ブクログ
「ぼくがいく、アメリカへ、かあさんをさがしに」マルコ13歳、名作アニメ『母をたずねて三千里』の原作を収録。
小学3年の少年が1学年の学校生活を記した日記をベースに、愛国心や博愛などについて説いた児童向けの読み物、という体裁。新学期の10月から翌年7月まで正味9ヶ月間の物語のなかに、教訓的かつ心温まる?両親からのメッセージや、毎月1話ずつ先生からの紹介として「今月のお話」などが挿入される。
徹底した「愛」の精神、ハートフルな世界観。学校ものらしく個性的な先生や児童の面々とぶつかり合いながら、家庭では親子の絆を深めつつ、10歳の少年が成長していくという流れ。また一方で、当時のイタリアの生活における貧困や病気、戦争などといった背景にあるものも透けて見える。
素晴らしい愛の物語、といえばその通りだが、読み終えてどうも釈然としない感じが残るのは、やはりあまりにも「愛と善意」の押し付けが過ぎるせいだろう。愛国心に関しては特にだが、感動をあおる美談というのは一歩間違うと洗脳につながる危うさがあるのではないか。全体的に今の時代にはそぐわない感覚が強く感じられる。とにかく端的にいえば「説教くさい」のだ。とはいえ、もちろん本質をちゃんと見極めれば、本書から学ぶものは多い。
「今月のお話」として毎月1話紹介される短編の感動エピソード。アニメで有名な『母をたずねて三千里』(本来は“アペニン山脈からアンデス山脈まで”というタイトル)はその中の一つ。別格に長く中編に近い作品になっているこのお話は、本作中の白眉であり、これだけで本書全体の価値を高めているといえる。アニメ版は概要を知っているだけでほとんど見ていないため比較はできないが、とにかく夢中で読んだとだけ言っておこう。
美談の寄せ集めともいえる本作。素直に心洗われるか、説教くささに鼻をつまむかは読者しだいだ。