【感想・ネタバレ】百年泥(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

豪雨が続いて百年に一度の洪水がもたらしたものは、圧倒的な“泥”だった。南インド、チェンナイで若い IT 技術者達に日本語を教える「私」は、川の向こうの会社を目指し、見物人をかきわけ、橋を渡り始める。百年の泥はありとあらゆるものを呑み込んでいた。ウイスキーボトル、人魚のミイラ、大阪万博記念コイン、そして哀しみさえも……。新潮新人賞、芥川賞の二冠に輝いた話題沸騰の問題作。(解説・末木文美士)

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

⚫︎感想
設定が大変おもしろかった。著者も主人公も日本語教師ということで、マジックリアリズムに、リアリズムがより濃く感じられた。なんでもありのインドならこんなこともありそうだ…というインド、チェンナイで大洪水のあと、川底にあった百年積もり積もった泥。泥の中から引きずり出される人、物、自らの人生、様々な人々の人生の記憶。本作は橋の片側から片側へ渡る間に主人公が現在過去未来に様々な物や人を通して輪廻を感じるが重たいそれではなく、「どうやら私たちの人生は、どこをどう掘り返そうがもはや不特定多数の人生の貼り合わせ継ぎ合わせ、万障繰り合わせの上かろうじてなりたつものとしか考えられず…」という諦観の軽やかさが通底している。なんでもあり、だけど現実的なところもあるこの小説、私は好きだった。



⚫︎本概要より転載
豪雨が続いて百年に一度の洪水がもたらしたものは、圧倒的な“泥"だった。南インド、チェンナイで若い IT 技術者達に日本語を教える「私」は、川の向こうの会社を目指し、見物人をかきわけ、橋を渡り始める。百年の泥はありとあらゆるものを呑み込んでいた。ウイスキーボトル、人魚のミイラ、大阪万博記念コイン、そして哀しみさえも……。新潮新人賞、芥川賞の二冠に輝いた話題沸騰の問題作。

0
2024年11月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

南インドのチェンナイで働く日本語教師。行き当たりばったりで胡散臭いけど、不思議と親近感が湧いてくる。
連想ゲームみたいに数珠繋ぎに話が展開されるのが面白くてどんどん読み進める。彼女の物語であって彼女だけのものではないそれらが波のようにうねる。
実話のようなトーンで、有る事無い事ごった煮の世界なんだけれど、悲しい過去も思い出も一切を包み込む懐の深さを感じた。
ガネーシャと招き猫の共通点や、インドの名誉殺人と日本の敵討ちを見比べたりしていたら、そう遠い話でもない気がしてきた。
無口というのを通り越した無言の母と旧友の話は、なんだか美しくて切なくて聞き入ってしまう。「ことば」のない心が繊細に描かれていて、そんな静かな世界をかつて共有してきた主人公の話をもっと聞いていたかった。誰になんと言われようと、「話されなかったことば、あったかもしれないことば」を大事にしてほしいと思った。
無数の人生が埋まった百年泥に私も埋もれているかもしれないと思ったら楽しい。個人でなく誰かの記憶や過去のひとつとして、ただの生命として、地球に飲み込まれたら面白いな。

0
2022年11月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

不思議なお話なのだけど、現実的な部分は本当にリアルで、ファンタジーな場面もすべて
「インドなら本当にあるかもしれない」と思ってしまった。そしてあとがきに同じ感想が書かれていた。
大阪の招き猫とインドのガネーシャがすべて交換された街並みは実際にそうなったら面白いと思うし、インド人の登場人物がマクドナルドを「マクド」と言っていて、関西人のインド好きが多いのはとてもリアル。

インドの不思議さや、インド人の純粋さ、おおらかさ、嫌味な賢さ、日本語の間違え方など、本当にリアルで笑った
デーヴァーラージの過去、人となりは胸にグッとくるけど、悲しいとか、可哀想とか、そういう気持ちではなく、それを抱えて生きる彼のたくましさに惹かれた
そして、泥とともに出てくる人々の過去、その過去は後悔が絡んでいるもので、言葉にできなかった気持ちを伝えあう
そんなことがインドでは起こるかもしれない
そして、インドはやっぱり最高なのだ


0
2021年02月19日

「小説」ランキング