あらすじ
いじめはなぜ蔓延するのか? 画期的理論をうちたて注目される〈いじめ研究〉の第一人者が、学校でのいじめ問題の本質を平易に語る。第1章 「自分たちなり」の小社会 / 第2章 いじめの秩序のメカニズム / 第3章 「癒し」としてのいじめ / 第4章 利害と全能の政治空間 / 第5章 学校制度がおよぼす効果 / 第6章 あらたな教育制度 / 第7章 中間集団全体主義
逃げ出すことのできない恐怖と絶望と悪意の世界=いじめはなぜ蔓延するのか? 画期的理論をうちたて注目される〈いじめ研究〉の第一人者が、学校でのいじめ問題の本質を平易に語る。
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Posted by ブクログ
普遍的な現象としてのいじめを構造的に示し、構造的な苦しみに着目したやり方で現状を克服することを提示している。
人がどうして残酷な行動に至るのか、構造的に理解することができた。
26
生徒も教師も「学校的」な秩序を生きているだけ
29
生徒たちは自分たちなりの「よい」「悪い」を体得しておりそれにかなりの自信を持っている
32
希薄かつ濃密な人間関係
秩序の生態学的布置
34
秩序の生態学モデル
あるタイプの秩序と現実感覚が、他のタイプの秩序と現実感覚を圧倒し、突出している
35
群生秩序
=いま・ここのノリをみんなで生きるかたちがそのまま畏怖の対象となり、よしあしを分かつ規範の準拠点になるタイプの秩序
36
群生秩序⇔普遍秩序
=その場の雰囲気を超えた普遍的な理念やルールに照合してよしあしを分ける秩序
〜41
群生秩序に従えばノリを外した浮いている者が悪い
普遍的ヒューマニズムは悪い
人権、個の尊厳、チクリ… は悪い
42
(普遍秩序において犯罪者をこらしめるべきと思う感覚と、群生秩序においてノリを外した浮いている者をこらしめるべきと思う感覚は同じなんだろうなぁ)
身分関係が決まっており、下の身分の者が笑っているだけで悪い。身の程をわきまえろ、ムカツク、ジコチュウ。
47
みんなの関係が第一次的にあり、個人はその第二次的な項として関係規定的にある。
その場の空気を読んで集団に同調することが唯一の規範である学校共同体では個人の責任などという事態は生じ得ない
52(コラム)
筆者によるいじめの定義
「社会状況に構造的に埋め込まれたしかたで、かつ集合性の力を当事者が体験するようなしかたで、実効的に遂行それた嗜虐的関与」
58
学校の集団生活によって生徒にされた人たちは集合的な場の情報により内的モードが別のモードに切り替わる
市民的交際というモードから、いじめが止められないというモードに変換してしまう
モードの変換は連鎖しループが生じる
68
暴力集団のむかつき
漠然とした存在論的な不全感
暴力によりかたちを与えられる全能感によりむかつきから守られなんでもできる気分になる(全能感)
↑心理システム(認知情動システム)が誤作動(暴発)を起こしている
70
暴力の全能感と暴力を中心に群れて響き合う全能感によるサイクル
→内的モードの転換
不全感と全能感の心理社会的なサイクル
76
他者コントロールによる全能
思い通りにする快感
教育や世話のもとでも行われる
78
被害者の悲痛により他者を思い通りにする全能欲望が現実化することがいじめの全能筋書
117
「タフ」に耐えることでみじめな自分を否認する被害者
いじめはやっても大丈夫な利害構造に支えられている
仲間と仲良くする選択しかなく、強制的に濃密な関係を強いられている
185
制度、政策的なマクロ環境によって群生秩序が形成されている
202
暴力←利害と場の情報の効果により法を入れる政策が効果を持たす
213
ひとつの透明な社会(コスモス)が強制される苦しみと比較して自由な社会で強制されるのはなじめないものの存在を許す我慢(寛容)だけ
230
内部評価により教師が誇大気分になる
様々なスタイルの学習サポート団体が地域に林立すれば良くない教員が淘汰される
235
大切なのは、魅力の幸福感を指針とする試行錯誤の結果に応じた生のスタイルを生きやすい生活環境が用意されていること。
238
利害構造と全能図式が一致すると悪ノリが蔓延しエスカレートする危険性が高い
243
全体主義は単なる外形的な服従にとどまらず、人間存在の根底からの、全人的なコミットを人々に無理強いする
252
大切なことは、群れた隣人たちが狼になるメカニズムを研究し、そのうえでこのメカニズムを阻害するような制度、政策的設計を行うことだ
258
トクヴィル
風習の方が法律よりもはるかにきびしかった
262
大切なことは
中間集団全体主義社会と名前をつけること
構造的な苦しみの諸相を明るみに出すこと
Posted by ブクログ
端的に言えば何をやっても許されるという空間や雰囲気というものが個人の内的モードを相手をコントロールしたいという全能感モードに変更して、この全能感のもとに暴力性が露出する、という趣旨の本。(雑)
著者の造語が多く出てくるが、よく説明がなされているのでかなり読みやすいと個人的に感じた。
Posted by ブクログ
「いじめ」が発生するメカニズムについて、学校での事例を中心に分析し、それに対する対策を論じた本。
本書はいじめの根本的な要因は、「空気を読むこと」や「ノリの良さ」が支配する「学校的な秩序」であると指摘する。学校のようにベタベタした人間関係を求められる場所では、普遍的な論理よりもその場のノリが重視されるためである。そうした秩序を乱す者に対する不全感やむかつきが、秩序を安定させる者をして群れて暴力を行使させる方向に導く。
他にも「癒しとしてのいじめ」というものもある。それは「自分はいじめを耐えぬいてタフになった」という自己肯定感を得るために、いじめを再生産するというものである。かつてのいじめられっ子がいじめっ子になるというものである。
対策としては
・学校の法化(暴力的いじめには警察で対応)
・「学校的な秩序」を作り出している学級制度、推薦入試の廃止
・特定の生き方が共通善とならない「自由な社会」の達成
・学ぶ内容を教科的、技能的、道徳的な分野に分けた上で、すべての子供に国家試験を受けさせ、合格した者に卒業認定をする
といったもの。ドラスティックすぎて少々受け入れにくい感じがする。全体的には面白く読めたが。
Posted by ブクログ
「閉鎖空間でベタベタすることを強制する学校制度」(第5章1節タイトル)
これを読んで、大学進学以降、中高時代の友人が「あの頃に戻りたい」というたびに「絶対にいやだ」と言い続けてきた理由がわかりました。
「みんな」で「仲良く」が求められること、同一同進度を求められることが苦痛でたまらなかったんだろうなぁ…。
もちろん、そういう環境が好き・いいと思う人はいるだろう。しかし全員がそうであるとは限らないのである。
「学級制度をやめる」ほか、様々な提案(実現は難しそう)があった。
「治外法権」をやめ、何かあれば「警察」を呼ぶというのは徹底されてほしいなぁ…。いじめることが損である、というメッセージは大半のいじめを落ち着かせることができるような気もする。
また学級制度やそうでない形を学ぶ側が選べる形になってほしいとも思う。