【感想・ネタバレ】いじめの構造-なぜ人が怪物になるのかのレビュー

あらすじ

いじめはなぜ蔓延するのか? 画期的理論をうちたて注目される〈いじめ研究〉の第一人者が、学校でのいじめ問題の本質を平易に語る。第1章 「自分たちなり」の小社会 / 第2章 いじめの秩序のメカニズム / 第3章 「癒し」としてのいじめ / 第4章 利害と全能の政治空間 / 第5章 学校制度がおよぼす効果 / 第6章 あらたな教育制度 / 第7章 中間集団全体主義


逃げ出すことのできない恐怖と絶望と悪意の世界=いじめはなぜ蔓延するのか? 画期的理論をうちたて注目される〈いじめ研究〉の第一人者が、学校でのいじめ問題の本質を平易に語る。

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面白かった。
いじめを発生させる心理的構造や、学校という環境の特殊さを説明した後に、より良い教育環境について提案していた。
何より、作者の言い回しや思考回路が自分に心地よくフィットした。
何度も読んでいきたい。

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2022年03月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

普遍的な現象としてのいじめを構造的に示し、構造的な苦しみに着目したやり方で現状を克服することを提示している。

人がどうして残酷な行動に至るのか、構造的に理解することができた。



26
生徒も教師も「学校的」な秩序を生きているだけ
29
生徒たちは自分たちなりの「よい」「悪い」を体得しておりそれにかなりの自信を持っている
32
希薄かつ濃密な人間関係
秩序の生態学的布置
34
秩序の生態学モデル
あるタイプの秩序と現実感覚が、他のタイプの秩序と現実感覚を圧倒し、突出している
35
群生秩序
=いま・ここのノリをみんなで生きるかたちがそのまま畏怖の対象となり、よしあしを分かつ規範の準拠点になるタイプの秩序
36
群生秩序⇔普遍秩序
=その場の雰囲気を超えた普遍的な理念やルールに照合してよしあしを分ける秩序
〜41
群生秩序に従えばノリを外した浮いている者が悪い
普遍的ヒューマニズムは悪い
人権、個の尊厳、チクリ… は悪い
42
(普遍秩序において犯罪者をこらしめるべきと思う感覚と、群生秩序においてノリを外した浮いている者をこらしめるべきと思う感覚は同じなんだろうなぁ) 

身分関係が決まっており、下の身分の者が笑っているだけで悪い。身の程をわきまえろ、ムカツク、ジコチュウ。
47
みんなの関係が第一次的にあり、個人はその第二次的な項として関係規定的にある。
その場の空気を読んで集団に同調することが唯一の規範である学校共同体では個人の責任などという事態は生じ得ない
52(コラム)
筆者によるいじめの定義
「社会状況に構造的に埋め込まれたしかたで、かつ集合性の力を当事者が体験するようなしかたで、実効的に遂行それた嗜虐的関与」
58
学校の集団生活によって生徒にされた人たちは集合的な場の情報により内的モードが別のモードに切り替わる
市民的交際というモードから、いじめが止められないというモードに変換してしまう
モードの変換は連鎖しループが生じる
68
暴力集団のむかつき
漠然とした存在論的な不全感
暴力によりかたちを与えられる全能感によりむかつきから守られなんでもできる気分になる(全能感)
↑心理システム(認知情動システム)が誤作動(暴発)を起こしている
70
暴力の全能感と暴力を中心に群れて響き合う全能感によるサイクル
→内的モードの転換
不全感と全能感の心理社会的なサイクル
76
他者コントロールによる全能
思い通りにする快感
教育や世話のもとでも行われる
78
被害者の悲痛により他者を思い通りにする全能欲望が現実化することがいじめの全能筋書
117
「タフ」に耐えることでみじめな自分を否認する被害者

いじめはやっても大丈夫な利害構造に支えられている

仲間と仲良くする選択しかなく、強制的に濃密な関係を強いられている
185
制度、政策的なマクロ環境によって群生秩序が形成されている
202
暴力←利害と場の情報の効果により法を入れる政策が効果を持たす

213
ひとつの透明な社会(コスモス)が強制される苦しみと比較して自由な社会で強制されるのはなじめないものの存在を許す我慢(寛容)だけ
230
内部評価により教師が誇大気分になる
様々なスタイルの学習サポート団体が地域に林立すれば良くない教員が淘汰される
235
大切なのは、魅力の幸福感を指針とする試行錯誤の結果に応じた生のスタイルを生きやすい生活環境が用意されていること。
238
利害構造と全能図式が一致すると悪ノリが蔓延しエスカレートする危険性が高い
243
全体主義は単なる外形的な服従にとどまらず、人間存在の根底からの、全人的なコミットを人々に無理強いする
252
大切なことは、群れた隣人たちが狼になるメカニズムを研究し、そのうえでこのメカニズムを阻害するような制度、政策的設計を行うことだ
258
トクヴィル
風習の方が法律よりもはるかにきびしかった
262
大切なことは
中間集団全体主義社会と名前をつけること
構造的な苦しみの諸相を明るみに出すこと

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2020年02月17日

Posted by ブクログ

今までのいじめの実態から、いじめのメカニズムを導き出すことによって問題点を明らかにし、解決策を提言している。特に、いじめのメカニズムは詳細かつ論理的で、説得力がある。著者によると、いじめは、ほとんど集団で行われるが、集団内のノリを重んじることが秩序となり、場の雰囲気(付和雷同)によっていじめが起こる。ノリで響きあうみんなの空気は集団の秩序の根幹であり、人の命よりも大きな存在となっている。空気を読めない者は、「ジコチュウ(自己中心的)」で「悪い」。だから痛めつけられると一例を示している。
 解決策についても、抜本的に現在の教育制度を改革し義務教育にしばられず自由に教育機関を選択できようにすべきとの著者の意見に全く同意する。昼間は学校で適当にやり、夕方から深夜まで塾や家で猛勉強する優等生には、昼間の義務教育が全く無駄になっているし、内申により受験で足を引っ張られている。いくら日教組ががんばっても、現在の日本の教育制度では、日本の将来に光明は見えず、もはや制度疲労も限界であろう。
 最後に全体主義についてであるが、現在でも様々な組織(企業、スポーツチーム)で強力なチームワークが必要とされており、社会主義的なあるいは全体主義的な強制を必要とすることもあることから、一概に著者の意見は理解できるものの疑問もある。全体主義であれば秩序維持は厳格であるし、そういった組織が強い(犠牲者もあるだろうが)ことも確かだからだ。いずれにしても、いろいろ考えさせられる、極めて読み応えのある一冊であった。

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2018年12月08日

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いじめの問題を、ただ単に、加害者、被害者の問題としてではなく、社会制度のあり方、組織の中の人間行動の本質まで踏み込んでいる点に、目から鱗が落ちた。

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2018年10月22日

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学校のいじめを社会モデルの形態そのものが引き起こす「メカニズム」としてとらえた社会学的考察本。著者の提唱する、国家より下位にある「中間集団全体主義」における「群生秩序(その群の論理)」がいじめの発生源であるから、その秩序を一般社会の「市民秩序」などの導入で、脱構築してしまえばいじめはなくなる、という論理は、報道や身近な見聞で耳にする「いじめ」の話題に触れるたびに思うことだが、一般感覚からいって、不思議な思考がまかりとおり、容赦ない人間関係が強要され、法律の手が届きにくいという学校という構造の特殊さを思えば、おそらく大半の人は納得がいくのではないかと思う。問題は、著者がいうように、その「共同体主義的な理念」は、学校だけにあるものではなく、市民の社会にもあり、(これは自分の個人的な意見だが)おそらく日本人にとって少なからず「好感のもてる理念」であるということだ。まずはそういった社会の仕組みや、そういった仕組みを取り入れたいと思う心性についてよく知ることが大切だと思う。

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2014年03月23日

Posted by ブクログ

学校のいじめに限れば、学校に行かないという選択肢を親が子供に与えない限り、学校という閉鎖社会から子供は逃げられないし、逃げ場がないから自死に逃げるという事が多々起こっているのではないか。

この本からは、生きる為に選択肢を出来るだけ多く持つ重要性を教えてくれるし、選択肢が多い社会こそが、最大のセーフティネットだとも感じさせてくれた。

この本の内容は、学校だけではなく、閉鎖的閉塞的でローカルルールが蔓延する集団に大抵適用できる有用なものだろう。

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2014年01月26日

Posted by ブクログ

「いじめの社会理論」と90%同じ内容。その意味で、オリジナリティはないが、表現、章立てが、かみ砕いた、分かりやすい、読みやすいものになっている。

どちらか読んだらいいと思う。
学術書としては、「社会理論」。手っ取り早い理解としては、本書で。

面白かった点。
・法には、人を市民社会に連れ戻す「解除キー」としての働きがある。
・押しつけがましい設計主義的な教育でなく、自由な社会のための生態学的な設計主義を。
・「あとがき」全て。

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2012年10月26日

Posted by ブクログ

[ 内容 ]
学校や社会からこの苦しみが消えない理由とは?

[ 目次 ]
第1章 「自分たちなり」の小社会
第2章 いじめの秩序のメカニズム
第3章 「癒し」としてのいじめ
第4章 利害と全能の政治空間
第5章 学校制度がおよぼす効果
第6章 あらたな教育制度
第7章 中間集団全体主義

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2010年11月20日

Posted by ブクログ

ほんとに興味深いし読んでよかった

正直内容を全てを理解できてる訳じゃなくて7割くらいの理解だけど満足感ある。より解像度を深めたいから2回目を見る予定。
2009年刊行の本だから今の時代といじめの感じ違うだろうなって正直そこまで期待してなかったけど現代でも全然参考になる。
題名の通りいじめの構造がかかれていて
なぜ人間はいじめるのか?
いじめられた人間はいじめ側に回ってしまうのか?
など納得と説得力のある言葉、論理でかかれていた。
良本

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2025年12月19日

Posted by ブクログ

“いじめ“という事象のパターンや人間心理、構造的な発生要因まで踏み込んで分析する優れた本。“いじめ“そのものは卑劣で全く肯定されないが、誰しもがそう感じる存在が何故なくならないのか。進化人類学的にも色々言えそうだが、本書が強調するキーワードは“群生秩序“。

言い換えると、その場の仲間意識やノリといった空気感。もう少し掘り下げるなら、自己保身や相互安全保障を求めた振る舞い。

異物は排除せよ。弱者を保険として安全領域を確保して、捕食の対象として捧げよ—— そんなサディスティックな本能により行われる“いじめ“の実例は、胸糞悪い。

ー 「あの家がおかしかったので学校が騒がれて迷惑ね」と言いながら署名を集め、事件の当事者を孤立させていくのがいわば学校の常套手段である。

こんな事許されて良いわけがないのだが、虐められて自殺した家族が、加害者や学校などの保身により二次被害にあう。教師側も無法化を許している。学校内は警察権が及ばないローカルの秩序で動き、それが腐敗の温床になる。

“いじめ“は最低だ。気の利かない対象者への陰口で盛り上がったり、自粛警察が群がったり、ネットの炎上みたいなものも同質の現象だという気がする。最低な事例を盛りだくさん紹介する胸糞本だが、しかし、研究対象が酷いのであって、本書は素晴らしい。

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2025年11月27日

Posted by ブクログ

職場のいじめを目にしたことがあり、なぜそうなるのかを知る手掛かりとして読んでみました。

閉鎖空間ではある一定の人間関係の力学が働き、成熟した大人でさえも、場合によってはその構造に沿ったいじめ行為に参加することがあるかと思います。その構造を大まかにでも知っておけば、そうした職場を避けることができるかなと。

本書はその構造を知る良書だと思いました。

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2025年11月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

端的に言えば何をやっても許されるという空間や雰囲気というものが個人の内的モードを相手をコントロールしたいという全能感モードに変更して、この全能感のもとに暴力性が露出する、という趣旨の本。(雑)
著者の造語が多く出てくるが、よく説明がなされているのでかなり読みやすいと個人的に感じた。

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2023年01月27日

Posted by ブクログ

前半は、いじめの構造の説明。
  「ノリは神聖にして侵すべからず」とかよくわかった。全能感からいじめを説明しようとしてる点もかなり納得できた。いじめられてタフになったやつがタフを他人に求めるとかの説明もよかった。
後半は、だからどうしよう、という提案なんだけど、正直前半を読み物として読んでた(データとかはない)から、実際によいわるいの判断ができない。

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2018年12月01日

Posted by ブクログ

大変な名著。学校のいじめを通じて普遍的ないじめ、つまり「人間が人間にとっての怪物になる心理ー社会的メカニズムである、普遍的な現象としてのいじめ」の構造を分析し、そのようないじめが生まれないための構造の作り方(制度設計論)を提案している。短期的な教育制度改革論から、中長期的な社会構想まで論じられている。その構想はリチャード・ローティの「リベラル・ユートピア」に通じる。

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2017年01月04日

Posted by ブクログ

いじめという局所的な事象の構造を明らかにするだけでなく、私達が暮らす社会に内蔵する中間組織的全体主義について言及した非常に感銘を受ける良書であった。教育関係者には一読することを勧める。

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2015年07月25日

Posted by ブクログ

戦争中の大人、水槽に閉じこめられたメジナは市民性を失い、いじめを行う。
いじめは中学生を中心に起こっているものと捉えるのではなく全ての人間が「豊さ」を獲得するために考えるべきことではないだろうか。
具体的な教育制度改革には一部賛成、一部反対という感じだ。

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2014年10月13日

Posted by ブクログ

タイトル通り、いじめを構造的に捉える試みは、非常にためになる。
また、歴代の陰惨ないじめの実例は、改めて読むと、本当にこんなことが起こるんだという、衝撃を受けた。
ただ多くの子ども達が、潜在的にはその要素をもっていようとも、それをきちんとコントロールして逞しく生きてることも、忘れてはならないと思う。

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2013年05月18日

Posted by ブクログ

この手の本は、難しくなり途中で投げ出してしまうことが多いのだが、この本はすぐ読み切ることができた。
いじめというのは大人からしたらなぜ起こっているのか意識しにくいものである。それは、子どもたちと大人の社会構造が根本的に違うからだ。という観点から、筆者はいじめの構造についてわかりやすく伝えてくれる。環境が変われば人は変わってしまうということと、環境の大切さを肝に命じておきたい。
筆者は学校という空間の独特の環境のメカニズムについて、言葉でわかりやすく説明してくれた。そして人は言葉で表現できないモヤモヤとしたものには対処しにくいが、言葉で表現されているとそれに対して動くことができる。いじめの構造についてモヤモヤとしている人はこの本を読み一度言葉として自分の中に整理するのもいいかもしれない。

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2013年01月29日

Posted by ブクログ

いじめには暴力とコミュニケーション操作系があり、それはどこでも起こりうる

そのリスクを少しでも減らし、逃げ道を確保することが必要

その点、学校について見れば、「学級単位の区割り」や「強制参加」を排すべきで、具体的には「移動教室中心」の授業への切替や部活への強制参加廃止といったように交友関係的な「縛り」を取っ払い、より自由な振る舞いをすることができるようにすることが大事と考えさせられた。


ちなみに、筆者の提案全てに賛成はできないが、筆者提案の最低限の教育の中身である「身を保つために必要な法律と公的機関の利用法」には賛成。

また教育バウチャーについても「教育の機会均等」という理念に関しては賛成。

まとめると、どんな規模の社会も「逃げ道」と「自由」がなければ壊れるということ。

さらにいえば、専門家でもない首長等が教育に口を出すべきではないが、聖域化された「部分社会の法理」を突き通せば必ず問題は起きる。

せめて、「いじめ」ではなく、「刑事事件」として扱うべき。

学問の自由と警察の関係は「治安維持法下で思想が侵されたような時」にしか問題にすべきではない。

そして、いじめを見つけることが人事考課上「マイナス」ではなく、見つけて解決することを「プラス」とすべき

メモ
いじめをやめるとき
学校的秩序が市民社会の秩序に触れ、もはやその秩序が維持できないと分かった時

学校的秩序(群生秩序)
善悪の基準は流動的⇔善悪の基準は普遍的(市民社会の秩序)

⇒ノリに乗るか反るかが人倫の要

※仮にけがをしようが、人が死のうが「ノリに従っていれば」正当化され、個人責任といったものは発生しない

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2013年01月20日

Posted by ブクログ

タマフルの推薦図書にあったので手に取った。
途中小難しいところがあったけどさくっと二日で読み終わった。もう一回読み返そうかな。
教育に関する本かと思ってたけど、読み進めてるうちに学校だけじゃなくて色んなところに応用できそうな話に移ってて面白かった。twitterとかでも群生秩序な人いるよね。
義務教育ほど多くの人が共有してる体験はないし、つい中学のころとか思い出しちゃうね。
多分これから電車とかではしゃいでる中学生とか見ると複雑な目で見てしまうだろうなー。

いじめ関連の本から幾つか引用があって、結構メンタルを削られるのである程度覚悟して挑まないとびっくりするはず。

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2012年11月15日

Posted by ブクログ

いじめは群生秩序という学校空間における特殊な秩序が原因で発生する。
この秩序により、社会通念上の常識が通用しない空間が出来上がる。

この空間を破壊するための施策として、
学校内治外法権を廃し、通常の市民社会と同じ基準で法に委ねる事が重要である。例えば、暴力行為は学校内だけで処理せず、警察に通達し、法に照らし合わせる。
そして、学級制度を廃止することで、「みんな仲良く」しなければならない状況を打破する。これにより、シカトや嘲笑などのコミュニケーション系いじめから逃げることができる。

また、中長期的政策として、新しい教育制度を提案している。
これは、学習者が自由に学校支援団体(∈学校)を選ぶという、学校選択制の考え方を肯定している。

このように筆者の論調は、強制的に作られた共同社会によって、いじめが発生するというものだが、昨今話題の"絆"を軽視しているわけではない。(警察との連携など)
ただ、消費者が自由に教育機関を選択するという考え方は、個人主義的で消費社会主義的すぎる。
ここは賛否が分かれるところだが、個人的にはやや反対。
生徒は顧客ではない。教師と生徒は明確な上下関係があるべきである。

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2012年10月30日

Posted by ブクログ

むかし、私の息子が生活しにくい特徴があると診断された時におもったのが、
そのころ読んだ重松のナイフという短編に書かれてあるフレーズが
心にささりずっと私もずっとそう願ってきました。
”生きることに絶望するような悲しみや苦しみには、決して出会わないように。 甘い父親だと笑われても、我が子に望むものはそれ以外に思いつかなかった。 ”
この本の内容はすごく赤裸々で胸の奥にどす黒い塊を感じたり、吐き気がしたり震えがでるような内容もありましたが、真実をよく分析し伝えていると思いました。
いじめの根本は、学校という、異質な他者と長い時間べったり密着させられる環境が要因であり、その異質な環境の下で発生する異質な秩序(ノリとこころを最も重みを持つローカルな幼児的で狡猾な秩序)が原因。

いじめへの中期的な改善方法として、
(1)学校内のことでもきちんと法に委ねる。
(2)コミュニケーション操作系のいじめには学級や学校への囲い込みを廃止し自由な交友関係を試行錯誤できる場を提供する。
というのもよくわかる。

でも、息子のようにコミュニケーション操作系のいじめ(いやがらせや無視悪口陰口など)を見過ごせない、ほっとこうと逆に無視することができない性質をもっているような人はどうすればいいのか?
中長期的な社会としての是正策もわかるけど、今実際に被害を受けて自己を破壊せざるを得ない状況になっている被害者は具体的にどうすればいいのか?
もっと具体的な策を提示してほしかったという感じもあります。
でも、学校という幻想世界を神聖化して考えるのではなく、多様性を認めてそのうえで、必要であればとことん逃げても、息子は守ってやろうと思いました。

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2012年09月21日

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いじめの構造について徹底的に論理的に分析を試みている.
「大切なことは、群れた隣人たちが狼になるメカニズムを研究し、そのうえでこのメカニズムを阻害するような制度・政策的設計を行うことだ.」と述べ、その構造の分析や処方箋を提供している.
子供の世界のみならず、大人の世界にも通用する論考.
子供のいじめには、(1)学校内のことでもきちんと法に委ねる.(2)コミュニケーション操作系のいじめには学級や学校への囲い込みを廃止し自由な交友関係を試行錯誤できる場を提供する.
この2点が大切だとわかった.

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2012年04月21日

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ネタバレ

 「いじめ」が発生するメカニズムについて、学校での事例を中心に分析し、それに対する対策を論じた本。

 本書はいじめの根本的な要因は、「空気を読むこと」や「ノリの良さ」が支配する「学校的な秩序」であると指摘する。学校のようにベタベタした人間関係を求められる場所では、普遍的な論理よりもその場のノリが重視されるためである。そうした秩序を乱す者に対する不全感やむかつきが、秩序を安定させる者をして群れて暴力を行使させる方向に導く。

 他にも「癒しとしてのいじめ」というものもある。それは「自分はいじめを耐えぬいてタフになった」という自己肯定感を得るために、いじめを再生産するというものである。かつてのいじめられっ子がいじめっ子になるというものである。

 対策としては
・学校の法化(暴力的いじめには警察で対応)
・「学校的な秩序」を作り出している学級制度、推薦入試の廃止
・特定の生き方が共通善とならない「自由な社会」の達成
・学ぶ内容を教科的、技能的、道徳的な分野に分けた上で、すべての子供に国家試験を受けさせ、合格した者に卒業認定をする

といったもの。ドラスティックすぎて少々受け入れにくい感じがする。全体的には面白く読めたが。

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2011年06月06日

Posted by ブクログ

人が集まって関わっている以上、いじめの構造は避けて通れないのかなと思いました。
まずは自分の弱さを認めながら、人と関わっていこうと思います。

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2024年06月12日

Posted by ブクログ

全体的になぜ人はいじめるのかを書いていた。私には「全能筋書」や「全能感」などのワードの意味があまりしっくり掴めなかった。いじめの起きる原理、その連鎖がなぜなのか、新たな視点で見ることができるかと思う。

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2018年10月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「閉鎖空間でベタベタすることを強制する学校制度」(第5章1節タイトル)
これを読んで、大学進学以降、中高時代の友人が「あの頃に戻りたい」というたびに「絶対にいやだ」と言い続けてきた理由がわかりました。
「みんな」で「仲良く」が求められること、同一同進度を求められることが苦痛でたまらなかったんだろうなぁ…。
もちろん、そういう環境が好き・いいと思う人はいるだろう。しかし全員がそうであるとは限らないのである。
「学級制度をやめる」ほか、様々な提案(実現は難しそう)があった。
「治外法権」をやめ、何かあれば「警察」を呼ぶというのは徹底されてほしいなぁ…。いじめることが損である、というメッセージは大半のいじめを落ち着かせることができるような気もする。
また学級制度やそうでない形を学ぶ側が選べる形になってほしいとも思う。

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2015年06月26日

Posted by ブクログ

いじめの分析までは良かった。
でも、途中から何か違和感を感じ始めた。この違和感は何だろう。

おそらく、著者自身がこの書を通して「全能感」を得たかったのではないか。ああ、そこだな。中島道義氏と決定的に違うところは。

ただ、いじめの分析は良かった。
それは疑いようがない。

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2012年09月27日

Posted by ブクログ

ニュースでいじめの問題が報じられてこの本を読み始めた。

本書によると、いじめが生まれるシステムは閉鎖的な空間による人間関係の特殊性によるものらしい。
この空間の内部では、通常の秩序よりも強いノリによる秩序が優勢になる、
そこにおいてはいじめる側のシナリオ・いじめられる側のシナリオが機能してしまっているなど、今までに見たことがなかった考察で、とても参考になった。

ただ、後半は現在読んでいる途中で、示された解決策が有効なのかどうか興味深いところ。

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2012年09月22日

Posted by ブクログ

学校なんか行かなくてもいいのにとすぐ思っちゃうような人なのであ、学校って こういう 空間だったか と。

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2011年09月20日

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