【感想・ネタバレ】日本SFの臨界点[恋愛篇] 死んだ恋人からの手紙のレビュー

あらすじ

『なめらかな世界と、その敵』の著者・伴名練が、全力のSF愛を捧げて編んだ傑作アンソロジー。恋人の手紙を通して異星人の思考体系に迫った中井紀夫の表題作、高野史緒の改変歴史SF「G線上のアリア」、円城塔の初期の傑作「ムーンシャイン」など、現在手に入りにくい、短篇集未収録作を中心とした恋愛・家族愛テーマの9本を厳選。それぞれの作品への解説と、これからSFを読みたい読者への完全入門ガイドを併録。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

恋愛篇と言ってもコテコテのラブストーリーみたいなものはなく、基本はSF。ロマンス要素やほっこり要素があるSF、というものが集められてる。高野史緒と小田雅久仁が好きだった。(アンソロジーを読む時の一番の収穫は、好きな作家を発見すること)
「怪奇篇」より、だいぶ良かったです。

中井紀夫「死んだ恋人からの手紙」★★★★☆
- はるか遠く離れた星にいる主人公が地球にいる恋人に手紙を送る。亜空間通信は送信した順で到着するのは限らない、という設定が面白い。また高次元な観点で見れば、生死も一時の状態で、繰り返しているのではないかという考え方も良い。

藤田雅矢「奇跡の石」★★★★☆
- 超能力を持つ人が多く住むという東欧のロベリア(という架空の国)へ訪れた主人公が出会った姉妹の話。音や味など五感を結晶化させることができる能力。美しい雰囲気が漂うSF (恋愛物語ではない)

和田毅「生まれくる者、死にゆく者」★★☆☆☆
- ホッコリ系。産まれかけの子と死にゆく祖父。

大樹連司「劇画・セカイ系」★☆☆☆☆
- ラノベっぽいラブコメSF。

高野史緒「G線上のアリア」★★★★☆
- 高野史緒作品はいくつか呼んだ短篇はあまりハマらなかったものの『カラマーゾフの妹』で食らった。こちらも歴史改変テイストで、ある意味既存の題材(既存の小説や史実)にフィクションや創作を織り込むのが得意な作家のようだ。
- この物語の世界では12世紀ごろから電話が発明されている。古いタイプの電話機ではあるものの、それはインターネットのように世界をネットワークで繋げていて、更に電気工学なんかもあり、なんなら主人公の一人は元ハッカーだ。史実に登場する人物の名前も多数出て来て面白い。

扇智史「アトラクタの奏でる音楽」
- 百合テイストは得意じゃないためスキップ。

小田雅久仁「人生、信号待ち」★★★★★
- 面白い。小田雅久仁作品を読むのは短篇3本目くらいだけど全て面白い。他2本は怪奇ホラーだったけど、こんなロマンチック系も書けるとは。恋愛色は強すぎずで程よい。
- 2つの横断歩道に挟まれた高速道路の高架下で赤信号に挟まれた男女。ラブコメでも始まるのかという雰囲気の中、なぜか赤信号が異常に長いことに気づく。時間の流れが急激に加速し、赤信号のうちに数十年の人生が繰り広げられ、最後に 無事横断歩道を渡り、(恐らく)人生を閉じる。

円城塔「ムーンシャイン」★★★☆☆
- 数字に対する共感覚を持っている少女の話(だということも伴名練の解説があったからわかった)
- 円城塔の作品は理解できないことが多いので低評価にしがちだが、それは自分の読解力や想像力がついて行けてないからという自覚もある。それでも読み飛ばさず頑張ってみたくなる。

新城カズマ「月を買ったご婦人」★★★★☆
- 19世紀、令嬢に5人の男性が求婚する、という竹取物語の展開。「G線上のアリア」同様、時代に似つかわしくない技術 (ロケット開発) が登場するタイプ。
- ラノベ出身なだけあって、文章は読みやすい。

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2020年11月04日

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