【感想・ネタバレ】うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間のレビュー

あらすじ

「ふざけんな、ふざけんな、みんないい思いをしやがって」

藤井フィーバーに沸く将棋界で、突然、羽生世代の有名棋士の休場が発表されました。
様々な憶測が流れましたが、その人、先崎九段は「うつ病」と闘っていたのです。

孤独の苦しみ、将棋が指せなくなるという恐怖、そして復帰への焦り……。
体験した者でなければなかなか理解されにくいこの病について、エッセイの名手でもある先崎さんが、発症から回復までを細やかに、淡々と綴ります。
心揺さぶられること、必至!

解説:佐藤優

※この電子書籍は2018年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。

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著者は「先ちゃん」の愛称で親しまれ、大ヒットマンガ『3月のライオン』の監修として、また洒脱なエッセイでも知られています。
私は先ちゃんの、棋士の日常を鋭く見つめた文章が大好きでした。
ライバルであり友人でもある同業者を書く時の、温かすぎず、でもクールすぎない視点は、棋士の中でも彼しか持ちえないのでは、と思っていました。
そんな先ちゃんの、うつ病闘病記。
得体の知れない病魔に立ち向かい、我を忘れたであろう時のことを書いても、先ちゃんは自分自身のまなざしを失っていませんでした。
いつものエッセイの時の切れがない、という評もどこかで目にしましたが、ここまで分かりやすく、淡々とした文章でうつ病を描いた本を私は知りません。それはとてもすごいことだと思います。
脳の病気なのに心の病気だと思われてしまうなど、うつ病への間違ったイメージをどうにか払拭したい思いが行間からにじみ出ていて、胸を打ちます。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

うつの身に起こる様々な症状をリアルに描写してくれている。言語化が上手い。うつの辛さを少しでも理解したい方にはおすすめの本。

重度のうつはこんなにもキツいのか。私は中程度のうつと診断されているが、それでもかなりキツい。身体が鉛のように重い感覚は凄く分かります。とにかく何をするにも一、二の三のような決断が必要、という感覚。でもなんとか動けているのでありがたいです。

日内変動や貧困妄想については初めて知りました。まさに今その状態になっていたので腑に落ちました。ああこれもうつの症状だったんだなって。自分をもっと理解するためにも、もっとうつについて学びたいと思いました。




以下個人的メモ

偏見はなくならないよ。人間というのは自分の理性でわからない物事に直面すると、自然と遠ざかるようになっているんだ。うつ病というのはまさにそれだ。何が苦しいのか、まわりは全くわからない。いくら病気についての知識が普及したところで、どこまでいっても当事者以外には理解できない病気なんだよ。

うつの疲れは、健康な人間の疲れとは本質的に違う。一言で言うならうつの疲れは「辛い」のである。何が辛いんだと言われても困る。脳が勝手に辛いと言う信号を送っているのだ。そして意欲が減退するので、行動、発想などがどんどんしぼんでゆく。だから、うつで病んだときに休むのは休養などと言うものではなく、脳の命令で体が自然と横にさせられているようなものなのだ。疲れも休みもうつのの神様(最低の神様だ)によって、ただただあやつられている。
元気になるときの感じも全く違う。普通の疲れなら、食事をしたり気晴らしをしたり、昼寝をしたりするたびに少しずつ回復を実感できるはずだ。うつの疲れはこの取れゆく実感というものが全くない。ひたすら脳からの「疲れが取れた」と言うサインを待つよりないのである。


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2025年08月29日

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