【感想・ネタバレ】トーキング・トゥ・ストレンジャーズ~「よく知らない人」について私たちが知っておくべきこと~のレビュー

あらすじ

『第1感』『天才!』などの世界的ベストセラーを送り出してきたグラッドウェルが、多様な実例と鋭い洞察力によって、人間の性質の暗い側面に関する定説の誤りを暴き、「他者といかにつきあうか」という人間の根源的な営みに新しい光を当てる。他者と出会う機会がかつてなく多い時代における必読の書!

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

【個人的経験と社会のつながり…疑うのは自分の認識】

前作の第一感と、
少し重なるようで、
でも今回はさらに人間を扱う。
知らない人に対するバイアス、
判断を謝り、
誤解がどのように生まれ、
時に取り返しのつかない事件を生むか。

警官の暴力、スパイ、独裁者、小児性愛者、…

扱う事例、伝えたい現実が、重い内容だからこそ、
伝え方でどれだけ伝わるかが変わってくるお話。
巧みなストーリー展開で、自分事として考えることのできる本になっていました。

・・・

・トゥルースデフォルト理論
真実を見抜くより、嘘を見抜く方がまちがいやすい、との研究結果があるらしい。
疑いが十分でないから信じる。
この状況を打破するトリガーは、疑いを確信する状況がいるらしい。
デフォルトを覆すのは難しい。

・透明性、透視性の例外
実際にまとう非言語情報が典型と一致していない人もいる。
文化間でも実は表情の意味に違いがあったりする。

・非対称な洞察の錯覚
「相手が自分を知るよりも、自分のほうが相手のことをよりくわしく知っている」「自分にはより優れた洞察力があり、相手の本質を見抜くことができる」「自分は誤解されている」「不当に判断されている」
お互いがこのような確信の下で会話すると、相手に対して、なかなか忍耐強く対応することができないという。

・結びつき(カップリング)理論
人の行動が、その人の性質だけではなく、その人の置かれた環境、状況、場所との結びつきに起因しているという話。
要因は代替され、その人にはいずれ起こる「置き換え」と対比される。
天然ガスへの切り替え政策が実施された時期に、一酸化炭素中毒の自殺が増えたらしい。
自殺はその人の性質だけではなく、置かれた環境と結びついて発生している例。
この結びつきを示すグラフは、その環境要因に揺さぶられることが分かる。

・・・

・個人的なやり取りから得た情報への過信
この本は見知らぬ人、の話だけれど、知っている、と思っている人についてもどこまで知っているかを過信しがちであると言っているのだろうと思う。
直接会って話を重ねたひとが、逆にヒトラーという真の人間の姿を見極めることができなかった事例。
個人的な交流から得た情報に価値があると信じる傾向は、たしかにある。
覚えておきたいのは、
ー.人間は複雑であり、変化し続けること。
ー.狂人、例外はいる。

対面面接なのでの印象や、会った時の感覚が大事だというのは、
より人間的であることを望む時。
特定のスキルや真偽を調べる際には、それ以外の情報をできるだけ排除してバイアスができるだけかかりにくい状態で評価すること、も前著に触れて述べられていました。(オーケストラの例)
実際は、その客観と主観の評価の混ざり合いなのかもしれないけれど。

・確かにみんなを疑うことはできない、
でも一度人間不信になったら、なかなか立ち直れなかったり。
自分の受けた心理的影響の大きさ、人に対する考え方。
恐怖心はまず強いと思う。

・・・

・真偽を覆すコストも
ジャニーズの問題と重なるような事例があったけれど、
リークするかしないか、
現状を信じつづけるかという点に加え、
現状に間違いを認めても覆すコスパがどうか、という点も大きいと思う。
認知的不協和とか、正義感とか、社会構造とか、
社会と個人の行動の関係って、複雑だということでもある。

・・・

「あなたのよく知らない他者はけっして単純ではない。」
だから、見知らぬ人を理解しようとするとき、
慎重さ、謙虚さを持つこと、理解への限界にも自覚的であること。

0
2024年06月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

<目次>
はじめに
第1部 スパイと外交官~ふたつの謎
 第1章  フィデル・カストロの復讐
 第2章  アドルフ・ヒトラー総統と知り合いになる
第2部 デフォルトで信用する
 第3章  キューバの女王
 第4章  佯狂者
 第5章  事例研究 シャワー室の少年
第3部 透明性
 第6章  『フレンズ』型の誤謬
 第7章  アマンダ・ノックス事件について単純で短い説明
 第8章  事例研究 社交クラブのパーティ
第4部 教訓
 第9章  テロリストの心の内は覗けるか
第5部 結びつき(カップリング)
 第10章  シルビア・プラス
 第11章  事例研究 カンザス・シティの実験
 第12章  サンドラ・ブランドに何が起こったのか

<内容>
我々は「見た目」や「経験」から初対面の相手でも、様々な判断を行っている。それを正しいと信じている。しかし、そうなのだろうか?著者は、”はじめに”のところで、一つの事例を提示する。警官と車を止められた女性の話だ。それは悲劇的な結末となった。それが何を意味したのか、多くの事例を挙げながら、我々の判断が間違ってきたことを示す。現在、アメリカでは警官による黒人殺害の事件から、人種差別撤廃の嵐が吹き荒れている。これもおそらく、この本で提示した課題が表面化した問題だと思われる。ちょっとしたボタンの掛け違いなのだが、初対面の両者が、違う認識を示し、それが確認されないまま時間が過ぎてしまうと、いくつもの事件となってしまうのだ。それは、「ヒト」の感覚の問題なのか、宗教的なものなのか、生理的なものなのか、心理学が解明できることなのか…。

0
2020年07月19日

「学術・語学」ランキング