あらすじ
秀吉の暴威と隠者の酒宴。『黒い雨』に通底する最晩年の傑作――茶会の作法や規則なども全く知らないが、鞆ノ津の城内や安国寺の茶席で茶の湯の会が催される話を仮想した……秀吉の九州攻略から朝鮮出兵へと至る時期。作家の郷里・備後を舞台に、小早川隆景に恩顧を受けた、武将や僧侶が集まる宴で噂話に花が咲き、戦国末期の生々しい世相や日常が、色鮮やかに甦る。著者の想像力に圧倒される、最晩年の名作。
※本書は、1989年1月福武文庫版『鞆ノ津茶会記』、1999年1月刊『井伏鱒二全集27』(筑摩書房)を底本としました。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
戦国時代の終わり江戸時代の始まる直前のお茶会日誌。どこまでが著者の想像でどこまでが史実なのかは判然としないが、それは歴史書を読んでも同じことだと僕は思うので気にしない。
ボケた秀吉の話は面白い。興味深い。
Posted by ブクログ
小早川隆景配下にいた引退した武士たちが主人公?という設定で、鞆の安国寺を拠点に茶会に集い、飲食をともにしながら、厳しかった戦国の世を思い返し語りあった記録という体裁をとる。
集った各人の記録?をたんたんと記しているだけなので、会話らしい会話はなくそれぞれの事件の顛末と若干の皮肉が披露されるというパターン。血なまぐさい出来事を老いの境地にて静かに振り返る。あまりにも事実記録に徹しているため、もしかして創作ノート?という疑いをずっと払しょくできなかった。(笑)
設定は誠に面白いのだが、(老人という設定故、もしかするとわざとかもしれないが)同じ話を何度も繰り返されるのが辛いのと、連載だったためかわざとかはわからないが、出来事の順番が逆転して矛盾していたり、誤記や事実誤認が何カ所も散見されるので、こちらの頭が混乱してしまう。(笑)
優しい設定ながら厳しい体験を振り返り冷やかに皮肉る様が絵になっている。