あらすじ
山の崩れの愁いと淋しさ、川の荒れの哀しさは、捨てようとして捨てられず、いとおしくさえ思いはじめて……老いて一つの種の芽吹いたままに、訊ね歩いた「崩れ」。桜島、有珠山、常願寺川……みずみずしい感性が捉えた荒廃の山河は、切なく胸に迫る。自然の崩壊に己の老いを重ね、生あるものの哀しみを見つめた名編。
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Posted by ブクログ
崩れを大地の暴力のように感じていた筆者が、「崩れとは地質的に弱いことだ」と言われて衝撃を受ける場面は印象的だった。日本は古来、災害を克服しようとし、災害と共に生きてきた国なのだと実感。
崩れの痕跡を求めて日本各地をゆくエッセイだと思っていたけど、痕跡ではなくいまなお崩れが続いており、しかもそんな崩れの地は日本各地にたくさんあると知って驚いた。
崩れなどという行くのに体力もいるような(そりゃ山崩れが起きるような場所ですから…)ものに、年老い体の自由も利かなくなった今になって興味を芽吹かせてしまった因果を嘆く筆者だが、老いてもなお好奇心に満ち満ちている文さんがかわいくもあります。