【感想・ネタバレ】宇宙の始まりに何が起きたのか ビッグバンの残光「宇宙マイクロ波背景放射」のレビュー

あらすじ

「ビッグバンから最新の宇宙論まで、一気に読める!」(村山 斉 氏 東大教授 絶賛!)
「生まれて間もない宇宙に響いていた宇宙交響楽。そこに刻み込まれた宇宙の歴史と成り立ちを探る研究の第一人者による渾身の一作

ビッグバンとは何か、ビッグバンの前には何があったのか、その謎の答えは、空の全方向から降ってくる「宇宙マイクロ波背景放射」の中にある。
そこに含まれたかすかな温度のゆらぎが、人工衛星により発見・解析されたことでビッグバンに鳴り響いていた宇宙の音、すなわち『宇宙交響楽』の解明が進み、宇宙の年齢や姿、そして運命までが今、明らかになってきた。

世紀の大発見
1992年、私が東京大学理学部物理学教室で宇宙理論研究室の助手をしていたときのことになる。4月のある日、研究室のボス、佐藤勝彦教授が手にファックスの出力を持ち、興奮した面持ちで部屋に飛び込んできた。「杉山君、COBEが温度ゆらぎを発見したらしいぞ!」 ファックスは、米国での記者発表を伝える現地特派員からのものだった。まだメールが一般には普及していなかった時代のことだ。なお、COBEは宇宙背景放射探査衛星の略称である。 このときの興奮は、今でも忘れることができない。佐藤先生の手からひったくるようにしてファックスを受け取り、さっそく目を通した。それは『COBE差分マイクロ波放射計の1年目のマップに見られる構造』という少々ぶっきらぼうな題名の英文の論文だった。筆頭著者はジョージ・スムート。これこそ、私が大学院時代から、ずっと研究を続けてきた対象そのものが見つかったという報告だったのだ。 COBEの発表は、車イスの天才物理学者、スティーヴン・ホーキングが、「史上最大の発見か、少なくとも今世紀最大の発見」とコメントしたこともあり、世界を駆け巡るトップニュースとなった。 COBEとは、宇宙マイクロ波背景放射という、宇宙からやってきている電波を捉える目的で、1989年に打ち上げられたNASA(米国航空宇宙局)の人工衛星だ。宇宙マイクロ波背景放射は、宇宙がかつて熱かった時代、つまりビッグバンの時代の名残の電波である。
COBEが発見したものは、ビッグバンの時代の構造だったのだ。私自身が、大学院時代から一貫して研究してきたのは、ゆらぎの空間パターンが何を教えてくれるのかについてだった。この構造を調べれば、ビッグバンより以前、宇宙の始まりに、どのようにゆらぎが生み出されたのかについても明らかになるかもしれない。(略)。私自身、当時、世界に10名ほどしかいなかった専門家の一人として、すぐにもこの結果を、自分自身の理論計算と比較し、世界に向けて発表しなくては、と焦る気持ちを抑えきれなかった。
(まえがき)

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Posted by ブクログ

まず、愛を感じます。筆者が、自分のやってきた研究の世界への愛です。この基本があるので、とても分かりやすく書かれていて、とにかく興味がわいてくる。筆者のわくわくが伝わってくる。詳細や、理論はわからなくても、このわくわくが伝わる内容であるのは、ブルーバックスとして大成功。この本を手にして、筆者の後輩がますます育ってゆくことを祈りたいな。

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2022年02月28日

Posted by ブクログ

宇宙マイクロ波背景放射でなぜ、物質量や宇宙の年齢が分かるのかを知りたく、手に取った。
その謎が完全に分かったかというと、まだわからない。手法や考え方の概要は分かったが、「それ、ほんまにできるんかいな」感が残った。ここから先は、本格的な専門書や論文の領域か。
とはいえ、読み物として楽しく読めた。
宇宙マイクロ波背景放射の発見から、今日的課題や舞台裏を描けたのは、その真っ只中にいた杉山さんだからこそだ。
バークレーでの日々は、仲間達と切磋琢磨する様が羨ましかったし、JAXAのLiteBIRD衛星の活躍に胸が高まる。
中でも興味深かったのが、宇宙マイクロ波背景放射とは、ビックバンの残響だという点。この解釈で、とりあえず宇宙マイクロ波背景放射の掴み所を得た。何より、なんともロマンチックな事よ。宇宙に38万年間音が鳴り響いていたなんて。飛浩隆さんの零號琴は、これが発想のもとになったのかな。再現音をググったらすぐ聴けるとは、いい時代だ。

次は、本書内にも出てきた小松英一郎さんの本で、理解を深めようかな。

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2021年02月10日

Posted by ブクログ

理論を立て、実験を行い、理論と実験結果の差異からまた新たな理論を立ててゆく。

「宇宙は138億年前にできた」「ビッグバンという現象が」「宇宙はダークマターが埋め尽くしている」
そういうものだ、と受け止めることはできるが、よく考えるとなぜそうだと言えるのか皆目検討もつかない。
その真理にたどり着く道程を辿るようにして本書は綴られている。

バークリーでの研究の日々についての章は研究というものの面白さを感じさせてくれるし、終章にむけての流れで描かれる現在進行形の研究と未来には胸が躍る。
10年や20年のスパンでは、もっといろいろなことがわかり、もっとわからないことが増えているのだろう。
知的好奇心をくすぐられるエキサイティングな一冊。

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2020年09月16日

H

購入済み

宇宙論が好きで、宇宙マイクロ波背景放射については一般的な知識は少しは持っていました。でも、宇宙マイクロ波背景放射を調べることで、宇宙の始まりが解るとは思っていませんでした。
説明も丁寧で初心者にも解るように書かれています。楽しく読めました。

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2024年04月06日

Posted by ブクログ

久しぶりに途中で振り落とされました。もう一度読み直さないと。この辺りのビックバン付近の話は好きなので、ちゃんと理解したいのですがね。最新の科学者が何を調べようとしているのか、そしてその科学者にも人間っぽいところがあるなど、話も多岐にわたって面白かったのですが……。数式無しで頑張って説明してくれているのに、なぜ振り落とされる?自分……

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2021年07月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

あちこちで見る「宇宙マイクロ波背景放射」の図。これがなぜ宇宙初期の姿なのかよく分からなかったが本書を読んでようやく理解できた。
後半はやや消化不足。Bモード偏光を観測できればインフレーションの証明になるというあたりも世界的な競争の現状など、臨場感のある記載で面白く読めるが、なぜBモードなのかなどの説明はあまりなかった。
宇宙の本って読めば読むほど新たに疑問が出てくる。この辺がよいところかもしれないけれど。。。

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2023年05月21日

Posted by ブクログ

【人物】
アインシュタイン
ガモフ
ホイル
ツヴィッキー
ペンジアス&ウィルソン
ピーブルス
スムート

【研究】
COBE衛星
WMAP衛星
プランク衛星
スーパーカミオカンデ
すばる望遠鏡
ALMA望遠鏡
ブーメラン実験
1a型超新星サーベイ

【用語】
放射性崩壊
核融合
赤方偏移
ビッグバン

熱放射
宇宙マイクロ波背景放射
ダークマター
4つの力
ヒッグス粒子
宇宙の晴れ上がり
インフレーション
温度ゆらぎ
Cosmic Web
重力レンズ効果
ポテンシャル・エネルギー
ラグランジュ点




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2022年08月08日

Posted by ブクログ

サイモンシンの『宇宙創成』を読んだ時、この宇宙マイクロ波背景放射の部分が最高に面白かったので、本職の教授の手による本を読みたくなって手に取った。後半はほぼついて行けなかった。

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2020年10月24日

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