あらすじ
樹木希林、荒木飛呂彦、西原理恵子、リリー・フランキー、辻村深月……企画から取材まで、不登校の当事者・経験者が、総勢20名の大先輩たちに体当たりでぶつかって引き出した「生き方のヒント」。社会に出たくない人も、いま人生に迷っている人も、中高生からシニア層まで幅広い世代に突き刺さる言葉がつまった一冊です。
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Posted by ブクログ
「全国不登校新聞」というメディアがあることを少し前に初めて知った。樹木希林さんの本を読んだ際に、フォローさせて頂いている「夜型さん」に、希林さんがこのメディアへメッセージを寄せられているということをコメントで教えて頂いたからだ。
このメディアは、全国不登校新聞社の発刊ですでに20年以上の歴史があり、その間一度も欠刊がなかったそうである。
同社の代表理事奥地圭子さんは、1984年から「登校拒否を考える会」を立ち上げ、その翌年にはフリースクール「東京シューレ」を開設するなど、早い時期から不登校やひきこもりの問題への取り組みを進めてこられた方である。
本書は、不登校やひきこもりの経験者がインタビュアとして、その自分が誰の話を聞くことが有意義かということを考えて、その対象者にインタビューを敢行することにより編集されたものである。世間一般の読者受けを考えたインタビューではなく、そのインタビュアーが個人として話を聞きたいと思う人に、その思いをぶつけながら取材をしている点が特長であり、それが本書を熱気の感じられるものにしている。
本書の編集長もまた、不登校やひきこもりの経験者だそうだ。
そして、インタビューに答えている人物のほとんどは、現在、その筋で世に認められている人物であるが、そこに至るまでに、不登校や引きこもりなどの経験をもち、あるいは現在でも「生きづらさ」と共存しながら生きている人たちであった。
樹木希林、荒木飛呂彦、柴田元幸、リリー・フランキー、雨宮処凛、西原理恵子、田口トモロヲ、横尾忠則、玄侑宗久、宮本亜門、山田玲司、高山みなみ、辻村深月、羽生善治、押井守、萩尾望都、内田樹、安冨歩、小熊英二、茂木健一郎。
自分にとっては、知っている人物も、これまで全く無縁だった人物も含まれている。また知っている人物ですら、成功実績を知るのみで、そこに至るプロセスについては知らなかった人物が多い。
本書を読んで、いかに自分は「世間知らず」だったのかというような気持ちになる。「世間を知る」という意味を、勝手な限定的な世界を知ることと勘違いしていたのではないかと感じる。
東京大学東洋文化研究所教授の安冨歩氏は、現代人の生き方をポケモンに例えている。つまり自分自身で戦っているのではないと。そして自分自身を生きている人はどこにいるのかという問いに対し、不登校や引きこもりの中にいると述べている。
上記に登場した、インタビューを受けた側の大先輩たちの話を聞いていると、まさに「自分自身を生きる人」の実感が伝わってくる。
コラムで自身のひこもり体験を述べている若者が、親から言われて最も嫌だった言葉を列挙していた。
「ふつうにしなさい」
「この先どうするのよ」
「あなたのためを思って言ってるのよ」
「ふつう」とは何か?
皆が学校へいくから、行かないのは「ふつう」でない?
マイノリティが特異な目で見られるという現実に対し、宮本亜門氏は、「マイノリティは人類にとって大切な前例」であり、マイノリティをマイノリティでないものへ変えていく使命ある者と言っている。
西原理恵子氏は、「子どもより先に親が何を不安がっているのかを解決した方がいい」と言いきっている。先の言葉(「この先どうするのよ」等)に対する明確な答えであるように思う。
それぞれのインタビューのやり取りの中から、一瞬「世間知らず」の感触が沸き上がると当時に、新たな視点を与えてくれる書でもあると思う。