あらすじ
ナメクジ博士が明かす知られざる「脳」と「生態」のすごい話!
どこからともなく現れ、銀色のスジを残して這うナメクジ。農作物の害虫であり英語ではのろまの代名詞でイメージは悪い。2018年にはナメクジを生食して死亡した豪州男性のニュースが話題を呼んだ。だが、ナメクジの脳を研究して19年の著者によれば、人間には及びもつかないすごい「脳力」があるのだ。「学習」と犬並みの高度な論理思考ができ、苦悩もする。脳の出先機関である触角に記憶も保存できる。脳も触角も壊れると勝手に再生し、眼がなくても脳で光を感知できる。しかも脳の真ん中を食道が通っている!
本書はそんなナメクジのすごい「脳力」とふしぎな生態(呼吸とうんちは同じ孔、頭の横から産卵など)を軽妙なタッチで紹介する。ヒトにはまねできないナメクジの脳力は、ヒトのあり方だけが最良ではないことを教えてくれる。最終章では著者のナメクジ研究生活の悲喜こもごもが語られ、陽の当たらない研究こそが実は醍醐味にあふれていることがよくわかる。常識と非常識が入れ替わる楽しいナメクジ脳の世界へようこそ!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ナメクジ研究者による、ナメクジの脳機能研究についての一般向け書籍。
読んでいくうちに、それまでなんとも思っていなかったナメクジがどんどんかわいく思えてきて、その分、生きたまま脳を取り出されたり、触覚を潰されたり目を切られたりするナメクジが気の毒になってきてしまうのだが、それでも脳のまましばらく生き続けたり、触覚や目を再生させたり、しぶといナメクジの生命力におおお…!と思わず拍手したくなる。
内容も、一般向けで、わかりやすく、分厚すぎなくて、私のような理系に触れてこなかった人間も、面白く読めた。
巻末にこうした基礎研究は予算の確保が難しい、という窮状についても触れられていたが、「役にたつ」が前提にならない研究にも、お金が行き渡って、裾野が広く大きくなるようにしてほしいなあ、と強く思った。
何がどう転ぶかわからない、という世界であるし、こんなに面白い本が書かれる環境を、失わせないでほしいと思う。
Posted by ブクログ
ナメクジについてあまりにも知らないことに気づかされた。調べればもっと身近で研究になる生物がいるかもしれない。最後の部分が筆者の研究の動機とその研究生活である。これは大学生にも参考になるであろう。
Posted by ブクログ
生物系の研究をしたことがあり、興味があって購入
めちゃくちゃ面白かった
殻を捨てたナメクジの生き方
忌み嫌われる存在のナメクジだけど、ナメクジの記憶能力の高さに驚いた
興味深かったのは、触覚のニューロンでも記憶してること
人間も脳だけでなく、臓器に記憶が残ってると考えても不思議ではないなと
ナメクジ研究の大変さも書かれており、周囲と違うコアな研究、人の知を広げる活動に面白みを持った
Posted by ブクログ
引き込まれるように読んだが、まず第一に、面白い。
ナメクジに脳があるだなんて、考えたことも無かったが、想像以上に立派な脳があり、また特殊な能力がその生態を支えている事をはじめて知った。
そして、脳神経系において、人との間で意外な共通点と、想像もできなかった相違点がある。やはり面白いな、ナメクジ。
さらに、ナメクジ研究者の著者が面白い。正確には、著者にナメクジ研究というブルーオーシャンを与えることになった母上様の一言がおもしろい。
いやあ、新しい知見を楽しく読むことができました。著者に感謝。
Posted by ブクログ
カタツムリは愛され、ナメクジはなぜ嫌われるのか?
という話ではなくて、ナメクジの脳の機能の凄さをとことん研究して解説してくれる一冊。さて、ここから再生医療などに活用される分野がどう展開されるだろうか。期待したい。
Posted by ブクログ
庭のパンジーを食べる、憎いナメクジ!!
潰しても、薬を置いても、パンジーを食べる
コーヒーかすも、なんのその、ビールトラップも効かない。そこで敵を知るためにこのほんを読みました。
凄い脳ミソを持っているなんて!
Posted by ブクログ
研究分野としては地味だし、「人間をしのぐ驚異の脳機能」を知ったところで、明日からの生活に役立つわけではないが、とてもわかりやすく面白かった。
筆者も述べている通り、人間の今の姿が唯一の正解・完成形と言うわけではなく、多様な戦略がありうるということに気付ける一冊。
Posted by ブクログ
考えるナメクジ 松尾亮太 さくら舎
出合いの少ないナメクジの脳という内容に
興味を持って読みだしてみた
小さな脳が大きな仕事をしていることを
愉しみながら思ったことは
小さい脳がフル活用しているのに対して
大きな脳はキャパを広げることで
大きな仕事が持ち込むエネルギーの落差で起こす
フリーズを避ける事ができると言う事実についてだ
殻を持ったカタツムリと殻を捨てたらしいナメクジの
両方が共に繁栄していることでもわかるように
自然界は個々の進化だけを目的になどしておらず
変化による多様な関係を生み出すことで
無限を視野に入れた創造という世界観を
追求しているのかも知れないと理解した
Posted by ブクログ
著者の松尾亮太さんの
紹介の一部に
ーナメクジの学習機能、および嗅覚、視覚の研究に従事している
と綴られてある。
もの凄く 身近にいる生物
だけれど
では実態はというと
ほとんど 知らない
ダンゴムシ、アリ、ゴミムシ、…
私たちの身の回りに居る生き物たち
その ほとんどのことを
私たちは 知らずに 暮らしている
それだけに
こうして(この本のように)
実はね…
と お話ししてもらうと
それが いやはや 面白い 興味深い
私たちの すぐ周りには
素適な不思議で満ちている
この世に
ぜひ 存続して欲しい
学問、研究対象だと
読みながら 思わせてもらいました
Posted by ブクログ
表題の通り、主にナメクジの脳の働き、神経の働きについて面白く解説している。
ナメクジの一対の触覚には、それぞれ目があるが、一つを切ると、ぐるぐる回るように動く。それは、目で暗い方向を判断しており、一方が切られて、そっちの方が暗いと誤認してそっちに動くからだという。ナメクジは暗いところを好む生物であることがわかっているから。しかし、勉強もできるので、しばらくぐるぐる回っていると、なんだかおかしいことが分かり、動くのをやめて、反対に回ったあげく、元通りまた、真っ直ぐ動くようになったという。なんだか、かわいくもある。
最後の章では、何故著者がナメクジ研究をしだしたか、ナメクジ研究の面白みや大変さなども書かれている。ちょっと、愚痴のようなことも書かれており、親しみとおかしさを感じたとこだ。
応援してあげたい。
Posted by ブクログ
『クモのイト』の中田兼介さんも女子大でクモの研究とは大変だろうなあと思ったが、こちらは女子大でナメクジの研究‥‥研究する学生を確保するのが大変そうだし、必修なら良いが選択の場合、講義を選ぶ学生がいるのかとちょっと心配になるが、巻末近くで、別に女子大だからといって苦労はしていないというようなことが書いてあり、とりあえず良かった。
こういう特殊な研究をする研究者の文章には対象に対する熱烈な愛が感じられることが多く、そこも期待したのだが、著者の研究はナメクジの脳なので、そういう感じはなく、(学習能力を研究するため)美味しいものに苦い液をかけたり、触覚を切ったり、脳を移植したり、結構ナメクジからすると辛いことをクールに行っている。ナメクジに生まれ変わっても松尾研究室のナメクジにはなりたくないと心から思った。
はじめのあたりで、暗いところが好きなのに、暗い部屋に入ると苦い液(キニジン硫酸水溶液)をかけられ、以降暗い部屋に入りたいけどまた苦い液をかけられるのではないかと苦悩するナメクジの様子はちょっと可哀想だったが、その後の色んな手術はもっとキツイのでナメクジファンの方は読まない方がいいかもしれない。
いや、ナメクジなんて切っても痛くないんじゃない?と思ったが、ナメクジにも体感があり、「ピンセットで強くつままれたときに身をよじって逃れようとする様子や、背中から麻酔を注射された直後、びっくりしたようにマントルをめくれ上がらせる様子を見れば、痛覚があることは明らか」(P74)だそうです。塩かけられた時も苦しんでいたのか‥‥ごめん。まあ、松尾先生はちゃんと麻酔はしてますからね。徒に苦しめているわけではない。
この本のメインはナメクジの脳の特殊性について書かれたところ。この研究が進めばアルツハイマーなど脳が原因の病の治療に貢献できるかもしれない、というところは、すごい。もしそれができたらナメクジに感謝だし、ナメクジ研究もステージが上がるだろう。ノーベル賞だって取れるかもしれない。頑張ってほしい。
国が国立大学の法人化を行い、大学評価で予算を決めるようになったため、すぐに開発に結びつかない研究はどんどん厳しい状況になっているが、こういう研究が大化けする可能性だってある。
研究の多様性も大切であることも伝わってくる本だった。