あらすじ
源氏亡きあと、宇治を舞台に源氏の息子・薫と孫・匂宮、姫君たちとの恋と性愛を描く。すれ違う男と女の思惑――。大長編の最後を飾るドラマチックな「宇治十帖」が圧巻。角田源氏、完結巻。
解題=藤原克己(国文学 東京大学)
解説=池澤夏樹
月報=辻原登 マイケル・エメリック
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Posted by ブクログ
前の光源氏が主人公の話とは打って変わって俗っぽい人間ドラマになる。序盤の恋する蔵人少将の見苦しさから絶好調だ。
薫と匂宮、名前が嗅覚関係で似ているな、と思っていたが、薫が香りを放ち、匂宮がそれを女性から嗅ぎ取るのか!と中盤に気付き、伏線回収された気分だった。宇治の三姉妹を挟んで何度も三角関係になるのが面白い。
浮舟は名前の通り、二人の間をフラフラするし。
(名前の由来になった匂宮に抱かれて舟でデートするシーンはロマンチックだった)
角田さんのあとがきの浮舟の解釈も唸った。
「袖ふれし人こそ見えね花の香のそれかとにほふ春のあけぼの」
この歌、薫と匂宮どちらの名前も入っている。
1000年前にこんな近代的なドラマを描いた紫式部はすごいなあ。言葉遊びのセンスも抜群。
現代のとても美しい日本語で書かれていて読みやすかった。表紙もシンプルながら素敵。
めちゃくちゃ面白かった。読破できて良かった。
Posted by ブクログ
あっけない終わりだなと感じます。
はっきり言って尻切れトンボというか…。
本当に紫式部がこれで終わりにするつもりだったのかな?と個人的には疑問に思わずにはいられませんでした。
この後、匂宮も噂を聞いて…となり、浮舟が『竹取物語』のかぐや姫のように誰の手も届かない遠くへ行くエピソードがあったりして、などと妄想を膨らませます。
どちらにせよ、私たちが見られる源氏物語はここまでで、当時の女性が生きづらい世の中であったことがよくわかりました。
1000年前の話ですが現代の女性にもあてはまるところがあるなと思います。
ひとりの男から愛されたいのにほかの女がいたり、浮気されること、たとえ愛されてもほかの女がいればひどい嫉妬にあうこと、結婚しないと周りにとやかく言われること。
子は鎹と言いながら親という強力な後ろ盾がなければ幼少期を安心して過ごせないし、お金がなかったり・親がいなくて不自由な暮らしをすることになり、周りからひどい噂をされる。
1000年後の令和でも『源氏物語』に出てくる女性たちと似た苦しみは尽きないので、小説界隈に「溺愛系」という1ジャンルができ、人気があるのも納得です。
同時に古典としての『源氏物語』が読まれなくなるのは識字率や読解力の低下、忙しい現代人が多くて長編作品が読まれないだけでなく、1000年前の女性も苦労が絶えなかった・1000年前と人の心はさして変わっていないという事実に絶望し、「夢を見られない」という仕方のない理由が原因かなと思いました。