あらすじ
学校×音楽シリーズ第一弾。
音楽が少女を、優しく強くあたたかく包んでいく。
校舎の屋上にある音楽室に集まる鼓笛隊の落ちこぼれ組を描いた表題作など、少女が語り手となる四つの物語。
嫉妬や憧れ、恋以前の淡い感情、思春期のままならぬ想いが柔らかな旋律と重なり、あたたかく広がってゆく。
学校と音楽をモチーフに少年少女の揺れ動く心を瑞々しく描いたSchool and Musicシリーズ第一弾。
解説・湯本香樹実
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小学校、中学校、高校での、それぞれ音楽に関するお話の中短編集。
「デュエット」「FOUR」は中学生、「裸樹」は高校生が主役のお話。まだまだ、子供のような、彼、彼女らのお話しにもそれぞれ、様々な感情やドラマがありました。
「第二音楽室」
第二音楽室は屋上にたった一つだけある教室。
後ろ姿だけイケてる男子、久保田。
体の大きいジャンボ山井。
クラスで一番頭がいい女子ルーちゃん。
無口で絶対音感のある江崎。
のんびりやの佳代。
そしてウチこと史江。
クラスで六人だけの5年生鼓笛隊のピアニカ組。
漫画、ゲーム、ルーちゃんが持ってきたポテチ、チョコ、キャンデイ、カフェオレの甘く香ばしいにおい。
江崎が弾く、モーツァルトのピアノソナタ第15番ハ長調。
第二音楽室の秘密基地、楽しいお茶会、独り占めした屋上の遊び。
イカれた最高のパーティ。
何か大事なものをなくした気がするのに、そう思っているのが、ウチ一人のような気がして少しさびしい。
第二音楽室からピアノの音。
江崎だ、あの曲だ。
みんなが来なくなった第二音楽室に江崎が一人だけ来て、もくもくと練習していたことを考えると胸が痛くて泣きたくなった。
「史江って、江崎が好きなの?」
「よくわかんね。でもあいつドの音がわかるんだよ。絶対音感」
五年ピアニカ組。
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「学校」と「音楽」をキーワードにした短編集。
リコーダーアンサンブルに参加する小学生やら、
軽音楽部でベースを弾く女子高生やら、
登場人物はみな音楽を「演奏する側」の人。
みなアマチュア...と言うか子供や若者で、
決して上手・立派な演奏をしている訳ではない。
むしろ「初心者が頑張ってる」シーンの連続。
だが、自分の演奏のふがいなさにもがく中で、
ふと訪れる「息が合ったときのゾクッとする心地よさ」
を丁寧に描いていて、そこにぐいぐいと引き込まれる。
演奏する側に回ったことのある人なら、
一度は経験したことがあるモーメントでは。
自分の出す音だけに集中している時期から、
だんだん「周りの音」が聞こえるようになって来て、
ふと迎える「息が合った」瞬間の快感。
巻末の解説に「言葉で音楽を伝えることはできないが
音楽に向き合う人の心を描くことはできる」
という主旨のことが書いてあったが、至言である。
現役はもちろん、かつて「演奏する側」だった人は
「あ〜、音楽やりて〜!! 打ち込みとかじゃなくて
人間同士で音出して〜!!!!!」と熱望すること必至(^ ^;
つい興奮してしまいましたが(^ ^;
もちろん楽器の演奏だけを描いた小説ではなく、
幼いなりの恋愛感情なり、いじめ含む人間関係なり
音楽を軸にしつつそれぞれのストーリーがちゃんとある。
でも、読後感として残るのは演奏シーンが強い。
それだけ印象的に描かれている訳でもあろうし、
また人を、大きく言えば人生を変えることもある
「音楽の力」みたいなものの強さとしなやかさが
上質の映画のラストシーンのような読後感と共に薫る。
そんな「ミューズの神に愛された」秀作たちです(^ ^
Posted by ブクログ
小学校、中学校、高校と、それぞれの世界で関わる音楽、そして仲間との出会いが、丁寧に描かれています。
ラストの『裸樹(らじゅ)』が一番好きでした。
中学時代にいじめにあって以来、友達との距離感をうまくつかめずにいる望。
心に傷をおった彼女が出会った歌、『裸樹』。
ギターを覚え、自力で弾けるようになった頃、軽音楽部に入ることになります…。
きっかけは、いろいろですが、どの作品にも音を重ね合わせていく楽しさが溢れています。
合奏やバンド、仲間との衝突は避けられませんが、一つの音楽になった時の喜びが伝わってきます。
Posted by ブクログ
4編から成る短編集。小学校・中学校・高校の子どもたちと、それぞれの音楽との関わりが、瑞々しく爽やかに描かれている。
自分も小学生時代から、管弦楽や吹奏楽の部活動に精を出したり、学年合奏にウキウキしたりしていたので、心情や空間などの描写にかなり共感できた。学校生活の思い出は常に音楽とともにあるので、この本を読んでも「あぁ、あの時、楽しかったな〜」としみじみ思う。輝く思い出を懐かしく思い出させてくれたことに感謝。
特に良かったのは中学生のリコーダーカルテットを描いた「FOUR」。音を合わせる喜びと、中学生の笑えるような個性と、悩める自意識と、甘酸っぱさに溢れている。
鈴花がメロディーの表現に悩んでいる様子は、自分も高校くらいまでずっと楽器での感情表現で苦戦していたことが思い出された。
「このメロディーの美の中に、自分を投げ出してみて。気持ちを解放して。喜びを音に乗せてみて」という間柴先生の言葉は、身に沁みるよう。表現することを恥ずかしがっている段階では、音に感情を乗せるなんてことは到底出来ないんだよね。
「うまく吹こうという力みがとれた時、長く伸ばしたゆったりした音の中に静かな感情がみなぎった。(中略)情緒豊かに吹くことと、正しい技術で吹くことは、違う作業じゃないんだと思う。」という文章がとても好き。鈴花が中1にしてこれに気付いたのはすごいことだと思う。
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十代(小学五年生も辛うじて十代だ)の女の子たちを主人公にした短編小説集。
それぞれの短編の関連はない。
ただ、どれも少女たちの心を繊細に描いていく中で、音楽が重要な役割を持つという共通性がある。
鼓笛隊の「あまりもの」、ピアニカ組になった男女のグループ。
全体としてはちょっとやさぐれた感じが漂う彼らの秘密基地、第二音楽室。
主人公フーミンは、江崎という男子がモーツァルトの15番のソナタを、特に目的があるわけでもないのに少しずつ練習していく姿に、恋愛感情というのではなく、心惹かれる。
「デュエット」は一番短く、ここの作品の中では最ものんびりした雰囲気。
(申し訳ないけれど、あまり印象に残らなかったかも。)
「FOUR」は、もっと恋愛要素満載の短編。
卒業式での演奏のために、選抜された男女4人のリコーダーカルテットの物語だ。
中学一年のスズは、リコーダーの演奏技術に内心自身がありながら、うまく歌えないことをコンプレックスに感じている。
カルテットのメンバーである、同級生の中原に惹かれているのに、それをうまく表現できないのも、きっとそんな彼女の性格に関わっている。
中三が手の届かない大人に見えたり、うまく気持ちを伝えられなくて自分自身がもどかしかったり、という姿が、共感をそそる。
最後の作品、「裸樹」は、打って変わって痛々しい。
中学の時、些細なことからいじめを受け、高校に入った現在も、フラッシュバックに苦しむ望。
不登校に陥った彼女を支えたのが、インディーズでカリスマ的な人気を誇る裸樹の曲を歌ってくれた人。
高校ではノン太というお笑いキャラを作り、何とかやっていこうとしているが、ちょっとした発言、周りからの評価で立場が危うくなるのではというヒリヒリした気持ちは、読んでいて辛くなる。
そんな彼女が軽音部に入り、居場所を作って、少しずつ前に進んでいけるようになる。
十代の痛みって、こんなだったなあ、と思い出されてきた。
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音楽を題材にした小説が好きで、もっというと音楽室が風景に出てくる小説が好き。
中高と吹奏楽部に所属をし、青春時代の大半を音楽室で過ごしただけあって自分にとって大事な場所だからなのか。
第二音楽室は吹奏楽部員の物語ではなく、音楽に触れたことのない子や音楽に救われた子等、様々な子達が様々な楽器(声)に出会いその中で葛藤し、成長する短編小説だ。
音楽に触れ合う中で青春を謳歌する彼女達に昔の自分を重ねたり、音楽で周りが変わるこの感じがとても良かった。
個人的には最初の「第二音楽室」、「FOUR」が好きだった。
リコーダーの種類があんなにあるのも驚き。
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学校で音楽する短編集。
あの頃はその世界がほぼ全てなんだけど
その中で精一杯悩んでがんばっているんだ。
音楽に上手い下手はあれど
それよりも結局は人の感じ方なんだな。
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佐藤多佳子を読んだのは「一瞬の風になれ」だけだけど、これが凄く良くて、この本出たのはすぐに購入。
音楽室や軽音部の部室などを舞台に、音楽をモチーフにしながら、小学生から高校生女子の心情を描く。
二話目と三話目には、恋の成就は勿論だけど、それよりも何よりも恋することが自体に意味がある、この年頃の結構マセた嬉し恥ずかしの恋心が描かれていて、好感。
ふたつとも似たようなテイストのお話しなのだけど、短い話にギュッとその感情を押し込んだ二話目が好きかな。
最後の話は結構イタい話のなのだけど、些細なことで傷つき易く些細なことで立ち直ることが出来る、若さの脆さと逞しさの描写に、上手いこと音楽が絡めてあって、これまた秀逸。
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音楽だけが持っている力を、文字だけが持っている力で伝える素晴らしい小説。
小学生の青春と中学生の青春と高校生の青春は、どれも違っている。その甘酸っぱさの違いがちゃんと書き分けてあるのには舌を巻く。
私はひどい音痴なので、演奏や歌唱にあまりいい思い出がない。その私ですら、「あ、そうそう、音があってきて嬉しくなるときの高揚感ってそういう感じだった」と思ったし、「おおぜいで実現することから落ちこぼれたときのみじめな感じ」がよみがえってきた。
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第二音楽室
フーミン
倉田史江。オーデションを受けたけどピアニカになった。
久保田
父親ゆずりというくせっ毛。
ジャンボ山井
ダイエット強行中。
ルーちゃん
神崎留衣。たぶんクラスで一番頭がいい女子。
江崎
無口。二学期に転校してきた。
佳代
のんびりや。いつもニコニコしている。あだ名はお母ちゃん。
山下
音楽の先生。
麻理
仲良し。鉄琴。
友希
仲良し。サックス。
夏美
アコーディオン。
池谷
クラスの男子のボス。
ノリッチ
クラスの女子のボス。
長野
男子。
吉川
男子。
絵美
ピアニストを目指している。
広田
デュエット
広谷美緒
三野田とデュエット相手になる。
葛城
音楽の先生。元テノール歌手で、ドイツに住んでいたこともある。
工藤寛
柔道部の重量級。
アヤ
体操部。
吉田
体操部。
サッチ
リエ
加瀬グループに参加。
加瀬
バスケット部。よくモテる男。
磯貝
クラス一の美女。
三野田
軟式テニス部。
藤川
書道部。三野田が好きなコ。
小川香
クラス一おとなしい。
金沢尚人
クラス一うるさい。
山口宏樹
林麻美
FOUR
山口鈴花
三組。
野田
中原健太
三組。卓球部。
間柴
音楽の先生。
美果
小学校で一緒だった。
西澤一人
背の高い男子。一組。
高田千秋
二組。
渡辺
先輩。
裸樹
ウチ
吉井望。中学二年の春、無視されたり悪口を言われるようになり、学校に行かなくなった。女子校に進学。軽音部。ベース。
ミッチ
軽音部。ボーカル。
名美
軽音部。ギター。
若ちゃん
ドラム。
大川セッちゃん
二つある一年生バンドでだんぜんうまいほう。五人のメンバーの三人までが中学からの内進生。
木下
ミッチの彼氏。キノッチ。男子高弱小バレー部の二年生。
ヒガちゃん
お姉ちゃんとバンドを組んでいたベーシスト。
モウ先輩
ウチをバンドに誘う。
友香
江上美月
三年。軽音部の幽霊部員。ワケアリで、二年くらい留年していて、今もあまり学校に来ない謎の人。
シーズー
小山静香。去年の三年生。
橋本
顧問。イベントの引率のみの名前だけの数学の先生。
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佐藤多佳子作品の青春感とノスタルジーは何なんだろう。
「デュエット」は高校の音楽の授業を思い出しました。
*第二音楽室
*デュエット
*FOUR
*裸樹
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鼓笛隊のようなグループにおいてクラスメイトのほとんどが前年とは違う個性的な楽器を手にする中、前年と同様リコーダーを手にすることとなった6人組が、学校果ての地・第二音楽室で秘密の時を共有する話。
Posted by ブクログ
鼓笛隊のあぶれ者。
私もそうだったからすごく共感できた。
でもこの子たちみたいにはいかなかったなあ。
こんなに心を動かされたり人と心を分かち合えるなんて。
羨ましくてしかたない。
Posted by ブクログ
何気ない、青春の1ページを
そのまま切り取ったような、4つのお話。
音楽によって変わる気持ち、
変わる人間関係。
そんなテーマ。
まだまだ青臭い、中学生、高校生たち。
すべて一人称は、主人公の女の子。
たまに、~だよね。とかって語りかけてくるのがちょっと苦手だったんだけど、
(多分私は入り込んで、主人公になって読む派なので、話しかけられると覚める)
すごく読みやすいし、一瞬で読めた。
最後の話はすごく大きな心の変化、
環境の変化があって、
クライマックスがあってのラストだったけれど、
他の話は、特になにかが大きく変わるわけではなく、
誰でも感じる、淡い恋心だったりを
すこーし感じて終わる。
たしかに、
何気ないことがかけがえのない、大事件な時代が私にもあった。
ほんのり懐かしさが込み上げる、
言ってしまえば、ただそれだけの作品。