あらすじ
「私の筆跡にやや乱れが見えるとしたら、それはバルタザールが左手で飲み、私が右手で書いているからだ」
1906年、ウィーンの公爵家に生まれたメルヒオールとバルタザール。しかし二つの心に用意された体は一つだった。放蕩の果てに年若い義母との恋に破れた彼らは酒に溺れ、ウィーンを去る。やがてナチスに目を付けられ、砂漠の果てに追い詰められた二人は――。
双子の貴族が綴る、転落の遍歴。世界レベルのデビュー作。
解説 石井千湖
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Posted by ブクログ
主人公の貴族が絵に描いたように転落していきます。え、まだ落ちるの?というところまで。ですが、本人たちはあまり気にしていないようなので、読んでいて不思議と「辛さ」や「悲壮感」を感じることはあまりありませんでした。また、決して性格が悪いわけではないのですが、ダメ人間です。あそこまでダメになれるのは、自分以外の人間が常にいて、どんなにダメ人間になっても絶対に一人にならないという安心感からなのではないかと思う。だから、実際に一人になった時の絶望感は想像がつかなかった。この後も2人はこれまでのように、彼等らしく思うままに生きていくのだろうなと思った。