あらすじ
私は『永遠の都』『雲の都』を書くために作家になったような気がします。――二・二六事件の記憶、陸軍幼年学校における敗戦体験、医学生時代のセツルメント運動、東京拘置所の医務部技官時代、犯罪学・精神医学研究のためのフランス留学、『宣告』のモデル・正田昭との交流、キリスト教の洗礼…自らの生きてきた八十余年の歩みを注ぎ込んだ九千枚におよぶ大河小説の“詩と真実”を初めて明かした、語り下ろし自伝。
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Posted by ブクログ
加賀さんは自伝的小説として「永遠の都」「雲の都」を書いているが、フィクションと実際がどう違うのか種明かしのために自伝を書かれたと言われている。ただ「科学と宗教と死」でもかなり自伝的な話が書かれているし、今回の書はそれを膨らませたものといっても良い。奥さんを突然になくされたこと、東日本大震災のことが大きな契機になっていると思われるが、死刑囚を研究することで若い頃より死に付いて考えてこられ、晩年のキリスト教体験を含め、著者の生き方、哲学の集大成の書物と言ってよいだろう。小説家なので読ませる文章ではあるが、グイグイ引き込まれてアッという間に読めた。読後もずっしり心に残る書であった。