【感想・ネタバレ】暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイのレビュー

あらすじ

美しい自然や動植物、文学、音楽から、軍服、罵り言葉、愛猫パードまで。「アメリカSFの女王」が、自らの人生経験をふまえて繊細かつ奔放に綴った2010年代のエッセイを集成。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

最初からほぼずっと何かを非難したり責めたりしているので、なんだか疲れる。「鋭い指摘」とか、誰かをけなすための「ユーモアたっぷりの皮肉」とか、合う人はきっとたくさんいるんだろうけど、私がエッセイで読みたいと思っているのはそういうタイプの文章ではないな、とようやく気づいた。絲〇さんとかもズケズケ言う毒舌系でエッセイがどうも合わない。

ただ、それだけに「怒りについて」の話は考えさせられるところがあった。
本人も「怒りが私の行為や思考の燃料になっていることがいかに多いか、自分がどんなにしょっちゅう怒りに身を任せているかに気づかずにはいられない」と認めている。そして、怒りの有用性、怒りという武器が正当化される時について考えるのだ。憎悪、嫉妬、恐れからくる怒りの爆弾の信管を取り除くにはどうしたらいいのか、怒りを「創造と共感に役立つもの」にするにはどうするべきか、答えのない問いを残してこの章は終わる。
私がこの手のエッセイが嫌いなのは、たぶん自分の中に多分にある攻撃性が喚起されて、なおかつそのことにうんざり、いらいらして疲れるからだ。
私は怒りの表明を読むのにも、自分が怒るのにも疲れている。この問いは私の心にもぼちゃんと投げ込まれてきた。忌避してきた怒りから逃げ切れるわけではない。怒りはなくならない、どう付き合っていくべきなのか?なのだ。80歳のグウィンにわからないことが、簡単に答えを出せるわけないのは承知しているけれど。

最後のクリスマスの頃の話はどれも面白かった。特に知識と信じることの違いの話。「ごっこ」と「ほんと」の違いは、その楽しみを奪わない。繰り返される人の営みの中で、神話は効力を持ちうる。これは力強く温かい話だった。

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2021年12月11日

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