あらすじ
作詞家が中毒死。彼の紅茶から青酸カリが検出された。どうしてカップに毒が? 表題作「ロシア紅茶の謎」を含む粒ぞろいの本格ミステリ6篇。エラリー・クイーンのひそみに倣った〈国名シリーズ〉第1作品集。 奇怪な暗号、消えた殺人犯人に犯罪臨床学者・火村英生とミステリ作家・有栖川有栖の絶妙コンビが挑む!
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Posted by ブクログ
作家アリスの国名シリーズ第1弾。表題作を含む6篇からなる短編集。
初出が1993〜94年と30年程前の作品ですが今読んでも面白い本格ミステリでした。
表題作の「ロシア紅茶の謎」が一番面白かったです。犯人の命懸け?の殺害方法が凄い!
Posted by ブクログ
犯罪臨床学者火村英生とミステリ作家有栖川有栖が様々な事件を解決する短編集。
知ってるけど読んだこと無かったシリーズを見つけたので呼んでみた。
短編なので読みやすい、かといってミステリもライトなものかと思ったら捻りが効いたトリックばかりで楽しく悩みつつ読めた。
やっぱり赤い稲妻とロシア紅茶の謎が印象に残った。
アリスが火村の話についていけてなかったり読者目線なキャラなので取っ付きやすい。
長編やシリーズの続きも読みたいなあ。
Posted by ブクログ
今やあまり使われなくなってしまった単語である「新本格」ミステリの第一世代である有栖川有栖の作品は、考えてみるとそれほど多くは読んだことがなかった。法月綸太郎や綾辻行人も、真面目に全てを読んだわけではないが、それでも数冊は読んでいる。しかしこの著者に関しては、なぜか手に取ることがなく、この年まで過ごしてしまった。自分がいわゆる館ものが結構好きで、少し軽めの作品があまり好みではなかったということもあるかもしれない。あるいは、後期クイーンの陰鬱とした雰囲気が好きでないというのも理由の一つかもしれない。
いずれにせよ、読んだことがなかった有栖川有栖の作品がAudibleにあることに気がつき、とりあえず一冊目として手を出したのが本作『ロシア紅茶の謎』だ。もちろんこのシリーズは、エラリー・クイーンの国名シリーズにあやかったものになる。ただし、あちらが長編作品である一方で、本作は6本の中編が収められている。本格的と呼ぶには、やや軽妙洒脱すぎるところがあるが、古典的なミステリーが好きな人なら楽しむことができると思う。
作品は全て、主人公である推理作家の有栖川有栖と、その友人で犯罪臨床学者の火村英生が警察とともに謎を解くという形で、由緒正しきシャーロック・ホームズシステムを踏襲している。もちろんワトソン役が有栖川有栖で、ホームズ役が学者の火村という寸法だ。なにせ全てが短い作品なので、あまり詳しくは書けないのだが、とりあえず簡単なあらすじだけでも記載しておこう。
動物園の暗号: 動物園の猿山で夜間飼育係が遺体で発見された。周囲の状況から、どうやら殺人と見られるこの事件では、被害者が不思議な暗号で書かれたメモを握りしめていた。二人は暗号の示す情報を明らかにしようとして、やがて路線図に注目することになるのだった。
屋根裏の散歩者: あるアパートの管理人が部屋で殺害されているのが見つかる。残された日記によると、この管理人は天井裏を歩き回って店子の部屋を覗き見る趣味があったらしい。火村は手がかりを得るために、自ら天井裏に上がるのだった。
赤い稲妻: あるひどい雨の夜、マンションから若い女が落下したと通報が入る。警察の捜査によると、その女性はある男性の愛人としてマンションを買い与えられていたとのことだった。早速警察はその男の取り調べをしようとするが、ちょうどその頃その男性は、妻が鉄道事故で亡くなったという理由で警察にいたのだった。
ルーンの導き: 出版エージェントを生業とする外国人が、何者かに殺害される事件が発生する。容疑者の一人とたまたま友人だった火村は現場に呼ばれて捜査を行うことになり、被害者が持っていたルーン文字が刻まれた石に注目するのだった。
ロシア紅茶の謎: 作詞家の男性が、パーティーの最中に中毒死する事件が発生した。カップからも、その他の部屋のあらゆるものからも毒は検出されず、毒殺方法を調べるために警察は火村に相談を持ちかけるのだった。
八角形の罠: 有栖川が原案を書いた演劇のゲネプロに招待された二人は、楽屋で一人の男が殺害されているのを知る。全ての劇団関係者がその男とは因縁があり、捜査が難航する中で、第二の殺人事件が発生してしまうのだった。
今の水準からすれば、決して難解とは言えない事件が多いが、それは一方で、作者が読者に対してフェアであろうとしているからだとも思う。古き良き黄金ミステリーが好きな人には、ぜひオススメの一冊だ。自分も少しずつ、有栖川版「国名シリーズ」を味わいながら読んでいこうと思う。