あらすじ
同僚の誘いで低温度実験室を訪ねた犀川助教授とお嬢様学生の西之園萌絵。だがその夜、衆人環視かつ密室状態の実験室の中で、男女2名の大学院生が死体となって発見された。被害者は、そして犯人は、どうやって中に入ったのか!? 人気の師弟コンビが事件を推理し真相に迫るが……。究極の森ミステリィ第2弾。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
非現実的な前作と打って変わって現実的な作品でしたね。
インパクトは前作ほど無いにしても非常に論理的で解決パートは読んでいてスッキリしました。
ただトリックは衝撃的ではなかったかなぁ、と言う印象です。
実験室や防護服の時点で入れ替わりトリックが使われるのかな、教授や助手が別室な辺り疑わしいですし打ち上げの会場の発案者が教授な辺りも怪しい…と言う感じで序盤から大枠は予想できてしまいました。
結婚発表のような細かいところは「あぁ…なるほど…その伏線だったのか…」と予想できなかった点も多々あるのですが…。
ただ幾つも気になる点があったので前作ほどでは無いかなぁ、と言う印象です。
気になる点です。
・物語の動きに必要とは言え研究室侵入の必要ある?叔父の権力的に捕まらないと思ってる?侵入せずに裏をかくなりして情報を入手して欲しかったです。
・権限周りが詳しく無いので現実的だと言われれば納得なのですが、一介の院生が管理者になれるんですか…?
・防寒スーツの中から着た人の毛や繊維など何かしらの情報は得られないのでしょうか?
・萌絵にあまりバディ感を感じないです…寧ろ足を引っ張っているような…
・てっきり温度がトリックに関わるかと読む前は思っていたのですが、そんな事は無かったですね
Posted by ブクログ
だいたい役に立たないものの方が楽しいじゃ無いか
音楽だって芸術だって
最も役に立たないということが数学が1番人間的で純粋な学問である証拠です
いいね
Posted by ブクログ
蓋を開けてみれば意外とシンプル…だけど、もちろん自力ではたどり着けなくて、最後に全てが一気に繋がっていくのが良かった。とても緻密で好き。理知的な人間が多いだけに、隠された人間関係と殺人にいたった感情の激しさが際立っていた。
Posted by ブクログ
正直に言えば前作のほうがインパクトが強く、見劣りすると感じてしまった。ただ絶対的な評価としては言うまでもなく、500ページ近くのボリュームを間延びせずに展開する構成力に圧倒されました。
極地研の構造を理解するのが難しく、というか読み終わった今でも完全にはわかってない、のでどうしてもからくりの解明後も「まぁそんな感じか」程度の感想で終わってしまうのも前作との差を感じる理由なのでしょうか。
ある意味読者への挑発というか挑戦ともとれるのでしょうか、悔しいですね。
逆に言うと次作の笑わない数学者では図が用意されており、
像の消えるトリックについてはそれだけでも予想がついてしまいます。
わがままな読者ですみません。
Posted by ブクログ
S&M(犀川&萌絵)シリーズ2作目。実質的には第一作。(すべてがFになるよりも前に本作は書かれているため)
事件解決後の犀川の会話が印象的。
「犀川先生なら、どう答えますか?」国枝桃子が無表情で尋ねた。「学生が、数学は何の役に立つのか、ときいてきたら」
「何故、役に立たなくちゃあいけないのかって、きき返す」犀川はすぐに答えた。「だいたい、役に立たないものの方が楽しいじゃないか。音楽だって、芸術だって、何の役にも立たない。もっとも役に立たないということが、数学が一番人間的で純粋な学問である証拠です。人間だけが役に立たないことを考えるんですからね」
「何故、役に立たなくてはいけないか、ですか……。うん、それはいい」と高校教師が呟く。
「そもそも、僕たちは何かの役に立っていますか?」犀川はおどけて言った。
まったくもってその通り。
役に立たないから面白い。
Posted by ブクログ
また犀川先生と萌絵の絡みが見られて良かった。練られたミステリーだったけど、すべFみたいに二人がずっと現場にいるわけじゃないから臨場感はあんまり感じない。p218の萌絵のセリフ、すごい..自分だったら絶対に言いくるめられて黙ってしまう。
Posted by ブクログ
面白かった。
s&mシリーズの2作目。
極地研での実験を見学させてもらう事になった犀川と萌絵。実験が終わり、楽しく飲み会をし何事もなく終わるかと思ったが死体が見つかってしまうという話。
物語が事件後から始まり、萌絵達がその事件の事を考えている所から始まり、回想形式で事件を追っていくような構成。
みんな理系の人間という事もあり事件が起こったあとも落ち着いていたような印象。
萌絵が殺されそうになった所はめちゃくちゃドキドキした。ナイフで刺される夢を見たのもあって本当に死んだかと思った。無事で良かった。
事件の計画が緻密で恨みを晴らすために考えに考え抜いたんだろうなって思った。最後の実の父である木熊の遺体を処理する所は本当に辛かっただろうなと思った。木熊は娘の為とはいえあそこまで冷静になれるのはすごいと思う。殺人に至るまでの動機が読んでて辛かった。ただ珠子さんはあまり関係ないからかなり不憫。
犀川と萌絵の関係も進展が見れて良い。萌絵が犀川に対してほっぺにキスをしたり、先生には私がいると言ったり積極的でドキドキした。
あとは犀川が犯人に対して口外はしないから犯行に至った理由を教えてくれってメールしたのが犀川っぽいなって思った。犯人がどうなるかはどうでもよくて、純粋に事件の真相が知りたいというのがぽい。
次の話を早く読みたい。
面白かった。
Posted by ブクログ
動機や仕掛けが開示されてから一通り事件同日のシーンを読み返して、矛盾がなくほとんどの事実がここに揃ってるのがすごいなあと思いました。
「学問なんて虚しい……」と語った市ノ瀬さんの真意を勝手に想像してしまう。なぜ虚しいんだろうか。学問の虚しさを知ることが学問の第一歩、の意味がわかるようなわからないような。
満点をとってもとっても先も果てもなくて、今ある満点は次の瞬間には満点ではなくなるかもしれない可能性、もしくは次の"満点"を探す性がそうなのかな。
『外部から傷つけられるようなものではない』かぁ。うーん……。
「数学はなんの役に立つのかって聞かれたらなんて答えますか?」に対する「なんで役に立たなきゃいけないのかって聞き返す」のくだりが一番印象的だった。(p399)
役に立たないもののほうが楽しい。たしかに娯楽って(もちろん後々役に立つことはあるけど)役に立つとか意味があるからとかそれが目的じゃなくて、楽しいからしてるなって思った。
「数学は純粋な学問」ってフェルマーの最終定理でも見た気がする。理の学問の道を行く人たちの共通認識なのかな。